働くということ・51  田原眞紀さん | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

ソフトバンクモバイル株式会社
マーケティング本部
マーケティング・インテリジェンス統
括部 総括部長 田原眞紀さん


こうやって時々メディアの方がお見え
になって、私のことをすごいすごいっ
て取材して帰られるんですけど、
何がそんなにすごいのか、私にはちっ
とも分からないんです。

確かにソフトバンクモバイルは、話題
になる多くのことを発信している企業
です。けれども私がそれらのプロジェ
クトを企画して発信しているわけでは
ありませんし、女性でありながらその
ような企業の統括部長という立場で働
いているからというのであれば、それ
はそれで少し違和感がありますね。

ひょんなきっかけで出席することにな
った買収直後の経営会議で社長の目に
止まり、あのよく話す女性を経営会議
に出席させるようにと指名されるよう
になったことが現在の仕事につながっ
ているというのは本当です。

けれども、そういう機会を虎視眈々と
狙っていたわけではなく、その会議の
席でたくさん発言したのも、ただただ
必死だったからなんです。

今、自分の意見を求められている。私
のできる一番の答えで応えなきゃ。

そう思って、必死に反応していただけ
なんです。私の場合、これは仕事に対
する思想というより、本能に近いかも
しれないですね。

私、両親が共働きだったんで、祖母に
育てられたんです。何でもきちんとし
ないとダメですよって、とても厳しく
私のことを育ててくれた祖母でした。

三つ子の魂じゃないですけど、こうし
なさいと言われたことに対して、一生
懸命それをやり遂げようとする気持ち
は、祖母が私に与えてくれた心なんで
すね。

それと私、自分に自信があるほうでは
ないんです。なので、与えられたタス
クをきちんとやり遂げようとすると、
隙のないようにコツコツと材料を積み
上げていくようなやり方になっちゃう
んです。

田原さんは完璧主義だね、なんて言わ
れてしまうんですけど、自分としては、
そうする以外にやりようを知らないと
いうことだったりもするんです。

現在はマーケティング戦略や施策の立
案も行ってますが、マーケティングリ
サーチが私の強みです。

これは前職も含めて社会に出てからず
っと携わってきた分野なので、私にと
って唯一、ちゃんと仕上げることがで
きるという自信の持てる仕事です。

市場からの声は、いわば会社の方針を
決める根拠にあたるものですから、正
確なデータであることは当然です。

けれどももっと大切なのは、その使い
方なんです。

お客様のため? もちろんそうなんで
すが、あらゆる判断は会社にとって正
しいかどうか、という基軸に集約され
るべきだと思います。

例えば、いくらでも安い方がいいとい
うのが料金に対するお客様の声です。
ならば、会社がつぶれるほど料金を下
げてもいいのか。

例えば、ある端末を大量に導入しよう
という社長のアイデアがあったとしま
す。ならば、社長の仰せの通りにうな
ずいていればいいのか。

どちらも違うと思うんです。

お客様の満足度が向上することも、ソ
フトバンクを日本で一番の携帯電話事
業者に育てようと頑張っている孫社長
の夢を実現することも、正確なデータ
を会社のために生かせてこそ可能だと
思うんです。

だから私、必要であれば社長とだって
意見を違えます。

それは違うと思います、と私の立場で
言える範囲で言葉にすることが、この
仕事をきちんとすることだと思うんで
す。

そういうことが得意というわけではな
いんですよ。でも頑張っている人の支
えになれたり、喜んでもらえることが
単純に嬉しくて出来ちゃうのかもしれ
ません。それだって、働く動機として
十分に素敵ですよね。

Interview, Writing: 山口宗久

「かもめ」2008年9月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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