どろろ ③、④巻  作:手塚治虫  全4巻(秋田書店サンデーコミックス) | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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どろろ  作:手塚治虫  秋田書店サンデーコミックス版
            初出 1967年 少年サンデー、1969年 冒険王

 

前回紹介した①、②巻の後半を紹介。
アニメはBS11の月曜深夜0:30~で放送中。


登場人物
どろろ    夜盗・火袋の子供。両親に死なれ泥棒で日々をしのぐ
百鬼丸   魔神の呪いで体の48ケ所が欠損して生まれる。
醍醐景光 百鬼丸の父。野心のために子供を魔神に売り渡す
縫の方   百鬼丸の母。夫の野望を知らずに百鬼丸を産む
法師     盲目の琵琶法師。百鬼丸に生きるアドバイスを与える
火袋     どろろの父。権力に抵抗する夜盗。
お自夜   どろろの母。
イタチ     火袋の子分。後に火袋を裏切る
寿海     赤ん坊の百鬼丸を救い、育てた恩人の医師

 

感想
百鬼丸とどろろの、珍道中とも言える紀行。昔は全国を回っている様な印象を持っていたが、要するに父景光の影響が及んでいる村々を巡っていた。
③巻では百鬼丸が自身の弟、多宝丸と戦い倒してしまう場面が印象的。景光は百鬼丸を、息子でありながら多宝丸の仇として憎むが、徹しきれない苦悩も垣間見える。魔神と契約して売り渡した百鬼丸に感嘆する感情。
④巻では、どろろの背中に彫られた地図の謎がようやく回収される。ただ見つけたものは「宝は別の場所に隠した」という書置きだけ。

そらーないぜおとっつあん。

最終話「ぬえの巻」でこの「ぬえ」という名は出て来ないが、景光にとり付いていた虎のようなヤツがそれ。

百鬼丸の呪われた体の大元の原因。
下は歌川国芳が描く鵺(ぬえ)

 

ぬえが体から抜けた事で、景光は百鬼丸に許された形となり、縫の方と共に追放される。
原作の百鬼丸は、全ての体を取り戻す前で終わっているが、1969年のTVアニメでは完全な体になるところまで描かれている様だ。

 

ところで、どろろが女だったという件。もうかなり前の話なのですっかり忘れていた。
③巻の「しらぬいの巻」でイタチがどろろをハダカにして、女である事が初めて判明するが「ぬえの巻」で百鬼丸は、目があいた時初めてどろろを見て判ったと言っていた。
それは②巻で妖刀「似蛭」に翻弄されて死んだ田之介の妹お須志を、女として初めて見た百鬼丸が、その後でどろろを見た時、直感的に感じたのだろう。
どろろをむりやり川に入れて背中の地図を見つけた時のシーンで下の1コマがある。

この時どろろが恥じらう姿は、まさに女。この時点で手塚は絵の上でどろろを女として宣言していた。

ゲームの世界では完全に女として扱っているみたいですネ・・・・

 

映画もあるらしい(2007年)。どろろが柴咲コウ、百鬼丸が妻夫木聡ではイマイチだが、鯖目の妻マイマイオンバが土屋アンナなのは、ちょっと観たい・・・・

 

 

あらすじ

第③巻


<ばんもんの巻>
吹きさらしの小高い荒地に立つ板塀の前にいるどろろと百鬼丸。砦の跡だろう、と百鬼丸。
そこで野宿する二人だが、夜中にキツネの群れに襲われる。百鬼丸が倒すが、数が多くてキリがない。
だが気が付くとキツネは消え、死骸も残っていない。
気配を感じて隠れる二人。村人数人を塀に引っ立てる足軽たちと、指図する武将。村人は皆、矢で射殺された。
親に取りついて泣く子供さえも矢で殺すのを見て、どろろが飛び出して足軽に飛びかかる。


やむなく加勢する百鬼丸はその武将と戦いを始める。義手を外して出る刀に驚く武将。作り物の体だというどろろの言葉を聞いて驚いた武将は、慌てて兵と共に引き上げた。
町に着いたどろろは、突然多くの人に殴られ、簀巻きにされて川に落とされる。それを助ける子供。
一方茶屋で休もうとした百鬼丸も、浪人に絡まれるが数名を難なく斬り倒す。そこに残った若侍。
彼は多宝丸。あの板塀、ばんもんで出会ったのは父親の醍醐景光。
メシぐらい食わせる、と屋敷に誘う多宝丸。

 

<助六の巻>
屋敷を訪れる百鬼丸。多宝丸から父の景光を紹介される。主人の富樫に仕えないかと誘う景光に、いくさのために生まれてきた訳じゃない、と気のない返事。怒る多宝丸だが、それをなだめる景光。
そこに顔を出す縫の方。ぼうや、と言われ心に感じるものがあって「母さん?」と聞く百鬼丸だが、すぐに否定して飛び出し、庭の草木を斬りまくる。
一方助けられたどろろ。子供は助六といった。ばんもんのこちらは富樫領で、向こうは朝倉領。ある日突然いくさが始まり、大きな板塀が作られて行き来出来なくなった。たまたま富樫側で遊んでいた助六は家に戻れなくなった。
何度も続くいくさで、塀のほとんどが焼け落ち、残ったのはあれだけ。だが相変わらずむこうへは行けない。
野ギツネに襲われないよう、みの虫の様にヒモでぶら下がって寝る助六は、どろろにもそうした。
夜半すぎに、富樫側の兵たちの突入がある事を知った助六は、どろろを誘ってばんもんの向こうに向かった。
途中で敵兵に会い、どろろがおとりになって助六を逃がす。結局捕まるどろろ。
ばんもんまで引っ立てられると、助六も捕まっていた。家は焼かれてなくなり、父母も殺されていた。
捕まえたのは多宝丸の部隊。どろろの目の前で他の者と共に殺される助六。
助けに入る百鬼丸。そこで多宝丸との戦いが始まる。
それを聞いて「二人は兄弟だ」と叫び、止めに走る景光。

 

<愛憎の巻>
戦いのさなか、百鬼丸の心に、多宝丸はお前の弟だというキツネの妖怪の声。そして景光は父親だ、とも。
打ち込んで来る多宝丸。そして倒された多宝丸は、百鬼丸に抱えられて息絶えた。
次に現れたキツネの妖怪。激怒した百鬼丸との壮絶な戦い。抱え込まれた百鬼丸だが、自分の鼻を抜いてそれをキツネの口に放り込む。爆発してキツネの首が吹っ飛び絶命。
百鬼丸の鼻が生えてくる。匂いを感じて笑う百鬼丸。
倒した九尾のキツネをばんもんの壁に貼り付けると、壁は崩れ去った。


多宝丸の死に直面した景光は、百鬼丸に追っ手を差し向ける。だがそれはことごとく倒される。
百鬼丸はどろろに、縁はこれきりだ、と言って去って行った。
強がりを言うが、一人残されてベソをかくどろろ。
そこへ近づく女。おにぎりを差し出して、家へ来ないかと誘う。疑いつつもあとに続くどろろ。
一方百鬼丸の前に再び顔を出す琵琶法師。死霊の気配を気にするなと諭したが、百鬼丸は、その死霊がどろろに付いたものだと気付き、追いかけようとする。
女の案内で、みしらずの滝の白面不動に呼び込まれるどろろ。

 

<白面不動の巻>
洞窟の中の家に案内されるどろろ。寝ている間に女がいなくなり、奥の洞窟に行くと、顔のない凍った死骸が多数。女を見つけてそれを話すと、夢でも見たのだと一蹴される。
不動明王と話す女。今度の行者の顔はいかがかと問い、次は子供だと伝える。
どろろを不動明王に差し出そうとするが、うまく行かない。その上情が沸いて、そちらの面からも実行は無理。
どろろにいきさつを話す女。あれはニセ不動の妖怪。女も本当は死んでいるが、顔を持って来るために生かされている。どろろが人間の心を吹き込んでくれたと言って息絶える女。
妖怪の力で逃げ出せなくなったどろろを助けるために、百鬼丸が駆け付ける。

 

意地を張るどろろだが、構わず不動に立ち向かう百鬼丸。ピンチに遭うが、どろろも何とか助ける。
不動の首を落とすと体が溶けだした。岩にとりついたカビに精気が入り込んで妖怪になった。耳が外れ、本当の耳が生える百鬼丸。
大嫌いだと言いながら、腕の刀をもらうまでは離れない、とどろろ。

 

<みどろの巻>
景光に敵対する武将が乗る愛馬「ミドロ号」。だが部下から出世は馬のおかげと言われ、馬に八つ当たりし、生まれた仔馬を引き離す。
ひょんな事から引き離された仔馬を失敬するどろろ。
仔馬を奪われ元気のないミドロ号に厳しくあたる武将。戦場での無理な扱いで落馬した武将を川に沈めて殺すミドロ号。矢を多数受けて瀕死のミドロ号は、馬の霊に乗り移られる。
その馬の妖怪に出会い戦う百鬼丸。それを追って山小屋に行くが、そこにいたのは賽の目の三郎太。武将間の戦いを見極めて、強い方に着く考え。
そこに仔馬と共に現れるどろろ。現れた馬が母親だと思い込むが、あれは妖怪だ、と百鬼丸。
馬を追いかけると、そこには馬にまたがった三郎太がいた。
三郎太も妖怪に取りつかれた。
戦いの末、焼水で妖怪を倒す百鬼丸。気を失う三郎太。

 


第④巻

 

<二ひきのサメの巻>
盗賊に襲われるどろろと百鬼丸。その首領はイタチ。どろろの父火袋の部下だった。背中に宝の地図が描いてあるというどろろに用があった。百鬼丸の力及ばずさらわれるどろろ。
宝が埋まっているという白骨岬に着くイタチ。陸づたいには行けず、船頭を探すも妖怪の噂があり漕ぎ手がいない。
そこに引き受けるという男が現れる。二艘の船を出すが船頭は一人。相棒は海の中だという。
二匹の巨大サメが現れる。二郎丸と三郎丸といい、男が子供の頃から飼っていた。
片方の船を沈没させて、その乗員を食うサメ。
残された舟で目覚めるどろろ。自分がおとりになってサメの腹を海上に出させ、そこをみんなの刀で刺す作戦を提案し実行。


そして白骨岬に向かって漕ぎ出すみんな。

 

<しらぬいの巻>
どろろを追って進む百鬼丸。どろろなしの旅が寂しいと感じる。
そんな時にどろろからの心の通信。舟で進むどろろを見つけるが、同時に追って来るサメに乗った男を見つけて海に飛び込む百鬼丸。
サメの男と戦うどろろ。そこに到着してサメとの戦いを始める百鬼丸。片目をつぶされて逃げるサメ。
皆で何とか陸に上がる。百鬼丸に休戦を申し出るイタチ。サメの男はしらぬいといった。サメの二郎丸は必ず戻って来るという。
父も母も戦さで殺されたというしらぬい。サメになりたいと言い、二郎丸に一生をかけたいとも。
水が欲しいという足軽に水場を教えるしらぬい。だが行った者が戻ってこない。確かめに行ったどろろは、そこにサメがいて皆を食ったのを知り、心で百鬼丸に伝える。
駆け付ける百鬼丸をしらぬいも追う。どろろがサメの目から刀を抜こうとしている。陸に飛び出るサメ。
戦いの末、サメの二郎丸を倒す百鬼丸。仇を取るためにしらぬいも向かって来るが、胸を刺される。
二郎丸と一緒に体を結んで海に流してくれ、と言って死ぬしらぬい。
そのとおりにしてやる百鬼丸。

 

<無情岬の巻>
イタチに矢で刺され倒れる百鬼丸。イタチはどろろを裸にして背中の地図を写し取った。
「おまえのおやじは何故お前を男の子として育てたのか?・・・」と呟くイタチ。その意味が判らないどろろ。
目を覚ます百鬼丸。自分の本当の声が出ることに喜ぶ。背中の矢は、父の寿海が作ってくれた代用骨に刺さっていた。
宝を目指して崖を登るイタチと部下たち。だが途中に仕掛けがあって次々落とされて行く。
罠にかかってイタチも落ちそうになり、助けを求める。それを助けに行くどろろ。
何とかイタチを助けたところに、沖から大量の船が来始めていた。
この岬を統括する代官 真久和忠兵衛。野盗の情報を聞いて検分に来た。だが本当のところは宝探しが目的。

我れ先に宝を目指す兵たち。
イタチも多数の矢を受けて瀕死の状態。どろろが何とか宝の壺を開くと中に手紙。
「黄金は別のところに移す。貧しい農民が立ち上がるための金」
金が見つかるように祈ってるぜ、と兵を道連れに崖を落ちるイタチ。
最後に残った百鬼丸とどろろは、舟で岬をあとにする。

 

<どんぶりばらの巻>
子供が田舎道を歩いていると、大きなお面に白装束のお化けもどきが襲って来る。通りかかったどろろが抑え込むと、それは少女。村人の言うにはどんぶり長者の娘お米。
長者の接待を受けるが、器ばかり大きくて食べ物は僅か。

下女の話ではここが醍醐景光の領内で、年貢の取り立てが厳しく、満足な食事が出来ないとのこと。
長者が毎夜出掛ける先は、肥溜めを偽装した入り口の秘密部屋。そこでごちそうを食べている。
お米は、その入り口がバレないように人を近づけないための細工をさせられていた。
その秘密を嗅ぎつけたどろろが捕まる。そこに本当の妖怪が現れる。
村を訪れる醍醐景光。年貢を納めないという長者の申し出を受けて咎めに来た。引っ立てようとするところを止める百鬼丸。

迫力に押されて退却する景光。
妖怪にどんどん飯を食わせられる長者。満腹になったところで妖怪がへそから長者の中に入り、腹を減らしてまた食わせる。
秘密の入り口を百鬼丸に教えるお米。門番を倒し、妖怪と戦う百鬼丸だが、妖怪が逃げて行く。
追いかけた先に沼があり、そこに見える岩。妖怪はここに入った。岩の上で待つが、髪か藻の様なもので縛られる百鬼丸。お米に教えられて助けに来たどろろは、村人と共にその岩を引き上げる。それは巨大な亀だった。亀の首穴に竹を差し込み、薬を流し込んで亀は絶命。
沼のものを食って動けなくなった亀が、自分の精気だけを泳がせて人に取りつき栄養を取っていた。
百鬼丸を助ける知恵を出したのはお米。それを褒める百鬼丸。
そこへまた現れる景光。多宝丸の仇だと言って、ある者を差し向けた。
それはミドロ号の亡霊と共にいた賽の目の三郎太。
だがその戦いのさなか、百鬼丸の右の義眼が落ちて本当の目になった。眩しくて目がくらむ百鬼丸。それに付け込んで斬り付ける三郎太。割って入ったお米が身代わりに斬られた。

 

あたいをバカじゃないって言ったのはあんただけ・・・と言ってこときれるお米。静かに立ち去る百鬼丸。

 

<四化入道の巻>
久しぶりに川で水浴び。暑さも寒さも体に感じない百鬼丸。
どろろが魚を取ろうとして手を罠に挟まれる。
助けを求めて古寺を訪れる百鬼丸。そこで暮している四化入道に助けを求める。
川に戻るが、そこにどろろがいない。元々和尚に妖気を感じていた百鬼丸は戦いを始める。
もぐらの穴の様な跡を追って寺に辿り着く百鬼丸は、近くに住む木こりに寺の話を聞く。
この寺に砦をつくろうと醍醐が来たが、和尚がそれを固く断ったため、責めた末に和尚を生き埋めにした。
寺を壊そうとした醍醐だが、野ネズミや獣の大群が押し寄せ、そのまま寺は放置された。
和尚が埋められた墓を崩す百鬼丸。それに応える和尚の霊。どろろを助ける、と宣言する百鬼丸。

 

捕われのどろろ。上を見上げると、遥か上に光が差す穴。
寺の本堂に入り、首の浮いている如来像を見つける百鬼丸。首の穴から中を見下ろすとどろろの声。
これは罠だと言うどろろ。中はとんでもなく深い。
構わず足を入れようとする百鬼丸に、メチャクチャに暴れてそこまで辿り着いたどろろは、百鬼丸の足にしがみつく。何とか外に出たどろろは、焚火をその首に詰め込んで蒸し焼きにした。
モグラ穴の先で待つ百鬼丸。煙で燻されて飛び出す妖怪を次々に斬り捨てる。
だが親玉の入道が出て来ない。別ルートの穴を掘っていると直感し、狙いを付けて攻撃。頭を刀で貫かれて入道は倒された。

 

<ぬえの巻>
訪れる村が既に三つも、もぬけのカラの状態。寝たきりの老人に聞くと、醍醐景光が砦の堀作りに村人を駆り出している事が判明。

脱走を企てる若者。だが逃げた先の我が家は焼き払われていた。
川で老婆の亡霊に遭う百鬼丸とどろろ。景光に焼き殺されたという。
景光と刺し違える覚悟の百鬼丸は、どろろと別れる決心を伝える。
別れるなら殺して行けというどろろに「女は斬らん」と言う百鬼丸。今度はどろろが驚く。
どろろを置き去りにして景光の屋敷に入る百鬼丸は仕官したいと兵隊に伝える。
景光は母親の縫の方に引き合わせる。涙を流して謝る縫の方。


騒ぐどろろを押さえ付ける若者は、穴を掘って屋敷に入ろうとしていた。狭いところが得意などろろは最先端で掘り進む。
屋敷に一番乗りで入り込むものの、捕まるどろろ。仕官の証しにどろろを斬り捨てよ、と百鬼丸に命じる景光。
刀を構える百鬼丸だが、狙ったのは妖怪。

 

景光に取り付いている妖怪の片割れを五、六匹分は仕留めた。

苦しむ景光。
穴から城に入った若者の手引きで門が開かれ、屋敷内は総崩れになった。夫婦で屋敷から追い払われる景光。

 

騒動は終わり、百鬼丸はどろろに刀を渡した。
魔物を探して倒し、自分が完全な体になったらまた会おう、と百鬼丸が去って行く。