『家守綺譚』の続編となる『冬虫夏草』(梨木香歩著)。
『家守綺譚』は、家とその周辺での物語なのですが、
こちら『冬虫夏草』は、行方知らずとなった犬のゴローを探しに旅に出た征四郎の、その道中を描いた作品となります。
鈴鹿の山中を行く征四郎が出会うのは、またまた不思議な光景と不思議な人たち(河童、天狗、イワナの夫婦、竜神も)
けれども、『家守綺譚』の世界を通ってならした目でこの旅に同行すれば
この奥深く豊かな風土を楽しむことができます。
ただ、少し残念なことは、私自身がこの辺りに土地勘のないこと。
梨木さんの本にはよく植物が出てくるので、植物を調べながら読むことは珍しくないのですが
今回は地図も見ながら読みました。(植物も調べながら)
それにしても、半年以上行方がわからないなんてゴローはどこへ行ってしまったのでしょう…?
ゴローは犬ですが、とても“人望”があるのです。
ゴローがどんな犬かを説明しようとした征四郎が
「体躯は大きからず小さからず、色は茶。尻尾は~」と最初は外見的な特徴を話し始めるのですが
「己が必要とされればその役割に応えんと誠実のかぎりをつくす。与えられぬものを盗ろうとせず、与えられたものでも、必要とする者があらば、そちらへ譲ろうとする。威張らず、威嚇せず、平和を好むが、守るべきものがあれば雄雄しく立ち向かう。友情に篤く、その献身はかけがえがない。」と熱く語ってしまう。
もう胸アツです!
そんなゴローのこと、気まぐれに何処かへ行ってしまったわけではなく
どうやらこの鈴鹿の地の一大事のために……?
同窓の研究者“南川”、気の毒な若妻“お菊”、新しく知る言葉にときめきを隠さない娘、宿を営むイワナの夫婦、などなど
印象に残る人や場面はたくさん。
実は、最初に読んだ時の印象で『家守綺譚』の方ばかり読み返していたのですが
久しぶりにこちらを読んでみて、新たな気づきもありとても面白く感じました。
ところで、この本の題名でもある“冬虫夏草”をご存知ですか?
きのこと虫が合体した珍奇な生物。
調べてみると「きのこが昆虫やクモに寄生し、体内に菌糸の集合体である菌核を形成して、さらに昆虫の東部や間接部などから坊城の子実体を形成したものの総称」とか。
冬は虫、夏になるときのこになると信じられていたことから、この名がついたようなのですが、
なぜこの本のタイトルが冬虫夏草なのか…
このことを考えながら読みました。
終わり近くに“牛蔵”(山童)の放つ含蓄のある言葉に深く頷きます。
そして、この本も39の植物が章の名となり物語をつくっています。
自分自身の変化にも気づく楽しい時間でした。
お読みくださりありがとうございます。
皆さまどうぞすこやかに💛