トランプがINF条約離脱表明をしました
トランプ氏のINF離脱表明、米中ロ「新冷戦」招く怖れ(朝日)
トランプ米大統領が、米ソ冷戦終結の象徴だった中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を打ち出した。背景にはロシアだけでなく、ミサイル開発を進める中国の影もちらつく。米国がINF全廃条約の離脱に踏み切れば、日本の安全保障への影響も避けられない。(後略)
まずこの中距離核戦力全廃条約(INF条約)とは米露の二国間の条約でして、大義名分としては「ロシアが違反している!」と批判しておりますけれども、記事の通りに中国の中距離核戦力の拡充という面が非常に大きいのではないか?と思われます。
ただしこの中距離核戦力全廃条約なるもの、地上発射型だけを対象にしておりまして、潜水艦や航空機に搭載されるものは規制対象ではありません。
また日本では中距離核戦力全廃条約と訳されますが、じつは通常弾頭であっても規制対象。つまり地上発射型の中距離、短距離ミサイルの全廃がこの条約の目的です。
理由は2つほどありまして、条約当時の戦線はヨーロッパが想定されていたことであり、地上発射型の短中距離ミサイルは奇襲がしやすいために規制対象としたかったのが1点。もう1つは地上発射型はコストが比較的安く、大量配備が可能である点でしょう。
軍事的に言えば「両国のパワーバランス、均衡を壊しやすい」から規制されたと言えます。
しかし現在はイージス・アショア等々のミサイル防衛システムといったものがあり、条約締結当時ほど地上発射型の短中距離ミサイルが効力を発揮しないとも考えられます。
弾道ミサイルの射程については以下のように定義されているようです。
- 短距離弾道ミサイル:1000km以下
- 中距離弾道ミサイル:3000km~5500km
- 大陸(長距離)弾道ミサイル:5500km以上
あのさ、ぶっちゃけていって良いですか?今更INF条約を破棄しても、それによってパワーバランスが大幅に変化することはなさそうで、しかもINF条約をアメリカが破棄すれば、当然ながらアメリカ国内で地上発射型の短中距離弾道ミサイルなどの開発が進むでしょう。配備にしたって財政出動を軍事ケインズ的に行えるわけです。
経済側面から見れば「富国強兵」を地で行くことになるわけですね。単にトランプは「国内で雇用を作る財政出動」をしたかっただけの可能性があります。
そもそもINF条約を破棄したくらいで、中露とアメリカが事を構えられるわけがない。
ロシアにしても「何いってんだこの野郎!」と批判はしても、内心では「お、うちも財政出動できるわ」などと思っている可能性もあります。私がプーチンなら、結構喜ぶべき事態と受け止めると思います。
もっとも直接的な理由は中国の中距離弾道ミサイルの開発であり、それへのカウンターとしてという意味合いが最も強いと解釈するべきでしょうけれども。
日本の安倍総理はどのように振る舞っているのか?
上記のトランプのINF条約離脱は10月20日に報道されました。一方で我が国の安倍総理は10月25日に、じつに7年ぶりの公式訪中をしまして中国では融和ムードが広がっているとのこと。もちろん、それは安倍総理が対立路線ではなく、融和路線を取ったところが大きのであります。
田原総一朗「外務省が困惑する安倍首相の日中“共存共栄”宣言」(AERA)
米中新冷戦がどこまでエスカレートするのか。そして、日本はどうすべきなのか。実は、これが本原稿の主題なのである。
産経や読売、そして外務省も、日本は対米関係を強化して、中国には厳しく対応すべきだとして、安倍首相も当然こうした姿勢で中国に対応するはずだと捉えていた。
ところが、10月26日に北京で行われた日中首脳会談の冒頭で、何と安倍首相は、「今回の私の訪問を契機として、日中関係を競争から協調へ、新しい時代へと押し上げていきたい」と呼び掛けた。習近平国家主席は安倍首相の発言に同意するように耳を傾けた。安倍首相は、産経、読売、そして外務省の予想を裏切り、日中の“共存共栄”を謳い上げたのである。
これはかつての韓国と同じ外交、つまり「コウモリ外交」にほかならないのではないか?昔のネット上で、韓国のコウモリ外交はどのように批判されていたのか?おおよそ「恥がないのか!」「あっちへフラフラ、こっちへフラフラだと国債信用を失う」と言われておりましたけれども、はてさて日本の自称保守は現在の安倍総理の外交を批判しないのか?と不思議であります。
