ッサー)を使うと高音質になるのです
ね、というのは、音づくりに於ける勘
違いの筆頭ごとだったりします。
DSPでは、複数のスピーカーユニッ
トの1/100秒単位での発声順や割り当
て帯域、周波数特性、音量を精緻に設
定できます。
けれども、音色を変えることはできま
せん。音楽の抑揚を変えることはでき
ません。
ギターの音がピアノになったり、あい
みょんの声がユーミンの声になるよう
なことは、絶対に起こらないのです。
ギターのボディや弦や、歌姫の声帯や
くちびるや、つまりオーディオ装置で
いえばスピーカーが奏でる個性こそが、
音楽性の表現を決定的に形づくってし
まうものだというのが、わたし的な結
論です。
そして、電子の仕組みではなく、物理
的な動作を仕組みとするものを調律す
ることのなんと難しいことかというの
も、わたし的な結論だったりします。
すなわちごまかしが利かず、後修正も
利かず、音の計測機材ではなく音楽再
生装置として惚れ惚れするような特性
は数字のことを言っているのではない
からです。例えばマーチンのアコース
ティックギターを創る名工は、周波数
測定器で100万円でも飛ぶように売れ
てゆくあの音色の価値を測っているわ
けではないということです。それが、
音楽や音色に対するセンスというやつ
だと思います。
DSPはですね、極論すれば、再生環
境が完璧であれば必要ないと思ってい
ます。
例えば、あなたの音楽鑑賞用のためだ
けに設計された音響室があって、理想
的な位置に置かれたスピーカーシステ
ムがあって、大好きな音の個性を備え
たオーディオ機器があって。そんな素
敵な音楽空間であれば、それ以上の余
計なことをする必要はないです。DS
Pは、せっかくの音質に余計なクセを
つける要因になってしまうと思います。
クルマの場合は、前後左右の直近やず
っと離れたばらばらの位置に複数のス
ピーカーユニットがあって、止まって
いるときと走っているときと環境音が
まるで違って、巨大なスピーカーキャ
ビネットを据えることができるわけな
く、マッキントッシュだのマークレビ
ンソンだのいっても、所詮不安定な12
ボルト電源で駆動できる範囲の中でど
れだけ頑張れるかという苦しさがあっ
て、つまりホームオーディオのような
音楽空間を求めること自体、無理があ
るんです。
マニアックなオーディオ愛好家たちが
目指す指針のひとつに、「リファレン
ス(原音再生)」というキーワードが
あります。けれどもわたしは、カーオ
ーディオにそれを求めないことにしま
した。もっといえば、実はホームオー
ディオにもそれを求めていません。オ
ーディオの再生音を生演奏と較べて語
ることに意味がないとはまったく思い
ませんが、それはまったく同じにはな
らないという明確な結論があるから、
その肉迫加減が楽しいという趣味の世
界だと思うんです。
そこでわたしは、クルマの中でしか聴
けない音楽、クルマの中だからこその
興奮を引き出す音魂、クルマという空
間……それが一人であっても、2人で
あっても、家族や仲間たちと大勢で居
ても、クルマという空間で過ごしてい
る時間だからこそ味わえるエモーショ
ナルな体験を目指そうと考えました。
フロント用のスピーカーシステムはも
ちろん、メルセデス用のリアスピーカ
ー、ロードスター用の3Dシステムデ
バイス、BassPLUS+などは、すべてた
ったひとつのその目標のために、わた
しなりに知恵を絞って創ったものです。
そして、それらを狙い通りにしっかり
制御するために、DSPを使うわけで
す。

例えば、機械としての素性が素晴らし
いエンジンであっても、そしてそれが
単気筒ならともかく、マルチシリンダ
ーになった暁には、燃料や点火マネジ
メントがすぐれていないとその能力を
引き出すことはできないのと同じです。
1列、あるいは2列のシートの周りに
それぞれの役目を担って散らばるよう
に配された複数のユニットたちに、1
つの目的に的を絞った仕事をしてもら
うためには、どうしてもDSPが必要
になってきているということです。
audison製の機材を愛用するアナログ
時代の思い出話は今日はしませんが、
昨年秋頃から本国イタリアのウェブサ
イト上で紹介が始まった新しいライン
ナップの製品が、少しずつ発売に漕ぎ
着けています。漕ぎ着けているという
くらいのスローペースなのは、コロナ
禍以降の世情故ということだと思いま
す。
そのうちの1機をさっそく導入するこ
とにしました。まだ日本語版の解説書
の用意がなく、日本への入荷数もわず
かということで、取り付けとセッティ
ングを販売者責任として行うという条
件付きで日本正規輸入元から買うこと
ができました。
DSPセッティングアプリもまったく
新しくなり、今まで使っていたパソコ
ンでは要件を満たさなくなったため、
新たにノートPCを購入しました。さ
っそくインストールして、操作画面を
開いてみたのですが、とんでもないこ
とになっています。オフラインで2時
間くらい操作方法を研究したのですが、
まだ3つほどよくわからないパラメー
ターがあります。
先日、Facebookでわたしが行う最後の
作業を募集したのですが、その時に手
をあげてくださった方々のうち、愛知
県と千葉県の方のNAロードスターで
採用することが決まっています。NB
ロードスター用サブウーファーも、試
作機の図面が描きあがりましたので、
試作機を鳴らしてみた具合次第でNB
でもお勧めするかもしれません。
ただ2つ、これまでの機材よりも高額
になってしまったことと、前述したよ
うな事情から発売開始のペースが1種
類、また1種類のようなスローペース
で必要な仕様の機材がすべて揃うまで
にまだ相当の時間が掛かりそうな気配
があること、という問題があります。
それでも、新しい音づくりに向けてま
た1つ勉強することができました。
実際に音を出しながら操作するとどう
いう感じなのか、とても興味が沸きま
す。そして、スピーカーシステムの音
色を、走るクルマの中で存分に魅せる
ための精緻な調整と、走るクルマの中
でしか表現できない新たなエモーショ
ンが見つけ出せるほど創作的な挑戦も
できそうな、そういう予感のするこの
画面の向こう側の気配です。
どうぞ、楽しみにしていてください。
※ぜひ、Facebookでわたしをフォロー
してください。ブログよりも更新が楽
なので、スピーカーシステムの話、ク
ルマの話、はるかにたくさんの発信を
しています。簡単な動画ですが、スピ
ーカーシステムの音を車内で録音した
ファイルも、Facebook内にはたくさ
んあります。下のFacebookのURL
から飛べます。
山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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