私がつくった間取りについて語るシリーズ、その12回目です。今日は二世帯住宅、それもいわゆる「離れ」に近い形での住まい。玄関も別々、ご夫妻とお子さん、そしてお母さんが住まわれる家になります。

 

敷地は100坪以上ある大きなもの。方位が50度ほど傾いていて、南東が道路というこれまた非常に条件の良いところですね。となると日照条件から考えて、道路側がお庭で建物は奥へ、という配置計画が順当なところでしょう。

 

ここで方位をもう一度検討し、敷地の南側を「空き」にして、それを取り囲むようなL形の配置を考えました。「L」の長辺がご家族、短辺の方がお母さんの離れです。そして玄関は別で、かつ渡り廊下でつながる方式に。

 

お母さんはお一人といっても「二世帯」です。普段の暮らしでの双方のプライバシーを重んじるのであれば、もし今回のように敷地条件が許す場合には、こういう渡り廊下式が最もそれに近いのではないでしょうか。

 

無論、二世帯住宅には様々なバリエーションがあり得ます。今回も水廻りは共有していますので普段の行き来はある。でも一人で過ごしたい時にそれが出来る「居場所」というのもとても大事だと、私は思いますね。

 

世帯間のつながり具合、離れ具合についてのご希望はご家族によって違います。玄関、部屋、水廻りをどの程度共有するか、その「位置関係」および「心理的関係」をどうするかが二世帯住宅のキモではないかと。

 

さて、それぞれのお宅に入っていきましょう。子世帯の方の玄関には下足入の他にシューズクロークも有り。そしてそこから引戸で入るとすぐに「家族の間(LDK)」。このLDKには2つの「段差」が用意されています。

 

ひとつは椅子の高さに設定された「畳座」です。大きさは3帖。ソファを置かずに暮らすこのご家族の「大きな椅子」のような場所ですね。もちろんその40cmほどの段差の下は、引出になった収納スペースに活用を。

 

もうひとつの段差はキッチンです。キッチンカウンターの前にも椅子、横にはダイニングテーブルがありますね。通常のキッチン高さ85cmとテーブルの70cmを揃えるため、キッチンの床を15センチ下げているんです。

 

朝食や軽食などはキッチン前で食べたい、というご希望はよくお聞きするところですが、普通ですと椅子がハイチェアになる。でもこの段差を受け入れていただけるならば、テーブルを含めた全体が同じ面に揃いますよね。

 

こういう家を今まで何度もつくっていて、正直この段差を一般の方が図面段階で想像するのは難しい。でも実際つくったら不便はない、とほぼ全てのご家族からお聞きしています。もちろんそれは間取り次第ですけれどw。

 

台所の横は奥さんのための家事室で、そこから水廻りへと動線が連続するようになっています。場合によってはこの家事コーナーまで床を下げてもいいですね。そうすれば勝手口への段差も想定的に少なくなりますから。

 

水廻りは共通なのでお母さん世帯に近い側。その手前にピアノスペースがあり、その向こうにもうひとつのお庭がひらけています。この北東側のお庭はお母さんの寝室からも楽しめるようになっているんですよ。

 

ダイニングテーブルの横には開閉自在な畳の間があります。客間としての意味合いもあり、宿泊用の予備室とも言える場所です。そちら側にも小さなお庭をとり、上のピアノ側からこちら側への風の抜けも考慮しました。

 

お母さんの「憩いの間(リビング)」はお一人用なので小さいですが、ミニキッチンを用意しました。そして寝間とウォークインのクロゼット。子世帯とは室内とは別にウッドデッキでもつながっていますね。

 

2階は子世帯のご夫妻寝室とクロゼット、小さなご主人の書斎コーナーもありますね。その他はいまのところお子さんも小さいのでフリースペースで、将来的には4.5帖+収納の個室が3つ確保できる想定です。

 

その場合は、吹抜を一部床にすることになっています。でも実際にどうなるかはお子さんの年齢差にもよるので今はまだわからない。でもこうして想定をしておくことで、窓の位置と大きさを決める根拠になりますから。

 

「想定」ということで言いますと、実は今回の「離れ」付き二世帯住宅、当初は子世帯のみでの建設予定だったんです。でも将来的にお母さんを引き取ることになるので、そこまでを考えておきたい、とのご意向でした。

 

間が渡り廊下なのも、それが主な理由だったのでした。とにかく家は永く住むことが一番、せっかく注文住宅で建てるのだから、「将来の暮らし」を詳細に思い描くことが非常に重要だと、今回はそういう事例でもありますね。

 

 

via やまぐち空間計画
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