身近な自然観察 秋の道端の植物2021



 自然観察の記事はかなり間が空いてしまい、ずいぶん前の写真も載せます。以前の記事を参照する部分もたくさんあり、さながら総集編のようになりました。

 ごく身近な植物観察も、取りこぼしを拾いながら夏、秋を2回越え、さすがに同じものをさらに繰り返すのもどうかと思いますので、今後はトピック的な題材が見つかって、気が向いた時に投稿しようかと思います。何しろお金がなく遠くに足は伸ばせないので仕方ありません。自転車も保険加入の義務化があるし、もらいものでタイヤが20インチの折りたたみ自転車がありますが、20インチのタイヤは2年ちょっとでダメになる(パンクが頻繁に起こるようになる)ため、1度交換し、またダメになったので何年も前に乗るのをやめました。歩いて、骨に刺激を与えたほうが成長ホルモンが出ていいと、かなり以前NHKの番組で見ましたし、今は専ら歩きです。


〇私にとって初認識、エノキグサ

↓エノキグサ(APGⅢ体系でトウダイグサ科エノキグサ属Acalypha australis L.)
 エノキ(APGⅢ体系でアサ科エノキ属Celtis sinensis Pers.)とは科も全く違います。エノキグサはリンネの命名です。恥ずかしながら初めて認識した植物です。このブログに植物の写真を投稿するようになっていなければ「これがエノキグサか」とは思いもしなかったでしょう(ブログを始めて、エノキグサがあるという知識は得ていた)。葉の3行脈系の葉脈の雰囲気や色合いは確かにエノキと似ているようですがエノキグサのほうが細長い感じです。そして何といってもエノキグサに特徴的なのは托葉っぽく見える雌花の苞葉(調べると※4小さな托葉が別にあるらしいですが撮影時は気づかず)です。茎の近くにある丸みのある小さめの葉です。エノキグサとエノキの見分けがつかないということはあり得ないでしょう。なお、この写真撮影時にはエノキグサがどういうものか分かっておらず、後から写真でGoogleレンズか何かで調べたと思います(記事にするのが遅すぎてどうやって調べたかも忘れてしまいました)。ごくありふれた植物ということで、Wikipedia「エノキグサ」(※4)には、

「日本では北海道から琉球まで、国外ではアジア大陸東部に分布がある。」「ごくありふれた植物でよく繁茂する雑草であるが、それ以上の害も利益も聞かない。」

 とあり、日本や東アジアで普通の雑草を知らなかったことがお恥ずかしい限りです。私にとっては初めてなので最初に持ってきました。
 一方、エノキと並んで鳥の散布により道端でよく見かけるクワにも、クワクサ(Fatoua villosaクワ科クワクサ属)があり、こちらはヤマグワ(クワ科クワ属Morus australis, Morus bombycis)やマグワ(クワ科クワ属Morus alba)と科が共通です(道端で見るのがヤマグワなのかマグワなのかは区別が難しく分かりません)。クワクサとクワは知識と経験がないと見分けがつきにくい可能性があります。クワクサは以前の記事(2021/8/28投稿、記事の中の下のほうです)で投稿しました。その時は花序が確認できたためクワクサと分かりましたが、改めて以前の記事を見返してみて、クワクサの葉はクワに比べて鋸歯が尖らず丸みがあるように思いました。この写真はクワクサっぽいです(不鮮明でわかりにくいですが、後に掲載するクワと比べると違うように思います。裂が入るクワクサの葉は今のところ見ていません。と言っても、1例だけしか知らないので「今のところ」は大袈裟か。)。
↓2021/10/2撮影 エノキグサ


↓2021/9/20撮影 (参考)エノキとスズメバチ

↓2021/10/15撮影 クワクサか



〇水田付近の植物

↓クサネム(マメ科クサネム属Aeschynomene indica
 2021/8/22投稿の夏の記事(記事の中の下のほうに掲載)に掲載したとき8/8撮影でしたが、僅か10日で実が確認できるものがあったということです。非常な似たカワラケツメイ(日本や近隣に分布するマメ科カワラケツメイ属Chamaecrista nomame)との違いの一つはクサネムの実は垂れる(他にはクサネムの小葉の先は丸みがある)ということで、この写真は上から撮っているため分かりにくいですが、確かに実は垂れているように思います。私が住む近辺にあるものは皆そうなので、全部クサネムということになりそうです。
↓2021/8/18撮影 クサネム



↓ヒレタゴボウ(鰭田牛蒡 北アメリカ原産アカバナ科チョウジタデ属Ludwigia decurrens
 同様の夏の記事(2021/8/22)に8/11撮影のものを掲載していました。9月半ば過ぎにも相変わらず咲いていました。アカバナ科らしい黄色い花を咲かせています。こちらにも似たチョウジタデ(丁子蓼、Ludwigia epilobioides Maxim.)がありますが、チョウジタテの花弁は4~5枚です(※1)。ヒレタゴボウが北アメリカ原産なのに対して、
Wikipedia「チョウジタテ」(※1)によると、

「日本では北海道から沖縄までの各地、中国、朝鮮半島、ロシア連邦のアムール川沿岸やウスリー川沿岸地域、ベトナムなど東南アジア、インドなどに分布する。」

 とあります。アメリカ大陸からの外来種はやはり強いのでしょうか。
↓2021/9/20撮影 ヒレタゴボウ


↓タマガヤツリ(Cyperus difforis日本を含む全世界の熱帯から暖温帯に分布※3)、コゴメガヤツリ(小米蚊帳吊Cyperus iria L.)
 カヤツリグサの仲間は以前からいろいろ掲載しています。以前の記事(2021/10/17)でホソミキンガヤツリ(Cyperus engelmannii Steud.外来種)かコガネガヤツリ(Cyperus strigosus北米原産外来種)らしきもの、別の以前の記事(2020/9/27)ではコゴメガヤツリ(Cyperus iria L.)、さらに以前の記事(2021/5/31)やその少しあとの記事で(2021/6/25)ではメリケンガヤツリ(Cyperus eragrostis 戦後入ってきた熱帯アメリカ原産の外来種、環境省の生態系被害防止外来種)を載せてきましたが、私にとっては初出のタマガヤツリです。
Wikipedia「コゴメガヤツリ」(※2)によれば、

「日本では本州から琉球列島にまで分布し、中国からインド、マレーシア、アフリカ、オーストラリアにまで分布する。」
「世界の各地において、畑地および湿性耕作地の重要な雑草である。いずれの条件においても、もっとも被害の大きい雑草の一つ、との評価もある。日本においては見かけがよく似たカヤツリグサも同様に畑地の雑草として重要である。ただし、本種の方が水田で、カヤツリグサの方が畑地において重要である。種子の発芽についての実験によると、両者とも種子は休眠後に発芽し、その際に光があった方が発芽率が高かった。ただしコゴメガヤツリでは湿潤状態や水浸状態の方が発芽率がよかったのに対して、カヤツリグサでは、温暖な条件ではこのような条件で発芽が抑制された。」

 コゴメガヤツリ(Cyperus iria L.)や、希少になりつつあるキンガヤツリ(Cyperus odoratus L.)はリンネの命名です。
↓2021/9/20撮影 タマガヤツリ 

↓2021/11/25撮影 コゴメガヤツリ


↓ヒガンバナ(APGⅢ体系でヒガンバナ科ヒガンバナ属Lycoris radiata (L'Hér.) Herb.中国原産)とタマスダレ(APGⅢ体系でヒガンバナ科タマスダレ属Zephyranthes candida (Lindl.) Herb.ペルー原産で明治初期に渡来※6)
Wikipedia「ヒガンバナ」(※5)より、