韓国のグローバル化は2000年台に加速され、それゆえにコウモリ外交と成り果てたのですけれども、日本のグローバル化は2010年台に加速し、そしてコウモリ外交の兆しがありありと浮かんでいるわけですから、たどる経路は韓国と一緒ということになりましょう。
報道では「日米同盟のさらなる深化!」等々も報じられておりますけども、INF条約離脱についての安倍政権のコメントは以下。
菅氏「事態回避を期待」 条約の意義強調(毎日 2018.10.22)
トランプ米政権による中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱表明に対し、日本政府は被爆国としての立場や国際的な核軍縮の流れと、同盟国・米国の主張の板挟みで、難しい状況に置かれそうだ。菅義偉官房長官は22日の記者会見で条約の意義を強調しつつも、「米国が離脱せざるを得ない状況は望ましくない。事態の回避を期待したい」と語るにとどめ、直接的な評価を避けた。
本当はこの歯切れの悪いコメント、被爆国としての立場などではなく、10月25日の訪中を控えての中国への忖度も入っていたのでは?と疑ってしまいます。
新冷戦は言いすぎかもしれませんけれども、確実に米中露はナショナリズムへの回帰を進めているように思えます。
そんな中で未だにグローバリズム至上主義を取る日本の経路は、各国の近隣窮乏化政策の的になるのではないか?との懸念すら芽生えます。
ちなみに安倍政権、じつは当初から中国に対して融和路線、といった説も。まあ私ですけど(笑)
日中協同世論調査に見る「余裕」と「事大」と立場の逆転の兆し-中国包囲網は幻想だった
嫌中なら安倍政権支持なんで出来っこないでしょっ?というお話でしたとさ。
※ちなみに私、別に嫌中ではありませんが。
富国と強兵
3,888円
Amazon |
日本の没落 (幻冬舎新書)
950円
Amazon |
平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
2,160円
Amazon |
コテヤンの好きなブログ紹介
進撃の庶民:毎日、気鋭の論客が政治、経済、思想に切り込む!コテヤン(月曜担当。気鋭じゃないw)も寄稿メンバーの一人です。影法師氏の進撃の朝刊も情報盛りだくさん!新聞の社説とかより全然こっちのほうがいいです。いやほんまに!
国家戦略特区blog:超人気ブロガーみぬさ よりかず氏による政治、経済コラムが毎日更新!ブログ名は新自由主義者を釣るためだとか(笑)
コテヤンの尊敬するブロガーの一人&先達です!コテヤンがファンって相当やで?
ずるずると道・郷・話を愛でる:重厚かつ濃密な論考をされるzuruzuru4氏が政治ブログランキングへ参戦!!
更新されたら必ず読みに行くブログの一つであり、氏の知的思考をたどることは大変に面白い!
ナスタチウムのブログ:ナスタチウム氏が海外の報道から、移民、難民、マスメディア、政治などに深く切り込んでいきます
特に移民、難民系の記事は「今そこにある危機!」として、皆様に是非とも見ていただきたいブログです。
うずらのブログ:うずら氏の記事ははっきり言って、そこら辺の社説よりレベル高い!
ストンと腑に落ちる言語能力、目の付け所が魅力的で、基本更新されたらいつも見るブログです!経済系が多いかも~
超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません:ニュートラルに世の中を見る!という意味において大変に素晴らしい!若き論客が考え、思考する。
しかもかなりアカデミックな部分も多く、文章も分かりやすく親しみやすい。若い世代の「期待の論客!」としてコテヤンイチオシ!なのです!
新世紀のビッグブラザー 三橋貴明:いろいろとあったようですが、それでも経済に対する分析力は流石の一言。私では到底かないません。
経済系の有意義な分析を記事にしてくれる意味において(しかも無料で!!)、絶対に外せない大人気ブログの1つであります。
「その言説が有意義なんだから、紹介しないのはもったいないじゃないかっ!」なのですよ。
僕たちは戦後史を知らない――日本の「敗戦」は4回繰り返された
1,620円
Amazon |
英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)
821円
Amazon |