本を紹介する本は多数あるが、そのときに重要になるのは、なぜその本を選んだのかというストーリー性だ。
そのストーリーが合理的でなめらかであればこそ、ただの名作の紹介分の寄せ集めでなく、
1冊の本になるのだろう。
そう感じさせてくれるのが表題の池上彰著『世界を変えた10冊』だ。
前書きで、著者は「世界に大きな影響を与えた本は他にもあり、独断と偏見で10冊選んだ」と語っているが、非常に論理的なストーリーを語ってくれる。
本書では、紹介する本の原文を5-6行引用し、それを著者が解説する形で進んでいく。
この引用文の選び方もうまい。
重要かつ、おもわず「へぇ」と思うような内容が引用されている。
例えば、『聖書』の紹介では、
・なぜ、日曜日が休みなのか
・なぜ、キリスト教徒は豚を食べないのか
などを引用し読者の興味を引き付ける。
次に続く、『コーラン』の紹介では、
前章の『聖書』との対比で、イスラムの考え方をわかりやすく説明してくれる。
・ジハードは天国への特急券
・イエスは神の子、ムハンマドは代理人
といった感じだ。
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本書で紹介される10冊は以下の通りで、
どれも世界中で時をこえて読まれ続ける不屈の名作だ。
著者の慧眼が見て取れる。
『アンネの日記』が中東問題に影響力を持つ理由とは?
日本人だけが知らない『小型聖書』の内容とその歴史
『コーラン 上』から見えてくる穏やかなイスラム教
禁欲主義が成功を導く?
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
『資本論 』は資本主義の欠陥を暴き、革命を招いた
アルカイダの教書『イスラーム原理主義の「道しるべ」』の中身
放射能、農薬……科学の落とし穴を告発していた『沈黙の春』
『種の起源』が招いた宗教VS科学の対立に悩まされるアメリカ
経済不況の処方箋となった『雇用・利子および貨幣の一般理論』
『資本主義と自由 』の価値観がリーマン・ショックを導いた
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本書は、名作に入る前の案内人として、最適である。
ぜひ本書を読み、気になる名作にチャレンジしてほしい。