渋滞学 (新潮選書)/西成 活裕

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7月20日にあった人工知能学会のセミナーで西成先生の話を聞いて、それが面白かったので図書館で借りてきた。
だいたい1日で読めてしまった。セミナーの内容の復習になった。

まず簡単な紹介を。
一般の方におすすめな本である。
事故でもないのに、なぜ渋滞がおこるのか?
信号に引っかかりにくい走り方は?
これらの答えを知りたければ、是非読んでほしい。

以下感想。

復習というのはいいもので、当日はふんふん、なるほど、とある種圧倒されて聞いていたことがらが、実はよくわかっていなかったということを教えてくれる。
例えば、ASEPにSlow to startのルールを入れると,実際の渋滞のようにメタ渋滞とその後の3本線がでますよ、と講義で言っていたと記憶していた。
しかし、実は「前の前の車を見て動き出すか判断する」というルールも入れないとメタ渋滞は見られるけれども、3本線はでないらしい。聞き逃しか。

また、誤解していた、という事柄も見つかった。
例えば、フィールドフロアモデルで、競合、譲歩をセルオートマトンのルールに落とすところで、全く逆にとらえていたりした。
お見合いするのが競合で、どっちかを先に通すのが譲歩なのね。語感で判断してはいけないな。

本書のようにシミュレーションによって、現実世界を説明しようとするときに、必ずいじわるな突っ込みとして出てくるものがある。
「シミュレーションしたらこうなりました」
という説明に対し
「でも、現実はすべてシミュレーションできないでしょ?」
という突っ込みである。
西成先生はだからこそ、観測データをたくさん、たくさん集め、誠実に比較することが重要だ、と説いている。
(だけど、結局聴衆や読者が納得してくれるかどうかだから、共通認識に乗っ取って行く必要があるわけで、今後もそれで通用するのかはわからない。だって、たくさん集めたって、すべてを集めることは不可能だしさ。

一般向けの内容である。そのため、大胆に取捨選択を行っている。
特に、数学的な記述は皆無である。
やはりこうしないと一般の人には売れないのだろうか。
本書の最後のほうで数学も大事だよって言ってるのは
数学0の人をターゲットに数学0.5くらいにはなってほしい
という気持ちもあるのだろうか。

講義の際は「私は一日交代で数学と実験をやっています」とおっしゃっていたが、さすがにみんながみんなそんなレベルになれるわけでもないしね。