佐川急便 セールスドライバー
宇野杏子さん
私、本当にやりたいことがまだ見つか
ってないんです。友達にもそういう人、
けっこう多いですよ。
漠然と学生時代を過ごしていたわけじ
ゃないんですけど、いざ卒業、就職っ
ていう段になって、なにがやりたいの?
って自問自答してみると、意外に真っ
白だったりするもんなのかな、って。
真っ白っていうか、モヤモヤとは何か
あるような気がするんですけど、具体
的にコレって言い切れる自信が、まだ
ないんですね。
私の場合、体育大学に通ってましたし、
身体を動かすのが好きだから、そうい
う仕事がいいなと思ってました。でも
好きだからっていうのと同じくらい、
デスクワークは嫌だという気持ちも、
ありましたけどね。
だから今の仕事は、トラックドライバ
ーをやりたいっていう強い気持ちから
ではなくて、これしかないという仕事
のイメージが自分の中ではっきりする
までは、少しでも自分に向いてること
をしながら過ごしたいと思って決めた
んです。
企業の合同説明会で、いくつか回った
なかのひとつです。佐川急便の案内の
なかに、女性ドライバーのことが書い
てあって、実際に話を聞きに行ったら
“かなり大変ですよ、でも労働に見合
った評価制度だと思います”って言わ
れたんで、じゃあこれだ、って。
お金に惹かれたんじゃないですよ。大
変ですって言葉に、ならば挑戦してや
ろうって気持ちになったんです。
変ですか? 私、負けず嫌いなんです。
時には冷蔵庫だって運びますよ。エレ
ベーターがなければ、担いで階段おり
たりもします。私に運べないものは、
男の人でも運べない。そういうときは、
ふたりで運ぶ。そういう考え方が好き
なんです。
今どき、仕事に限らず何かをやろうと
思ったときに、女だからとか男ならば
とか、そういうのって古いかなって。
トラックドライバーをやってみようと
思ったのは、男の人に勝ってやろうと
かいうんじゃなくて、大変だって言わ
れてる仕事を克服してみたかったから
なんですね。
ただ、やっぱり男の人のほうが体力は
ありますし、今まで性別を気にしたこ
となんかないと思ってましたけど、実
は気にしないで済むように、女だから
って言われないように頑張ってる自分
が、どこかにいるような気もしてます。
男の人もそういうことを考えるんでし
ょうかね。それぞれの適性はあるはず
だから、きっとそういうこともあるよ
うな気がします。
そんなことを考えながら働き始めて、
もうすぐ丸2年になりますけど、まだ
本当にやりたいこと探しの真っ最中で
すね。けれども、仕事に追われてるだ
けで日々過ぎてしまっているのが、現
状だと思います。
もっと楽な仕事をしながらのほうが、
体力的にも精神的にも余裕があるから
っていう理由で、フリーターしてる友
達もいますけど、結局同じなんじゃな
いですか。
楽を覚えると、そっちに慣れちゃう。
そのことのほうが私には怖いことのよ
うな気がします。
ひょっとしたらいまの仕事なのか、そ
れともまったく別のことなのか。
自分にはこれしかないって、自信をも
って言えるようになりたいですね。そ
れを見つけることも、私の大切な仕事
なんです。
Interview, Writing: 山口宗久
かもめ・2004年4月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです
※記事掲載への思いについて。
山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa