例えばあたしがベートーベンだったら「自分から音楽をとったら何も残らない!」、ピカソだったら「絵を描いてる時間だけ生きている気がする」と言えるのかも。
だけど彼らでさえ、最善の選択をしたと言えるんだろうか?
もしかしたらベートーベンが研究家だったら、エジソン超えの発明をしてたかもしれない。
ピカソだって小説を書かせたら、村上春樹が嫉妬するような逸材だったかもしれない。
そうなると、ますます分からない。
あたしに至っては、天職に就くなんて夢のまた夢。
どんな業種に向いているのかすら不明。
職業適正検査なんてのをしてみると、あたしの診断は大体が芸術系かガテン系。
勧められるのは陶芸家とか大工とか。
確かに、とても魅力的。
だけど、絶対的に才能が足りない。
何ができるのかどころか、何がしたいのかすらはっきりしない。
①満足度や充実感は低いけれど、平均以上の生活を送ることができる。
②世間には溶け込めないけれど、コレ!!と思える何かに出会うことができる。
どちらかを選ばなければいけないと言われたらどうする?
あたしは間違いなく後者。
この本の主人公が、まさしく後者。
ひとつのことに夢中になるなんてなかった。
もしそんな仕事に巡り会えたら、どんなに苦しくて幸せだろう。
想像するだけで、ゾクゾクしてワクワクする。
自分なりの天職を探せたら、賃金以外の価値を見出だすことができるんだろうか。
今にしてみれば5年前の遺跡発掘作業は、我が労働人生のベストチョイスだったなぁ。
自由の身になったら、エジプトに行っちゃおうかしら。