「別名は曼珠沙華(マンジュシャゲ)、学名からリコリス・ラジアータとも呼ばれるという。」
「日本列島のヒガンバナは種子を作らない、自然の中で生まれた三倍体植物の代表的な種である。ただし、ふつうは結実することはないが、ごく稀に種子ができる場合があるとも言われている。種子ができない代わりに、土の中で球根を作って株分けして繁殖してきたため、遺伝的には同一遺伝子を有し、同じ地域の個体は開花期や花の大きさや色、草丈がほぼ同じように揃う。」
「ヒガンバナは有毒植物として知られており、特に鱗茎に作用の激しいアルカロイドを約1‰含んでいる。」「鱗茎はデンプンに富む。鱗茎に含まれる有毒成分であるリコリンは水溶性で、すり潰して長時間水に晒せば、リコリンを水で流し去って無害化が可能であるため、食べることができた。しかし、毒性が強いため、どの程度さらせば無毒化して安全に食べられるのかについての定説は見当たらない。古い時代に飢饉の際の飢えを救ってきた救飢植物として、食料とするため各地に植えられたと考えられている。」
「鱗茎は石蒜(せきせん)という名の生薬であり」
「ただし、利尿や去痰作用を有するものの有毒であるため、素人が民間療法として利用するのは危険である。毒成分の一つであるガランタミンは、アルツハイマー病の治療薬として利用されている。」

Wikipedia「タマスダレ」(※6)より

「葉や鱗茎にリコリンというアルカロイド成分が含まれており、誤食すると嘔吐、痙攣の症状をおこす。」「種子をほとんど作らない個体とよくつける個体が存在する。球根の分球でよく増える。」

 出身も姿も全く違う(たまたま紅白です)のに似たもの(球根でよく増える、鱗茎に有毒なリコリン)がたまたま同居していました。この写真の意味はそういうことでした。説明が長くてすみません。
↓2021/9/24撮影 ヒガンバナ タマスダレ


↓マリーゴールド(キク科コウオウソウ属 Tagetes L.)
 種名でなく、属名で、コウオウソウ属(マンジュギク属)の栽培される植物の総称ということです。なぜ道端の草に挙げたかと言えば、水田付近の道端にあったからです。道端にあるものでしょうか。
↓2021/9/24 マリーゴールド


↓ガウラ(アカバナ科ヤマモモソウ属Gaura lindheimeri北米原産)
 開花時期は長いようです。
↓2021/9/28撮影 ガウラ



〇道端の木

 

↓クスノキ(クスノキ科ニッケイ属Cinnamomum camphora (L.) J.Presl近隣の暖帯から日本に進出、史前帰化)、エノキ(APGⅢ体系でアサ科エノキ属Celtis sinensis Pers.日本、中国、朝鮮半島に分布)、アカメガシワ(トウダイグサ科アカメガシワ属Mallotus japonicus (Thunb.) Müll.Arg.)

 「道端の雑木6強(私が勝手に、クワ、エノキ、アカメガシワ、センダン、クスノキ、ナンキンハゼに対して名付けています。)」のうち3種が、ごちゃごちゃっと同居しています。Googleマップのストリートビューのおそらく数年前の状況では何もないところにこれだけ入ってきています。カラスの仕業でしょうか。根元のほうは、歩道の路面からモルタルの法面(1メートル程度か)が下側にあり、その下の水路にコンクリートの蓋がついています。おそらく法面の下端と蓋との間に安定した場所があり、根を伸ばせは水が得られる環境だからでしょう。
 6強はいずれも、東アジアを中心に分布するもので、草本類では世界中から外来種が入ってきて在来種を押しのけ席巻するかのようになるのに対して、樹木では比較的荒らされず保たれているようにも思います。鳥の散布により殖える、つまり鳥との共生と関係するのかもしれません。
 なお、日本のニッケイ属については分類(学名)に混乱があることを以前の記事(2021/8/22)に書きました。また以前の記事(2021/4/21)では、山階鳥学誌 (J. Yamashina Inst. Ornithol. ), 36: 1-13, 2004から、

「カラス類がアカメガシワを選択する理由は、アカメガシワの外種皮に含まれる脂肪分への嗜好性が考えられ、大量に摂取することで、可食部の少なさを補っているのではないかということでした。」

 と書きました。
Wikipedia「アカメガシワ」(※7)

「日本の本州の岩手・秋田県以南、四国、九州、沖縄、国外のアジアでは台湾、中国の南部に分布する。日本では二次林に多く、山野、平地、川の土手に自生し、山野の林縁など明るいところによく生えている、典型的なパイオニア植物である。暖帯から亜熱帯産の植物であるため寒さに弱く、日当たりを好み生長が早い。古来は熱帯性植物であり、落葉性を身につけることで温帯への進出を果たしたものと見られる。」

「日本薬局方に記載の生薬で、樹皮は野梧桐(やごどう)、葉は野梧桐葉(やごどうよう)という。」

↓2021/10/2 クスノキ、エノキ、アカメガシワ

 

 

↓センダン(センダン科センダン属Melia azedarach L.)
 道端の雑木6強の一つ。
↓2021/10/2撮影 センダン


↓2021/10/30撮影 センダン 


↓ナンキンハゼ(トウダイグサ科ナンキンハゼ属Triadica sebifera (L.) Small)
 学名から、リンネが最初に命名し、John Kunkel Small(1869-1938アメリカの植物学者)が属名を変更しているということがわかります。
 果実の写真を撮ったのは初めてです。雌雄異株なのでこれは雌株というわけです。ただし、この果実の写真の木は小さな公園の植栽木です。道端の雑木6強の一つではありますが、クスノキやセンダンもですが公園にもあります。
Wikipedia「ナンキンハゼ」(※8)から

「果実は秋、少し三角のかかった球形の蒴果(さくか)を黒熟させ、3個の種子を出す。種皮は黒色であるが、その表面は脂肪に富んだ白色の蝋状物質で覆われる。蒴果が裂開しても、種子は果皮から自然に離脱することはなく、紅葉期から落葉後まで長く樹上の枝先に残り、白い種子が非常によく目立つ。ムクドリなどの鳥類がこの種子を摂食し、蝋状物質を消化吸収して種子を排泄することで、種子分散が起こる。」

↓2021/10/9撮影 ナンキンハゼ


↓2021/11/14撮影 ナンキンハゼ


↓2021/11/20撮影  ナンキンハゼ(右)とクワ(左)


↓クワ(クワ科クワ属Morus
 上にあるクワクサの葉とは鋸歯が違うと思います。あとは、裂が入る葉をクワクサでは今のところ見ていません。
↓2021/10/15撮影 クワ



↓コムラサキ(クマツヅラ科ムラサキシキブ属Callicarpa dichotoma)とクワ
 以前の記事(2021/6/27)にも掲載しているものですが(6/1撮影のもの)、クワが木質化したように思います。
↓2021/10/2撮影 コムラサキ クワ



↓クサギ(シソ科クサギ属Clerodendrum trichotomum Thunb. (1780) )
 見かける度合いは6強ほどではないですが、川の近辺でよく見かけます。これも度々掲載してきましたので、今回は具体的な記述はやめておきます。以前の記事(2021/6/22)や以前の記事(2021/10/20)にあります。
↓2021/10/2撮影 クサギ


↓2021/11/25撮影 クサギ


↓2021/11/28撮影クサギ



↓トウネズミモチ(モクセイ科イボタノキ属Ligustrum lucidum Aiton)
 クサギよりもさらに道端で見かける度合いは少ないです。これだけたくさんの実をつける割にですが。
↓2021/10/3撮影 トウネズミモチ


↓2021/10/30撮影トウネズミモチ


↓タラノキ(ウコギ科タラノキ属Aralia elata)か
 タラノキなのか自信がありません。普通は山で見そうなのに、水田の傍にあります。タラノキならパイオニア樹種には違いなく、開けたところにあるのは不思議ではないのですが。
↓2021/10/2撮影 タラノキか



〇イネ科

↓キンエノコロ(イネ科エノコログサ属Setaria pumila (Poir.) Roem. & Schult.)、エノコログサ(Setaria viridis(L.) P.Beauv.)、コツブキンエノコロ(Setaria pallidefusca (Schumach.) Stapf & C.E. Hubb.)?
 以前の記事(2021/8/4)にエノコログサ類についてまとめています。コツブは無かったです。このときの記事のキンエノコロは穂が全体に褐色を帯びていたので、違っていたかもしれません。本来はこの写真のように毛の部分が赤黄色く緑の実を包み込むような感じなのだと思います。
↓2021/8/18撮影  キンエノコロ

↓2021/10/2撮影 キンエノコロ


↓2021/8/18撮影 エノコログサ

↓2021/9/24撮影 エノコログサ


↓2021/10/31撮影 コツブキンエノコロ?
 


↓メヒシバ(イネ科メヒシバ属Digitaria ciliaris (Retz.) Koel))、オヒシバ(APGⅢ体系でイネ科オヒシバ属Eleusine indica (L.) Gaertn.)
 Wikipedia「メヒシバ」(※9)から、

「メヒシバは雑草としての様々な特性を備え、例えば種子発芽の不斉一性を持つ。つまり、同期に生産された種子が一斉に発芽しないことで、これは発芽した苗をまとめて駆除することを難しくしており、言い換えると一度駆除されても残りの種子が時期を変えて発芽することで生き延びることが出来る。」

↓2021/10/15撮影  メヒシバ(細) オヒシバ(太)


↓メリケンカルカヤ(イネ科メリケンカルカヤ属Andropogon virginicus L.)か
Wikipedia「メリケンカルカヤ」(※10)から、

「日本における本種の導入経路は不明だが、1940年頃に愛知県で確認され、現在では、関東地方以西に広く分布している。」

 とあります。
↓2021/10/2撮影 メリケンカルカヤか



↓シナダレスズメガヤ(イネ科スズメガヤ属Eragrostis curvula (Schrad.) Nees南アフリカ原産)
Wikipedia「シナダレスズメガヤ」(※11)から、

「種子生産量が多く、1平方メートルあたりで生産される種子数は平均16123粒(最大87001粒、最小541粒)との調査結果がある。」
「日本では1959年にアメリカから四国農業試験場に導入されたのが最初で、その後、道路法面の緑化用や砂防工事に利用され、今では日本全国に分布を拡大している。」

↓2021/10/2撮影 シナダレスズメガヤ


↓セイバンモロコシ(イネ科モロコシ属Sorghum halepense (L.) Pers.シノニム)
 ヨシのような葉ですが、ヨシと違うのは葉の中央の白い脈で、セイバンモロコシの目印のようなものです。赤味がないタイプ(タイプなのか時期の違いなのか私自身まだよくわかっていません)のセイバンモロコシの穂だと、なおさらヨシの姿に似て見えます(ボリュームがヨシより全然ありませんが)。
Wikipedia「セイバンモロコシ」(※12)から、

「地中海地域のヨーロッパ、中東原産で1945年頃に侵入した帰化植物である。」

 この写真のように赤っぽくないものもあるのでしょうか。手にとるとまるでイネのような雰囲気です。
↓2021/10/2撮影 セイバンモロコシ 





↓ヨシ(APGⅢ体系でイネ科ヨシ属Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.)
 学名のパターンとして「著者名に括弧()が付いているときは、属名が後から変更になったことを表す。」「属名 種小名 命名者 ex 発表者」から、これは「(Cav.)つまりアントニオ・ホセ・カヴァニレス・イ・パロップ(Antonio José Cavanilles y Palop 、1745 - 1804、スペインの植物学者・博物学者)が命名し、Trin. つまりカール・ベルンハルト・フォン・トリニウス(Carl Bernhard von Trinius、1778 - 1844、ドイツの医師、植物学者)が属名を変更し、Steud.つまりエルンスト・ゴットリープ・フォン・ストイデル(Ernst Gottlieb (Theophil) von Steudel 、1783 - 1856、ドイツの医師、植物学者)が引用し発表した。」ということがわかります。最初の命名者はスペインで最初にリンネの分類法を取り入れた人のようです。
 世界に広く分布するのに、「L.」つまり、カール・フォン・リンネの命名でないのが不思議だと思ったらWikipedia「ヨシ」(※13)から、

「学名として Arundo phragmites L.(基礎異名)、Phragmites altissimusP. berlandieriP. communisP. dioicusP. maximusP. vulgaris とも呼ばれていた。」(基礎異名とは、元の学名という意味のbasionym(バシオニム)のことのよう)

 とありました。なるほど。しかし、種小名ですが(おそらく最初に)「phragmites」としたリンネの名前が消えて、これをそのまま属名に変えた人の名前だけが新しい学名につくのはどうなんだろうと思ったら属名を調べると今度は「Phragmites Adans.」で、Adans.はミシェル・アダンソン(Michel Adanson、1727 – 1806、フランスの博物学者)ということでした。ならば、和種名「ヨシ」の植物の属名を「Phragmites」に変えたのがトリニウスで、属名「Phragmites」を創設したのがアンダソン、その元は「ヨシ」の元の種小名でありその命名者はリンネとなりますが、なんかおかしいです。「ヨシ」があまりに広くあるために、いろんな人が名付けたということかもしれませんが。それ以上は調べられませんでした。Wikipedia「ミシェル・アンダソン」(※14)によると、

