千葉市議会議員+千葉から日本を元気にする
山本直史です。

【弘前市の人口減少対策について】

弘前市の現在の人口は17万2,000人であるが、何も対策をしなければ2040年には人口が13万人になると見込まれている。
 

この2040年に人口が13万人になるという推計は国の機関である国立社会保障・人口問題研究所による将来推計人口だ。

人口は地域活力の源泉であり、持続可能な地域社会を構成する最も重要な要素と捉えている。

人口減少→消費活動の減退→所得の低下→税収の減少→社会保障費の増大→行政サービスの悪化というスパイラルに入り、何も手を打たなければ地域経営が破たんする危険性も想定される。

その一方で、人口減少の要因は出生率の低下による少子化に加え、弘前市の平均寿命(40~50歳代の死亡者が多い)が短いことや、大学などの高等教育機関が多いことから特に20代~30代の女性は大学を卒業してから市外へ転出する傾向もある。

そこで弘前市では今から4年前の平成26年度から人口減少対策を国の動きに先んじて取り組ん出来ている。


【3つのポイント】
①出生数・出生率を上げる
→婚姻件数の増加/結婚の早期化


施策の一つに「弘前めぐりあいサポーター出愛(であい)創出事業」があり、
平成26年~29年に行われた同事業で「10組」が成婚に至った。

現在掲げている合計特殊出生率の目標は過去に同市の最高だった1.58(昭和58年~62年)で、出生率を1.58へ戻すためのに各種施策が行われている。

②死亡者数・死亡者率(男女別・年齢階層別)を抑制する
→特に40~50歳代の死亡者数・率の抑制


弘前市では特に40~50歳代の死亡率(人口当たりの死亡者数)が他地域に比べて高い傾向にある。
 

死因はがんや糖尿病などの生活習慣病であることから各種検診や保健指導を充実させることで疾病の予防と早期発見を通じて対策を行っている。

③転入者を増やし、転出者を抑制する
→特に20~30歳代の女性


弘前市には高等教育機関が多いため、女性が将来子どもを産む子供の数である合計特殊出生率(弘前市1.3)が低くなる傾向にある。

女子学生が多いから分母の女性の数は増えるが、大学在学中は結婚出産はしない、さらに卒業すると市外へ転出する傾向が強いため、合計特殊出生率は低いと分析している。

また具体的に「出会い→結婚→出産→子育て」のプロセスを進めて行くためには、安定した雇用創出と子育て世帯の所得水準向上も実現して行く必要がある。

【具体策】
〇都市と地方をつなぐ就労支援カレッジ事業

〇地域産業のイノベーションと成長による雇用の創出
①りんご産業イノベーション戦略の推進
②ライフ・イノベーションの推進による健康・医療産業の創出

〇子育て支援策
・多子家族学校給食費支援事業(3人目以降を半額に)
・多子家族上下水道料金支援事業(2000円補助)
・中学生(2年生)を対象としたピロリ菌検査事業

〇弘前版将来活躍のまち構想
・地域課題の解決のためにアクティブシニアの受け入れ
→就業意欲、社会参加への意識が高い方の移住を受け入れる

【山本の視点】
弘前市において人口減少を食い止めるための施策は各方面にわたり進められていた。

弘前市は地方自治体としては非常に頑張っているが、その取り組みによりどの程度の人口減少が抑制されているのかという事業の成果がどの程度出ているのかを確認するためには、もう少し時間をかけなければならないと感じた。

ポイントの一つである、弘前市内にある大学を卒業した20代~30代の女性が、弘前市の男性と結婚し、新居を構え、出産をし、子育てをするということなのかも知れないが、例えば医療系大学を卒業して看護師になった方は自らのキャリアのためにもより多くの症例に携われる都内へ行くということも十分理解できるため、なかなか行政側の取組みだけでは実現しない部分もある。

また弘前市では市民一人あたりの課税対象所得300万円を目指しているが、この所得は平均値だけに、なかなか実際の子育て世帯が安心して子育て出来るための所得水準に引き上げるというのも、行政側だけの取り組みでは限界がありそうだ。

担当者との意見交換の中で、IT系企業の誘致も視野に入れているそうだが、IT企業にとっても「なぜ弘前市なのか?」という点、つまりIT系企業が「それなら弘前市に本社を移します」と決断するための理由が必要になるため、そう簡単には進まないだろう。

しかしながら人口推計を軸に、弘前市ではかつて最高だった出生率をこれからの目標に掲げたり、40~50歳代の死亡率の抑制など、弘前市ならでは取組みを進めれれていたことは大きな学びであった。

千葉市と比べると、弘前市の取り組みはかなり前に進んでいることは間違いなく、千葉市にとっても弘前市を参考にして、さらに具体的で効果的な施策を推進して行く必要がある。