新聞小説 「ひこばえ」 (14) 重松 清 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

新聞小説 「ひこばえ」(14)  4/9(303)~5/8(330)
作:重松 清  画:川上 和生

バックナンバー 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12 13

 

感想
父が最後まで、友人として連絡を取り続けていた小雪さんとの面会。
自分が会うために住所を知らせないなんて、根性の座った娘(笑)
しかしあっちでもひこばえ、こっちでもひこばえ、と「ひこばえ大安売り」の様相でちょっと「お腹いっぱい」。

これだと重松の「悪い意味での」浪花節で突っ走るのかなぁ・・・・
次章は母親と遺骨の面会?

 

あらすじ

第十三章 青春の街で  1~27
JR馬場町駅に降り立つ洋一郎と西条真知子さん。

ここにはもう十年以上来ていない。
小雪さんに会いに行くのに同行するため、真知子さんは小雪さんの住所を教えてくれなかった。非常識のそしりを気にも留めず、歩きながら国際色豊かな街並みを評している真知子さん。業務を越えた熱心さ。

 

その家は「シェアハウス こなゆき」とあり入居者は小雪さんを含め七名。うち二人は外国人。
たまたま会った若者がその外国人であり、小雪さんから話を聞いていて案内される。
洋一郎の顔を見てシンちゃんに似ていると言う小雪さん。予想に反して親分肌の頼もしさがあった。だが八十過ぎの高齢で、具合が悪い時は車椅子の生活。


このシェアハウスは、スナック「こなゆき」の常連客の好意で実現したもの。入居者は小雪さんの世話をする条件で格安の家賃になっている。ガンを患い、最後は出ていく心づもりだが、若い者へ死と向き合わさせたい思いもある小雪さん。
洋一郎の父に対する思いについて、真知子さんの挑発を受けながらも、覚えていないんだったら、それでいいと言った。

「楽しい思い出だけ、作っちゃいなさい」
また洋一郎の聞きたかった、父が別れた母の事を話していなかったかという事には、嫁さんには申し訳ない事をしたと言っていたと話す小雪さん。

 

小雪さんと別れて真知子さんとの会話。

小雪さんの話は、多分嘘。その嘘につき合うというのは、先にそちらの母に遺骨を会わせなさいと言う事か。
シェアハウスについては仕事上のヒントも多く見つかった。「みんな」という一括りに出来ない人をどうするか。後藤さんの顔が浮かぶ。

 

真知子さんと別れ、大学時代の友人、紺野と佐山に会うために待ち合わせの店に向かう。
先に来て始めている紺野。店も彼の選定。

 

紺野が大ニュースと言っていたのは自分の父親の死。なまじ丈夫な肝臓だったため、気付いた時には手遅れ。

判明してから二週間で逝った。
ちょうどいい長さだ、と素直に笑う紺野。もし母親が先に逝けば、そちらの方が大変だった。

 

遅れて来た佐山は、奥さんの仁美さん同伴。佐山とは「よしお基金」報告会後に「ハーヴェスト多摩」で会って以来だった。
いいことがあったと言う佐山。「よしお基金」で送り続けて来たAEDは三十台を超える。耐用年数から言えばそろそろ買い替え時期を迎える。その負担も含め、活動の曲がり角に来ている。


そんな時に、この基金で設置したAEDで中学生の命が助かったという。中三の男子生徒杉山君。やんちゃな子で、危険に陥る原因も自業自得。だがお礼の手紙も受け取って佐山夫妻は感動。
少年が大人になって、自分の子供を持った時に判るだろう。これもひこばえ・・・

二次会はやらず、三人と別れて温かい気持ちを味わう洋一郎。

 

シェアハウスの事を思い出す。小雪さんは若者たちの将来を見届ける事はできない。だが彼らがその記憶を語り継いで行けば小雪さんの存在は生き続ける。これもまたひこばえ。
ひこばえという言葉を教えてくれた神田さんに感謝。和泉台文庫の「カロリーヌおじいちゃん」。川端さんの話す父の最期、全てにこばえとして洋一郎の胸に響いている。

 

家に帰ると夏子、航太の他に美菜、そして遼星が居た。婿の千隼君は、祖母がいる宇都宮に行ったとのこと。
おばあさんは認知症が進んで、遼星はおろか千隼君の事も判らない。いつもと違って千隼君に思いを馳せる洋一郎。
眠っている遼星を見ているうちに、思いがこみ上げる。


夏子が「いい人モードね」と冷やかすのに対し、親父の骨壺を持っておふくろに会ってくるよ、と洋一郎。