「アダンソンは形質65について、それぞれに複数のクラスを設けて、それぞれの植物の形質がどのクラスにふくまれるかで植物を分類し、その結果から58の科を設けた。アダンソンの科は現在の分類学でいう目にちかい。人間の主観による判断を排除しようとしたアダンソンの方法は当時の学会では否定的な見解が多く、リンネはその結果を不自然なものとして非難した。」

 とあり、分類学上の確執はあったのかもしれません。要するに、アンダソンのように形質だけで基準を決めて「機械的に」分類しようとすると、かえって間違いが起こるという批判だと思います。客観的と言いながら、結局基準を作る人間の偏見、主観が入りますし、遺伝的に遠いのに形態はそっくりという例は現在ではDNAの分析技術によりわかるようになりました。学名だけでいろんな物語が垣間見えます。
↓2021/10/2撮影 ヨシ


↓2021/10/3撮影 ヨシ


↓ススキ(Miscanthus sinensis Andersson. (1855))
 ススキを出すなら、オギ(Miscanthus sacchariflorus)を比較しないといけませんが、今年は撮れませんでした。昨年の記事(2020/11/5)にあります。
↓2021/10/7撮影 ススキ


↓2021/11/28撮影ススキ



〇その他

↓イタドリ(タデ科ソバカヅラ属Fallopia japonica (Houtt.) Ronse Decr. (1988)東アジア原産)とベニイタドリ(Fallopia japonica var. compactaイタドリの変種で名月草とも)
 写真はいずれも、川岸のすぐ近くにあり、ほぼ同じ場所のものです。日本からヨーロッパに導入されて大変な迷惑植物になり、世界の侵略的外来種になっています。
↓2021/10/7 撮影イタドリ ベニイタドリ



 


↓アメリカセンダングサ(APGⅢ体系でキク科センダングサ属Bidens frondosa L.)
 葉がくっきりわかる写真になったので。
↓2021/10/15撮影 アメリカセンダングサ 




↓マルバルコウ(ヒルガオ科サツマイモ属Ipomoea coccinea L.北アメリカ原産)、マルバアサガオ(Ipomoea purpurea
 結構遅い時期にも咲いています。

↓2021/11/25撮影 マルバルコウ


↓2021/10/31撮影 マルバアサガオ



↓ホトケノザ(APGⅢ体系でシソ科オドリコソウ属Lamium amplexicaule L.)
 早咲き、狂い咲きなのか、早春のイメージですが秋から咲いています。
↓2021/10/15撮影


↓2021/10/31撮影 



↓ヒイロタケ(タマチョレイタケ科シュタケ属Pycnoporus coccineus (Fr.) Bondartsev & Singer)
↓2021/10/15撮影 ヒイロタケ


↓アレチヌスビトハギ(マメ科シバハギ属Desmodium paniculatum (L.) DC. (1825))
 マメができていました。
↓2021/10/2撮影  アレチヌスビトハギ

↓2021/10/15撮影 アレチヌスビトハギ?


※1:「チョウジタテ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/9/14  18:54 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:「コゴメガヤツリ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/3/27  02:59 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※3:「タマガヤツリ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/8/17  23:49 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※4:「エノキグサ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/9/5  03:55 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※5:「ヒガンバナ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/20  16:23 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※6:「タマスダレ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/9/8  10:42 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※7:「アカメガシワ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/4/29  04:34 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※8:「ナンキンハゼ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/6  11:42 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※9:「メヒシバ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/7/15  09:18 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※10:「メリケンカルカヤ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/4/26  10:29 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※11:「シナダレスズメガヤ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/7/16  12:50 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※12:「セイバンモロコシ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(2019/11/17  22:08 UTC 版)https://ja.wikipedia.org

※13:「ヨシ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/5  05:43 UTC 版)https://ja.wikipedia.org

※14:「ミシェル・アンダソン」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/2/7  18:02 UTC 版)https://ja.wikipedia.org