昨年から、滋賀方面での設計案件がいくつか動いています。私の自宅から車で行く場合、名神高速ルートが普通ですが、西名阪+名阪国道ルートもあり、最近はそちらを活用中。今回はその帰途で寄り道をしたお話であります。

 

名阪国道から滋賀へ北上する際、「伊賀」と「甲賀」を通ります。どちらも忍者の里ですね。でも古い器好きの私が惹かれるのは、断然「伊賀」。渋い古伊賀の花入などへの憧れを胸に、今回は伊賀の窯元へと立ち寄りました。

 

訪れたのは老舗の窯元「長谷園」さん。緊急事態宣言下なれど、ちょっとした寄り道ですのでご容赦を。国内の移動が自由になったら是非全国の「窯元巡り」をしたく思っているんですが、今回はその第一弾というわけですね。

 

長谷園さんと言えば炊飯土鍋「かまどさん」が非常に有名で、私も2合炊きのをもっています。しかしそれは最近のヒット商品であって、創業は天保三(1832)年。200年近く続く窯元であり、施設もその歴史を感じる佇まい。

 

 

上の写真にある建物群、元は窯主の住まいだったそうで、どれも国の登録有形文化財として登録されています。今はギャラリーとなっていて、かまどさん始め多彩な商品群もあり、創業時からの歴史をたどる展示もありました。

 

古い木造建築で古い伊賀焼を見られるなんて、なんとも夢のような時間です。内部空間の雰囲気と、並んだ焼きもの達の味わいとを共にじっくり時間をかけ堪能させていただいた次第。内部の撮影は不可にてご紹介できず残念。

 

体感して改めて強く感じたのは、こうした焼き物の風合いと古い木の建物とは非常によく合うということです。例えば冒頭の写真で、暖簾の下の土間に敷かれているのは大きな陶板。自然素材同士が心地よく馴染んでいました。

 

 

こちらでは、看板の前に吊るされた照明の傘までもが伊賀焼なのでしたw。さらに向こうの格子の前には人の腰高ほどの台(?)が並び、上に植木が飾られています。木と漆喰と焼きもの、何とも言えずよく調和していますね。

 

そして今回の見学の白眉は、こちらも登録有形文化財となっている「十六連房登り窯」です。1832年の創業時から昭和40年代まで現役で稼働していた窯、16連の規模で現存する登り窯は日本にこれ一つしかないのだそうですよ。

 

 

いやあ何とも立派な雄姿ではありませんか。かつてこの全ての房を焚き上げるには15から20日間を要したそうで、その間昼夜を問わず薪をくべ炎を維持するのは大変なことだったことでしょうね。ちなみに現在はガス窯だとか。

 

かつて「筒井伊賀」「藤堂伊賀」等と呼ばれ茶の湯の世界で一斉を風靡した伊賀焼ですが、現在は多く「耐熱調理器」としてつくられ、その代表が「土鍋」。伊賀の土には焼くと耐熱・蓄熱性に優れるという特徴があるのです。

 

 

これは乾燥中の土鍋たち。伊賀に限らず、古くからある焼きものの産地に共通するのは「良い土」と「燃料となる森」に恵まれていること。これも古い器集めと、そこから産地についての理解を深めていく中で学んだことです。

 

しかし、器だけを鑑賞しても、書籍やWEBから産地や製法の知識を深めても、やはり片手落ちの感は否めません。最近それを強く感じていた私には、帰途の寄り道ではありましたが、大いに得るところのあった産地探訪でした。

 

via やまぐち空間計画
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