長い時間の流れの中で【81】 1・17 失い続ける時 | ぴかるんのブログ

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ピンクのポンポン

ピンクのポンポン★80(80-81)



※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です

 尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。


§☆§★§☆ V⌒⊥⌒V ☆§ ★§☆§

 翌朝、またおばあちゃんも含めて五人で朝御飯を食べた。
 朝食前に、父がトイレに立ちがてら、何処にどんな人が居るのかを見て回った所、おばあちゃんの言葉通り、壁際や入り口近くに、お年寄りの人達の姿が多いようで、中には咳こんでいた人も居たようだった。

 父は、避難所の世話をしている役所の人に、お年寄りが寒い壁際で過ごすと風邪等、ひきやすくなって、身体に悪いのではないか?と、意見したものの、そこまでは手が回らないのと、深夜から早朝にかけて、お年寄りがトイレに立つ頻度に対してクレームが出ていいたり、中には夜だけお年寄りにはオムツをつけて貰えないのか?とまで詰め寄る人も居るという回答のみで、何も対応して貰えそうにはないことを、おばあちゃんに告げた。
 「心配してくれて、ありがとう。でも、娘が迎えに来てくれるまでの辛抱やから」と、おばあちゃんは笑った。


 その日、もう一度、家族で祖母へ会いに行くと、祖父がひどくうなだれていた。おはようの言葉を言う前に、両親が顔を見合わせた後、父が声を掛けた。
 「何かあったんか?」
 祖父は顔を上げてから言った。
 「あぁ、来たんか。昨夜、遺体をどないするか?いう説明を、そっちの部屋へ聞きに行っとう間に、ショール、盗られたんや」
 「取られた? 何で?」
 「多分、盗まれたんやろな」
 「そっちの、『盗られた』か……」
 「多分な。化粧品でさえ、返ってこんのや。他の人の遺体の掛布団、めくる訳にいかへんし、もしかしたら、持って行った本人が使うとるかもしれん。ばあさんに悪い事したわ…… 昨日、そっちへ持って帰ってもろてたら、こんなこと、ならへんかったのになぁ」
 「……。一緒や。こっちも、居らへん間に、荷物、持ってかれてしもたわ」
 「ほんまか?」
 「ほんまや。せやから、昨日、貰うの断ったんや」
 「そうやったんか…… 辛いなぁ。普段やったら、あらへん(起こり得ない)ことや」
 そう言うと、祖父は再びうなだれてしまったのだった。

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<(_`_)>
{ どうせなら、京様は
一発芸をやってからでないと、
お茶に行けないようにするとかね

結局、トッツーは最後まで急須が作れなかったことを
思い出し笑い♪
 ]