あたしが育ったのは、ザ・昭和な中流家庭。
オトコは外で稼ぎ、オンナは家を守る。
父の言うことは絶対。
外食のメニュー、子供達の服装や髪形、母のメイク、もちろんチャンネル権も…
1980年代当時のオヤジ達のご多分に漏れず、我が家でもナイター中継はマストでした。
文句など言えるはずもなく、ひたすら憂鬱な時間に耐える日々。
そんな中、動物モノや探検モノは数少ない親子の共通項で、夢中になって見たものでした。
そしてあたしがトリコになったのが、C.Wニコルさん。
憧れはいつしかおかしな方向へ導かれ、あたしのおかしな夢へとつながったのです。
幼心に浮かんだ夢は、母の「残念だけど、あんたは一生おじさんにはなれない」のひと言でバッサリ切られ、いつしか胸の奥底に仕舞われたのでした。
母の宣言は決して冷たい気持ちから生まれたのではなく、生理的に不可能なことであったと気付いたのは、あれからそう遠くない日。
もちろん、それはわかってる。
しかしあたしは高校2年生のある日、またおじさんになりたい衝動に、かられることになるのです。
その原因になったのが、椎名誠さんの怪しい探検隊シリーズ(通称・あや探)。

気の合うオトコ達が、ただひたすら自然の中で過ごす。
明るくなったら起きて、暗くなったら寝る。
何て素晴らしい!
それはまるで、ゆる~いC.Wニコルの世界。
女性には、こんな旅はなかなか難しい。
男性に比べて、外で気ままに寝泊まりするというのは、どうしてもリスクが大きい。
避けられない問題がいくつもあるのです。
もしあたしがオトコだったら…
あんなに焦がれたおじさんになれるのに!
今のあたしの願いは、一刻も早く閉経すること。
もはや行動はほぼおじさん、との噂もありますけどね。