働くということ・36 菅原勇一郎さん | くるまの達人

くるまの達人

とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

株式会社玉子屋
代表取締役社長 菅原勇一郎さん


先代が築いたこの玉子屋ですけど、社
長としての器は僕のほうが数段上だと
いう自信があります。

何も知らない人が突然こんな言葉を聞
いたら、2代目が何を言っているんだ、
って思うかもしれませんね。でも僕と
父親の間に、素直に長所と短所を伝え
あえる関係があってこその言葉なんで
す。

父親に帝王学を意識した育てられ方を
したせいか、サラリーマンとして大成
しようとかいう考えはありませんでし
たし、常にビッグになることを意識す
るような若者でした。

それでも大学を卒業して銀行に就職、
その後、僕のことを買ってくれた社長
の下で流通マーケティングの仕事を経
験したのは、経営者として必要なノウ
ハウを身につけたかったという気持ち
があったからです。

もっとも銀行時代には、この大きな組
織の中でこそ生かせる仕事でビッグに
なる方法を模索してもいいのでは、と
いう気持ちも脳裏をかすめましたね。

結果的に玉子屋を継ぐ道を選んだのは、
規模の大小は関係なく、自分の能力を
生かせる場所がそこにあると気づいた
からです。いろいろな現場に触れてい
く中で、働いてる社員みんなが楽しく、
しかも世の中に必要される会社って何
だろうって思うようになったからなん
です。

僕は常々、自分の能力を100%出し切
る努力をしてみろと社員に言ってます。

ポテンシャルの高さをいいことに、力
半分で同じ成績をあげることよりも、
がむしゃらに頑張って取り組む姿勢の
ほうがずっと尊いと思うのです。その
結果がやっと及第点だっていいじゃな
いですか。

個々のそういう姿勢が企業の勢いを生
み出しますし、その頑張りを継続させ
れば各人のポテンシャルだって上がり
ます。

それでも誰にだって得手、不得手があ
るものです。ならば自分がたいへんな
ときにみんなが助けてくれて、でも誰
かが苦しんでるときに自分が助ける。
そういう関係が仕事を楽しくするんじ
ゃないですか。

ただそのためには、互いの長所を認め
て、短所を指摘できる環境が整ってい
ることが、とても重要になります。

よくそういうことを口にするのは気が
引けるという話を聞きますが、それが
できればとても楽な人間関係が築ける
ことは分かってるわけですよね。

じゃあ、なぜやらないんですか? っ
て逆に聞き返したくなりますよ。

尊敬や指摘をしあう会話の円滑さと、
信頼関係の深まりは、ループしながら
組織のレベルを高めていくんです。

僕と父親の関係だって同じです。第三
者の目には生意気な2代目にしか映ら
ないかもしれませんが、まず最初に心
のつながりがあるからこそ、互いをひ
とりの男として評価しあう視点に立て
ているんです。

もちろんこのことは、僕と社員や社員
同士にも言えることで、その間に血縁
関係があるとかないとか、そんなこと
は関係ないんです。

先代がゼロから1日2万食にまでお客
さんを増やした創業期のプロセスは偉
業だと思います。僕には真似できませ
ん。

でも2万食を7万食に増やした組織作
りは、先代にはきっとできないことだ
ったでしょう。

ただ、それがどうした、ってことなん
です。

僕は目標をクリアすることに邁進する
だけの目標中毒症に冒されたくはあり
ません。ただ全力投球の男でいたいん
です。今の玉子屋の7万食は、その結
果に過ぎないということなんです。

Interview, Writing: 山口宗久


「かもめ」2007年2月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa