働くということ・10 竹中智治さん | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

株式会社ワコール 
ワコールブランド事業本部 
商品統括部
プロダクトブランド商品営業部
ボディメイク営業チーム
係長 竹中智治さん


ざっくり言うと商品企画でしょうか。
市場に提案しようとする商品を決めて
いくことと、アイデアを製品、つまり
物作りにつなげていくこと、そして販
売ルートのコントロールですね。

自分的には楽しんでやってますよ。メ
ーカーで働いているわけですし、やは
り物作りの現場に係わってみたいとい
う気持ちはありましたからね。ところ
が反面、とても難しいなと思うことも
あるわけです。

この部署に配属されてちょうど1年な
んですが、これは想像以上に奥が深い
な、と。

女性が下着を買うときというのは、あ
る特定のシチュエーションだけをイメ
ージして手に取るわけではないんです
ね。確かに異性を意識して下着を選ぶ
という傾向が強まっていることは事実
なんですが、当然それだけですべての
選びが決まるわけではありません。女
性らしい機微が分からなければ、理解
しにくいこともあるわけです。

異性を意識した選び方をするときにし
ても、それは女性が相手の男性に対し
てどう見せたいか、ということが重要
なのであって、決して男性が好む下着
を女性に着けさせるということではあ
りませんしね。私は男ですから、その
部分に関して深層にまで迫れているか
というと確かに疑問が残ります。

けれども一方で、もっと客観的な判断
が必要な場面になると、逆に男性の方
がいいのかなと思ったりもします。

女性用の下着ですからね。女性だとど
うしても主観が入ってしまうことも、
あるじゃないですか。デザインや装用
感の集積データを元に、多くの女性は
こう感じているから、ということを客
観的な言葉に置き換えるような作業は、
当然男性の方がストレートに表現でき
るわけです。

思うんですけど、たまたまお客さんが

明確に女性に絞られてるというだけで、
お客さんが思ってることとほんの少し
ずれるだけで商品の評価ががらりと変
わってしまうという商品開発の難しさ
は、下着以外の商品と何ら変わらない
んじゃないでしょうか。

女性の下着の開発に男性が係わってい
るというのは、実際、ワコールの中で
は決して妙なことではありませんから。
例えば何かの判断を下すとき、男性の
発想で決めていいのか? というのな
ら、それでは女性なら十分なのか? 
ということなんですよね。

多くの男性にとっては、女性用の下着
の開発現場で働く男性は、ちょっと奇
異に思えるかもしれません。

私も入社した当初は、女子社員がたく
さん乗ってるエレベーターに、下着を
束にして持ってる男子社員が乗ってき
たり、下着がたくさん積み上げられて
いる女子社員のデスクの横で男子社員
が仕事してる光景が不思議に感じられ
たこともありました。でも、お客さん
に選んでいただける商品なんだという
目で見えるようになるまで、それほど
時間はかかりませんでしたからね。

女性用の下着、好きですよ。

どういうのかな、きれいなもの素敵な
ものという感覚で見えてます。苦労し
て開発した下着なのに自分には使えな
いということよりも、これを使って喜
んでくれるお客様の声が聞こえてくる
ということのほうが、数十倍うれしい
ですし。女性用の下着の開発を、もっ
と深く追求していきたいと思いますね。

Interview, Writing: 山口宗久


かもめ・2004年11月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa