「虚無回廊Ⅲ」 小松左京 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

  虚無回廊Ⅰ   虚無回廊Ⅱ

 

感想

数年前、小松左京をサポートするHPでたむろするうちに「虚無回廊」を読みなさいと薦められ、Ⅰ~Ⅲ巻を一気に読んだことがあった。

前述した様に、その時は基本設定、ディテール等、瑣末な事に目を奪われ、大したストーリーではないな、という不遜な気持ちを強く持ってしまった。


今回の再読でも多少そういう部分はある。ただし小松左京として一体何を言いたいのだろう、という視点から読み直すと、彼独特の「一筋縄」では行かない二枚腰の様なものを感じる。
未知の物体が浮かぶ宇宙空間に何を、どうやって送り出すのか。そこに至るまでのドラマは多少冗長な気もしたが、その後SSへ到達してからは早いテンポ。彼の考える人類以外の知的生命が様々な解釈をもって開示される。


基本的には「未知との遭遇」。

知的なものが集まり易い環境を作り、それを受けて集う「知的存在」たち。集めた上で、一体何をやらせたいのか。読んでいる限り、Ⅲ巻まで進んでもまだ序章にしか思えない。まあ彼の残り寿命から考えて未完の小説になるのは避けられないかも。

Ⅲ巻の後半で、集まった星系の者たちが話すSSに関する情報。

ただし今までが実宇宙の話ばかりだったのが、唐突に「SSは実宇宙と虚宇宙をつなぐ回廊」と言われてもピンと来ない。こういう方向性なのであれば、虚宇宙に関する記述も伏線として欲しかった。

 

「2001年宇宙の旅」では、人類が月に到達して地中から「TMA1」を掘り出した事でトリガがかかり、木星からの電波が発信され、「TMA2」への航行計画が発動された。
「果しなき流れの果に」では超能力を持った者たちが与えられた「階梯」を上がる先に宇宙の意識体があった。
この宇宙に自分たちより「高い」存在の者がいて、常に俯瞰されているという印象。彼の短編でもたまにそういうモチーフがある。

 

考えてみれば、私たちが存在し、ごく普通に「常識」として生活している「そもそも」の起点が「ゆらぎ」から発生した「ビッグ・バン」という宇宙の誕生であり、今もこの宇宙は膨張を続けている。


宇宙の端はあるのか、またその外側には何があるのか、という「めまい」のする様な疑問。
ふだんの日常に忙殺されている身にとって、たまにこういうテーマにどっぷりと浸かるのも、ある意味非常に面白い。

多分ストーリーとしては起・承 と来て、今度は地球からアンジェラEが到着して、生命、「こころ」といった部分をサポートしつつ虚空間に誘われる「転」を経て、虚宇宙が示す最後の秘密を解き明かす「結」へとなだれ込む・・・・・
こんなところではないだろうか。

 

ただ、そうならそうで、もう少しプロットを整理しておきたかった。これでは本題に入る前に疲れてしまう。

そういう意味で彼が「果しなき…・」を作っていたピークの時期にこの題材に取り組んだら、すさまじいものが出来ていたかも知れない。

 

小松関連のネット情報を読んでいると、この「虚無回廊」を若手のSF作家が引き継いで完結させるとの話もある様だ(日本沈没「第二部」の様に)。
それについて小松氏が「了承した」とかしないとか、諸説あるらしい。

 

いすれにせよ、ほぼ3年振りに読んだこの長編は、やはり私の脳内の「ある部分」にシンクロするのは確かな様だ。
彼自身の「筆」で結末に運んでもらいたいものです。

 

「ビッグ・バン」について比較的判り易いサイトが「ココ」

でもこんな時期に「ビッグ・バン」関連でノーベル賞もらう人 が出るのだから、この小説もけっこうトレンド来てるのかな?

 

 

あらすじ
第三章 荒野(承前)
7i 叢林の王
第四章 森林
8i 会合
9i 行動計画


円筒の大地の長軸方向を進む「都市」。

森にある「宇宙港」と思われるところに誘導されて着陸。
降り立った地で働くこの地の住民たち。

ラグビーボール大の果実の様なものを収穫して運んでいる。

果実の中味は胎児と思われた。

様々な形態の生物繁殖のあり方。


大輪の花から優雅に出現した女性型の生物。老人の友人「クワル」を介して招待したのは彼女だった。
これから皆の「知的主体」をセンターに転送するとの申し出。

そこにはこのSSに集う知的存在の代表者らが知的主体のみで参加しているという。
老人、他のメンバーとも議論の結果、デイヴが最初の転送を行うことに。
転送を経験したデイヴ。約束通30分で戻ることが出来、その後主要メンバーが会議に参加するために転送される。
その会議の席上で次々に語られる、各星系代表によるSSに関する情報。


ある星系の代表によるレポート。彼らは数十代かけてSSの中心に向かって探査を続けた。中心から0.1光年ほどのところから先に進むために決死隊を募り突入したが、彼らは瞬時に反対側の層に出てしまった。彼らの言う「十六層」より深部へは行けない。


「ン・マ」と呼ばれる知的生命種族がSSに関する重要な仮説を披露。
ビッグ・バン以後の「宇宙の晴れ上がり」以降作られて来た宇宙構造を「表の宇宙像」とした時、同時に観測も論理的理解も困難な「裏の宇宙構造」も宇宙進化の道を歩んで来た。

SSはその「裏宇宙」の中で形成され始めた「構造(ストラクチャー)」だった。

 

我々が存在する「実宇宙」と裏の存在である「虚宇宙」。この虚と実の間をつなぐ「無」という概念を介して「回廊」として存在するSS。
「都市」の住人「ラ・ファ」族より、SSからのメッセージを解読するのにアスカの手助けが欲しいとの申し出。

協力の結果解読に成功するアスカ。
SSの意識主体との交信申し入れ。交信を前にして一旦会議は中断し「私」およびVPのメンバーは母艇に戻る。
今まで起こった事象を整理・判断するべく「瞑想空間」へ一人向かう「私」

 

Ⅳに続く(ただし未公表)-----