例えば、ちゃんこーまい特製の梅干し。
頻繁に食卓にのぼるから、わざわざ味の感想を言うわけでもなければ、重宝がられるわけでもない。
買えばけっこうなお値段になるのに。
あるいは、知人から届く自家栽培の野菜。
コレはもう、せっかく送ってくれてるのに、出来がどうのとか、サツマイモ・里芋はいらないとか、すぐに文句を言う。
摂れたてなんて本当はすごく貴重なのに。
近くにありすぎると有り難みが薄れる。
他人に言われて、その存在を見直したりする。
友達に梅干しをお裾分けして驚くほど感動されたら、自分を誉めてあげたくなる。
同僚にサツマイモを押し付けて想像以上に喜ばれたら、たちまち知人の業績を讃える。
さっきまで気にも留めていなかったのに、途端に評価がぐんぐん上がる。
親戚お手製の、あたし史上、最も美味しい干し柿。

甲州百目柿というおっきなタイプ。
どこの家の庭にもあって、持て余してどうしようもないから仕方なく加工する。
それくらいの立ち位置だったらしい。
あまりにも旨いのに、どうして売りに出さないんだろうと、他人事ながらずーっとモヤモヤしていた。
それがここ数年で、陽の目を見る機会を得た。
どこぞの主が、ようやく商品化することを思いついた。
果たして評判は上々で、アレヨアレヨと人気モノになった。
※この辺、勝手な想像です
道の駅だの物産展だのに行ってみれば、1個500円なんてのも置いてある。
いや確かに、それだけの値打ちはある。
タダ同然の庭の柿が、あっという間に金を生む木に…
当たり前にありすぎて、その価値に全く気づいてなかったのだ。
まさに、灯台もと暗し。
一度他所の作品を買って食べみたが、圧倒的に親戚が作る干し柿の方が美味しかった。
絶対売れると確信している。
でも親戚は、売れるなんて夢にも思っていないのだ。
何て勿体ない!
何て欲のない!
天使と悪魔が、あたしに囁きかける。
天使「アドバイスしてあげなさいよ」
悪魔「もしバカ売れしたら、来年から送ってもらえないかもしれないぞ」
はい、迷うことなく悪魔の勝ち。
人は価値に気付くと欲深くなる。