厚みって幸せ。
くたくたのせんべい布団よりも、ぎっしり詰まったマットレスの方が心強い。
せっかく手紙を貰うなら、紙っぺら1枚よりもたくさんの便箋の方が嬉しい。
これは食べ物にも言えること。
肉汁をたっぷり含んだステーキ、外はカリカリ中はふわふわの厚揚げ、見るからにパワーのありそうな昆布…
でも、薄さがウリになることもある。
ステーキ肉をスライスすれば、たちまちローストビーフになる。
同じ豆乳から出来ている物でも、丁寧に掬い上げば湯葉になる。
旨味を凝縮した乾物は、カンナ(?)にかけられておぼろになる。
実演販売で削られていく昆布は、まるで羽衣のよう。まさに職人技。
ふんわりと酢の匂いが漂い、立ち止まらずにはいられない。
ついつい見かける度に購入してしまう。
厚さは安心感をもたらしてくれる。
薄さは高級感をもたらしてくれる。
目の前にあるのは、厚切りとも薄切りとも言えない豚ロース。
ソテーにするには物足りないし、しょうが焼きにするにはやや大げさ。
安さにつられて買ってしまったものの、明日のメニューを決めあぐねる。
中途半端は本当に困る。