新幹線でなく。
おまけに各停で熱海まで。横浜から小一時間。


目に入る沿線の花の色。
この線には今の時期、山側にミカンの黄色が加わる。

中央線山梨方面なら、梅・桃・桜が同時に。
福島の三春のようだ。


熱海は名のとおり暖かと見えて、ソメイヨシノの開き具合も都内より多く感じる。
これも各停の良さ。

―――――――――――――――
用の美、と民芸で言われて久しい。
器として用いるならば、花を引き立てる花器、点てた茶の映える茶碗(茶入れは不問)、料理に欠かせない食器という本質。

花瓶のフォルムに模様や彩色を施すなら、それは花は不要の陶芸だしそういう造形もある。

花器ならば。
整った姿型でも歪んだ形でも良かろうが、色と色数には自ずと制約があろう。


利休が楽の黒茶碗を特に好んだのもそうした理由か。


懐石の折敷の景色で、変化をつけられるのは向付の器。
円形のフォルムと決まってる塗りの飯椀汁椀に対し、刺身のことが多い向付は器も多様。


焼きも様々、織部・萩・美濃・清水・伊万里・九谷…
それに連れて色も緑・白・茶・白地に青・白地に赤・黄…


意匠は無数に。四角や楕円形から扇をかたどったもの、割山椒と呼ばれるもの、松皮菱、所謂とんすい形…


自由だが、刺身とつまが乗るという前提と、それらが食べられて空になっても意匠として楽しめること。
これが大きいだろう。



制約ある中で如何に工夫するか。
茶懐石の会記を再現する展示もあり、実際に盛りつけた写真を添えたものは面白い。(三井記念館、畠山記念館)
道具がにわかに身近に感じる。

工芸中、用具の分野に当たるものには使い手の視線をわかって製作して頂くと、嬉しい。