2017年07月29日

新聞小説 「国宝」 (7) 吉田 修一

テーマ:本・国内

 

新聞小説 「国宝」(7) 吉田 修一    6/4(151)~6/29(175)

作:吉田 修一  画:束 芋
              (1) (2) (3) (4) (5) (6)

 

第七章  出世魚 1~25
とあるマンションの二階。マージャン卓を囲む四人。喜久雄に、新劇上りの映画女優、赤城洋子、大関昇進を逃した荒風関と、ツキまくっている徳次。

三年前「曾根崎心中」のお初役で評判になった喜久雄。その後、俊介の出奔の後も庇ってくれた半二郎だが、そのまま家族の家に居るわけにも行かず、近所のマンションへ引っ越した。

 

その後梅木社長の肝いりで、大阪の道頓堀座を借り切って花井東一郎を軸とした興業を三ヶ月かけたが、人気は続かなかった。
そんな喜久雄を東京に送り出そうとした梅木を必死で止める半二郎。
世間の人気の影響で、喜久雄を映画に使おうという流れもあり、数本に出演したものの、喜久雄特有の色香は映画では表現されず、話題にもならなかった。

 

そんな折り、喜久雄は半二郎から好きに使っていいと渡された二百万余りの金で、スポーツカー(ジャガーの中古車)を買ってしまった。喜久雄なりの親孝行である、母のマツを大阪見物に連れ出すためのものだったが、これには半二郎も落胆。

スポーツカーを買う前に少額の金を送り、すぐにでも母を大阪に、と思っていた喜久雄だが、マツはその金を使って割烹料理屋「喜久」を開店させていた。

 

 

マージャンがお開きになり、帰って行く荒風関。徳次が下階から喜久雄を呼ぶ。
徳次が言う「綾乃ちゃんの誕生日」。
喜久雄が初めて祇園のお茶屋に行った時に知り合った市駒。修行の合間を縫って逢瀬を重ね、次第にお茶屋の女将にも公認の仲となる。半二郎もこの事を知っており、お茶屋への支払いも適宜行われていた。

そうこうしているうちに、喜久雄が曾根崎心中のお初をやった頃、市駒が喜久雄の子、綾乃を宿した。結婚などは言語道断、という時期。認知だけ済ませて今に至っている。この時期に一番世話を焼いてくれたのが半二郎の妻の幸子。綾乃は二歳になる。

 

洋子のマンションで寝転んでいる喜久雄。シャワーから出て来た洋子が女形の気分について喜久雄をからかうが、喜久雄は相手にしない。
梅木社長が言っていた、喜久雄を養子にしてはどうかという話があってから既に半年。丹波屋の大名跡「白虎」を半二郎が継ぎ、喜久雄が半二郎を継ぐ。だがそれをやるのは、出奔して三年になる俊介を完全に見限る事になる。

 

新橋演舞場楽屋。演目は「菅原伝授手習鑑」。松王丸を勤める半二郎の手を取って先導する喜久雄。
糖尿の気があった半二郎。骨折した時に行った目の検査で経度の緑内障と診断されていたが、俊介の出奔でそれどころではなく、症状を進行させてしまった。
今までの慣れもあり、人には悟られず舞台をこなしていたが、正月のおせち料理がつまめずに、初めて幸子に打ち明けた。だが医者に行くも、もうどうしようもないところまで進行。
出番を直前にして半二郎が、自分が白虎になるから、お前も半二郎を継げ、と言った。

演目「菅原伝授手習鑑」のあらすじ。主君の子供を預かり、自分の子供として寺子屋に匿っていた松王丸。

その事が敵に知られ、若君を救うために自分の子供を差し出しす。処刑された息子の首を見て、主君の若君だと証言して窮地を救う。

 

半二郎の家。幸子から呼び出された喜久雄。苛立ちを隠せない幸子。アンタが来さえしなかったらこんな事にはならなかった、頭掻き毟って吠えたいくらいの気分だ、との八つ当たり。
理由は半二郎の言った喜久雄の襲名。俊介にとって、半二郎の名は最後の砦。辞退してくれ、と迫る幸子に喜久雄は「そうする」と返す。
だが、言うだけ言うと覚悟が決まったのか、二人同時の襲名は大きな仕事だから、ここに戻って来い、と幸子の言葉。

 

 

東洋ホテルで行われた花井半二郎と花井東一郎を激励する会。辻村が発起人。ここで襲名の事も発表される。機嫌のいい辻村。襲名披露の大阪中座を二日間も貸切りにしていた。

 

激励会からあっという間に日は流れ、大阪中座での襲名披露初日。演目は「連獅子」。その二人の世話をかいがいしく行うのは幸子。一家含めての一大事業。

幕が開き、中央の花井白虎、喜久雄の花井半二郎、生田庄左衛門を筆頭に関西歌舞伎の大幹部が姿を見せる。
幹部の挨拶に続き、三代目花井半二郎の挨拶。
喜久雄の挨拶も終わり、次は白虎が顔を上げて口上に入る筈だが、動きがない。
不穏な空気が流れたその時、花井白虎が大量の鮮血を吐いて倒れた。

 


感想
俊介が出奔してからの喜久雄とその周辺。緑内障を患う半二郎が、起死回生を賭けて白虎の襲名に向かうが、一番のクライマックスで潰れてしまう。
喜久雄が花井家に入った事で、次第に歯車がズレて行く感覚の不気味さを行間から感じる。

 

明るいとは思えない喜久雄の未来。

 

 

 

 

 

 

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