使用者(会社)には、従業員が労働によって健康を損なうことのないよう配慮する義務が課されています。
これを「安全配慮義務」といい、労働契約法(第5条)に明文化されています。
(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
安全配慮義務は、使用者が負う契約上の債務なので、もし業務上のストレスなどが原因で、「うつ病」になってしまった場合、会社は債務不履行責任(民法第415条)を問われ、損害賠償を求められることがあります。
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
「安全配慮義務」違反とされるのは、次の2つの場合です。
(1)その病気やケガが、会社の責任で発生した場合
→ 会社の労働環境(危険・有害な仕事内容、長時間労働 等)に問題ありのケース
(2)その病気やケガが、会社の責任で悪化した場合
→ 会社の従業員に対する健康管理等に問題ありのケース
会社は、従業員が病気になって、その病状が悪化するおそれがあるときは、その病状の悪化を防ぐために、業務の軽減などの措置「増悪防止措置 」をとらなければなりません。
もし、従業員がメンタルヘルス疾患にかかっているときに、会社が何も措置を講じなければ、安全配慮義務違反の責任を問われる可能性があります。