働くということ・45 小泉武夫さん | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

東京農業大学
教授 小泉武夫さん


私はね、いま7つの仕事を持ってるん
です。大学教授、エッセイスト、小説
家、食の冒険家、発明家、コピーライ
ター、酒蔵の共同経営者。これで7つ
ですね。

大学にこもって研究ばかりしてると、
象牙の塔にはいったような人間になっ
ちゃいますから、もう自分の興味のあ
ることはどんどん、それやってみよう
ってことになる性格なんです。

お陰様で、どれもただやってるだけと
いうだけでなくて、それなりの評価を
いただけるほどに結果を残せています。

忙しいでしょうと言われれば、確かに
その通りなんですが、もう私はルンル
ンなんですよ。楽しくて楽しくて、仕
方がない。

著作が95冊ありますよなんて言うと、
どこにそんな時間があるんですか、と
こうくる。

お母さんが集まる講演会で、子どもさ
んたちになるべく食事を作ってあげな
さいと話すと、仕事があるのにそんな
余裕はないと、こうくる。

そうですかね、と私は思うんです。

7つの顔を持つ男なんてはしゃいでる
私にしても、1日24時間は同じなんで
す。

その中で私はこんなにも仕事や人生を
楽しんでるのに、食事すら作る時間が
ないと不平を漏らす人がいる。不思議
だと思いませんか。

私はいつも、8×3の哲学で生きなさ
いって言うんです。

8時間も働いて疲れているなら、たっ
ぷり8時間寝ましょうよ。それで仕事
もできて、疲れもとれるでしょう。

でも毎日あと8時間も残ってますよ。
その時間を有効に使えてますか、子ど
ものために食事の仕度をする余裕もな
いですか。そういうことです。

私はその時間に、エッセイや小説を書
いたり、料理を楽しんだり、いろいろ
なことをやってます。

そうすることで、リフレッシュできる
だけでなく、時にはそれがお金を生ん
でくれることだってある。こりゃ楽し
いはずですよ、我ながら。

ただしね、いきなり同じようなことを
しろったって、それは無理です。人の
生き方にはそれぞれ流儀がありますか
ら、例えば時間を有効に使えていない
人がそれを変えようというなら、新し
いリズムを体の中に作らなくてはなり
ません。

それまでの生活でこびりついたリズム
を払拭するところから始めなきゃいけ
ないわけで、確かにこれは骨の折れる
作業になります。

いやぁ、それはしんどいなぁというな
ら、それまでですけど、目標を持つと
いうことが新しいリズムを身につける
大きな助けになるということは知って
おいて損はないと思います。

それも、目の前にあって、比較的近い
将来に次々と結果が見えてくるような
フレッシュな目標であるべきです。

あまり遠い将来や現実とかけ離れた
目標を掲げちゃうと、モチベーション
を継続させるのが大変ですし、生き方
が年寄りじみてしまいます。

人生はね一度しかないんだから、もう
燃えなかったら損だと思うんです。

燃えて燃えて、燃え尽きろって感じで
す。20代や30代なんて、若いんだから
どんどん目標見つけて、それに向かっ
て自由にやればいいんです。

ただしね、実は経験も知識もまだまだ
不十分なその年代の若者に、自由にや
りなさいなんて放り出しても、何をす
ればいいのかさえ分からないものなん
です。

大人はそれを分かった上で若者に自由
を勧めるべきで、つまり同時に自由に
やるということの道筋を説いてあげな
きゃダメなんです。

何かをやろうとしている若者に、むき
出しなくらい分かりやすい物語を語っ
て、そのロマンを追い求める自由が、
どれだけ素晴らしいことかを伝えてあ
げなきゃダメなんです。自分自身の自
由な生き様を見せることも含めて、ね。

Interview, Writing: 山口宗久


「かもめ」2007年12月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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