人さらいとサーカス 1

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昔、暗くなっても外で遊んでいると


祖母が「もう籠しょった人さらいが来る時間だ」と迎えに来た。


「さらわっだらどうなるんだ?」


 「サーカスさ売られるんだ」


 「・・・・」


「朝昼晩、茶碗一杯の酢飲まさっで、骨やっこぐして軽業(かるわざ)させられるんだ」


「ご飯はないのか?」


「ご飯なのない。酢だげだ」


少年は「三食とも酢」という食生活に震え上がった。


 

 

サーカスはお薬師様の境内で1か月ほど興行を行なうと、いつの間にかいなくなった。


きれいな服を着て、旗を持って踊っていた女の子もいっしょに。


後にはチラシ一枚、塵一つ残さなかった。


今どこにいるかも、次にいつ来るのかも分からない。


いったいあの女の子は学校に通っていたのだろうか。


(続く)

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