株式会社ローソン 商品・流通本部
ベーカリーデザート部
シニアマーチャンダイザー
チームリーダー 鈴木嘉之 さん
前は百貨店で働いてたんですよ。食品
を扱う部署。デパ地下の物産展とか駅
弁大会とかを企画して、おいしいもの
をお客様に楽しんでもらうような仕事
です。
もともと食に関することに興味があっ
て、自分でも料理をするくらい好きな
ので、仕事は楽しんでやってましたね。
いろいろなことに挑戦できて、予算の
掛かることもかなり自由に任せてもら
えてましたから、本当に楽しかったで
す。
ところが、景気が冷え込んできたあお
りを受けて、次第に確実に利益が見込
めるアイデアでなければ採用されない
風潮になってきたんです。
それでも辞めるつもりはなかったんで
すが、たまたまローソンで食に関する
仕事に携われるという話に巡り会えて、
心動かされたというわけです。
チャンスを感じたんです。
仕事はスイーツの商品開発です。コン
ビニエンスでのスイーツというのは、
決して主力商品ではないんです。しか
も、全国どこの店でも売れるものでな
くてはなりません。ニッチな商品や前
例のない商品で、新しい流行を切り開
くような冒険が馴染みにくい環境では
あるんです。
けれどもトレンドを後追いしながら、
代わり映えのしないものを並べている
だけでは、なんのための商品開発か分
かりませんよね。
斬新だけど的を射ていて、新しいんだ
けど突き抜けすぎてない。
そういう微妙なところを見据えた商品
作りが求められるんです。
食の仕事といっても、おいしいものを
試作して試食して、毎日満腹というこ
とだけではありません。
世の中の動きであったり競合店の動向
であったり、やはり市場調査の結果を
元に地道に検討する段階がとても大き
な割合を占めることは確かなんです。
それでも、自分の感性や思いを注ぎ込
める部分があって、結局そこに楽しみ
を見いだしているのかもしれません。
テレビを見ていても、町を歩いていて
も、これは使えるな、とか自然に意識
してる自分がいるんです。
店舗で人の流れを観察することもあり
ますね。
どういう人がどういう時間帯に、何を
買ってるんだろうって、じっと見てる
わけです。
オフィスにいて、コンピュータが集計
してくるデータを眺めているだけでは
伝わってこない空気が、必ずあるんで
す。
そうやって頭の中に貯まってきた情報
でストーリーを描くところから始める
のが、私の商品開発のやり方です。
まず興味のある世界に身を置くこと。
それが働くことへのモチベーションを
保つために、いちばんいい方法じゃな
いでしょうか。
自然に仕事と生活の境界線が曖昧にな
ってきますが、苦ではありませんし、
その方がきっと成果も出せると思いま
す。
私の場合は、食に関することがそれで
すし、そういうチャンスを見逃さない
ようにしてきたような気がします。
ただ、会社に籍を置くということは、
やっぱり結果を出さなくてはなりませ
んから、好きだという気持ちだけで
突っ走るだけでは仕方ないんですけど、
それでも思いを注ぎ込めるという充実
感はありますから。
それが、好き、ということの強みだと
思うんですね。
今ね、毎日3万~4万個くらい売れて
いるシュークリームを、20万人くらい
に食べてもらいたいと思って、ストー
リーを描き始めてるんです。全国約
8000店舗ありますから、1店舗あたり
25個でしょ。難しいことじゃないと思
うんです。だっておいしいですからね、
ウチのシュークリーム。
Interview, Writing: 山口宗久
かもめ・2005年7月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです
※記事掲載への思いについて。
山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa