株式会社ギリー
代表取締役社長 渡辺幸裕 さん
独立ってけっこう難しいですよ。僕は
社会に出たら一緒に働いてみたいと思
う人がいて、サントリーという会社に
入ったんです。希望通りその人の下で
働くことができて、単なる憧れだった
学生時代の思いをはるかに超える発見
がありました。
その人との出会いが、僕の人生の中に
大きな影響を与えたと言えますね。
もっと言うと、大小の違い、善し悪し
の違いはあるでしょうけど、人は出会
ったすべての人に影響を受けるものな
んだということに気づいたサラリーマ
ン時代だったのかもしれません。
そういう意味では、出会いは特別なこ
とではないとも言えるでしょう。
ただ肝心なのは、出会った人たちから
の影響をどういう風に受け止めて、ど
ういう風にリアクションするかという
ことでしょうね。
流されない自分を持ち続けるというこ
とも、大切なんです。
人はひとりですべてをこなすことなん
て、出来ないでしょ。誰かの存在があ
って初めて可能になることが、山のよ
うにあるんです。
会社を辞めようと決めた時に、もうサ
ントリー時代に築いたネットワークは
使えないんだぞ、会社を辞めるという
ことはそういうことだぞと、たくさん
の忠告の言葉を受けました。
確かに組織の力っていうのは、大きい
んです。
もちろんその中にある時は、プロのサ
ラリーマンとしてやってきた自負もあ
りますし、たとえ歯車のひとつに過ぎ
ないと言われても、自分がいなくなれ
ばガタガタになっちゃうという、歯車
としてねじとしてのプライドがありま
した。
ただ一方で、自分がいちばん元気にい
られる場所はどこかと考えたとき、そ
れは組織ではないという結論に達して
紆余曲折の末、最終的に会社を興そう
と決意したわけです。
ところが実際にひとりでやってみると、
実に難しい。名刺の威力は偉大だった
と、気づかされたわけです。
ギリーという会社は、人と人を結びつ
ける案内役です。平たく言うと、コン
サルティングとかコーディネートとい
うことでしょうか。
つまり、とにもかくにも独自のネット
ワークを持っていなきゃならないんで
すね。
けれども、もう誰もが知っている企業
の一員として認知してもらうことは出
来ません。
どうするか。
起業してまだ5年目ですが、その時間
の中で学んだことは大きく2つです。
まず自分を好きになってもらうこと。
好きになってもらわないと何も始まり
ませんからね。そのためには、謙虚で
あることがとても大切です。
そして数多くの実体験を積み重ねるこ
と。どんなに得意とする分野で、人知
れず努力をしていても、百発百中とい
うわけにはいかないでしょう。
これほどバーチャルな時代であっても、
現実の世界に魔法はないんです。
時間を掛けてひとつずつ積み重ねてい
くしかないし、本物の視点はそういう
経緯の中でしか育たないと思うんです。
失敗しても焦らず、成功しても奢らず。
お金儲けだけが人生の目的だなんて、
考えたくないですからね。
こういう自分の思考だって、きっと出
会った人たちの影響を受けているに違
いないでしょう。
だから今は、かつて僕が素晴らしい出
会いによって仕事や人生を謳歌する機
会を与えてもらったように、僕を通じ
て素晴らしい出会いが生まれて同じよ
うな興奮を感じてもらえばいいなと思
ってます。
実はそうすることに打ち込んでる自分
が、誰よりもいちばん幸せなんですけ
どね。
Interview, Writing: 山口宗久
かもめ・2005年10月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです
※記事掲載への思いについて。
山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa