身近な自然観察 水田の周辺や道端の植物ほか(8月終わり)

 またしても季節外れの記事となりました(実はまだ季節外れの残りがありますが、回を改めます)。今回は、ひと月半以上前、まだ、夕方6時でも明るかった頃の写真です。写真は夕方5時から6時くらいの撮影です(最近の写真も少し追加しましたので、それらは違います)。今では午後6時は夜です。

 今回取り上げたものには、なぜか学名がカール・フォン・リンネ命名となっているものが多く含まれていました。分類学の父、スウェーデンの人です。

 キク科のアレロパシーの情報も出てきました。



●道端にて

ガマ属(イネ目ガマ科ガマ属Typha 
 通常は池や沼などで見かけるものですが、なぜか車道の端に生えていました。下にグレーチングがあったかどうかは未確認ですがあるかもしれません。ガマの穂がほぐれて種子が風で飛んでいくということなので、どこかから飛んできたのでしょう。花が終わり、上の雄花が散って下の雌花穂がソーセージ状に茶色くなって残ったのが「ガマの穂」ということです。日本で主に見られるのは、ガマ(Typha latifolia L.)、ヒメガマ(Typha domingensis Pers.)、コガマ(Typha orientalis C.Presl)の3種とのこと。(※1)
 古来から、生活に密着した植物だったことが、以下の記述でわかります。こういうのは好きです。「因幡の白兎」に登場したり、「蒲鉾」の語源になったり、「蒲焼き」の字になったり、蒲団(ふとん)に使われたりもしています。(※1)
Wikipedia「ガマ」(※1)から

「昔から、若葉を食用、花粉を傷薬、葉や茎はむしろや簾の材料として使われてきた。雌花の熟したものは綿状(毛の密生した棒様のブラシ状)になり、これを穂綿と呼ぶ。火打ち石で火を付けていた時代には、穂綿に硝石をまぜてほくちとして用いることがあった。蒲の穂を乾燥させて、蚊取り線香の代用として使われる事もある。茎、葉は、樽作りで、樽材の隙間に噛ませ、気密性の向上に利用される事もある。かつてアイヌは茎を編んでゴザにした。」
「集めて陰干ししたものが生薬となり、蒲黄(ほおう)と呼ばれ薬用にする。漢方では、蒲灰散(ほかいさん)、蒲黄散などに蒲黄が処方され、内服すると利尿作用、通経作用があるとされる。」

↓2021/8/26撮影

↓2021/8/30撮影 



セイタカアワダチソウ(キク科アキノキリンソウ属Solidago canadensis var. scabra
L.)

 当初、花をつけていない段階では、スーパーの駐車場脇(なお、私は車を使っていません)にポツンと1本だけ生えている様子と、根元のほうで枝分かれしている様子から「不明扱い」にしつつも、セイタカアワダチソウかなとも思っていました。しかし、「花部以外は一般に枝を出さない(※2)」「茎は下のほうではほとんど枝分かれがなく(※3)」とあるのでやはり違うのかなとも思いつつ、10月半ばに花をつけ、花序など花の様子からセイタカアワダチソウかな?と思っているのが今の状況です。学名Solidago canadensisはカール・フォン・リンネ命名となっています。
Wikipedia「セイタカアワダチソウ」(※3)から、

「学名は「Solidago canadensis」である。ただし「Solidago canadensis」と呼称されている植物は、現代の分子系統学的研究でゲノムを解析した結果、「Solidago altissima(Solidago canadensis var. scabra(シノニム)」や「Solidago anthropogena(Solidago canadensis L)」など、複数の種を内在していることが分かっており、つまり種複合体(species complex、複数の種が一括りにされたもの)である。日本のセイタカアワダチソウは、Solidago canadensis種複合体の中では「Solidago altissima」ではないかとされている。」
「花は10-11月に咲く。花序は全体としては円錐花序となり、個々の枝は小さな頭花を総状に多数つけ、そのような横枝が主軸に対して直角に近い大きな角度を成して広がる。つまり主軸が上に伸びるのに対し、多数の花をつけた横枝が水平に近い方向へ伸びる。」
「当時は気管支喘息や花粉症の元凶だと誤解されていた(中略)、セイタカアワダチソウは虫媒花で風媒花ではないので、花粉の生成量は少ない上に比較的重く、形状も風で飛ぶのには不適であるため、無関係と考えられている。」
「蓄積されていた肥料成分を大方使ってしまったこと、自らのアレロパシー効果により種子の発芽率が抑えられる等の理由により、派手な繁殖が少なくなりつつあり、それほど背の高くないものが多くなっている。」
「アレロパシーを有しており、根から周囲の植物の成長を抑制する化学物質を出す。これはcis-DME(シス-デヒドロマトリカリエステル、methyl dec-2-en-4,6,8-triynoate)という名称で知られ、アルケン及びアルキンのカルボン酸エステルである。セイタカアワダチソウは、千葉大学教授の沼田眞によって日本初のアレロパシーの実験に使われ、日本の植物で初めてアレロパシーが認められたことで、日本のアレロパシーの代表的植物として名高く、cis-DMEの働きは1977年(昭和52年)に沼田によって解明された。沼田眞は、ドイツのハンス・モーリッシュが1937年に提唱したアレロパシーを千葉のセイタカアワダチソウで実証し、1977年の論文「植物群落と他感作用」において「アレロパシー」を「他感作用」の名称で日本に初めて紹介し、その概念を広めた、日本の植生生態学の父である。 (中略) cis-DMEは、濃度が10 ppmを超えるとイネ・ブタクサ・ススキの生育を地上部・地下部共に顕著に抑制する。ただし、これらの種子の発芽障害は起こさなかった。一方で、cis-DMEは濃度が10 ppmを超えると、セイタカアワダチソウ自身の種子に対する強い発芽障害を起こす。このような背景から、それまでセイタカアワダチソウが存在しなかった(cis-DMEに汚染されていなかった)戦後の日本でセイタカアワダチソウが急激に広がったと沼田は論文中で結論付けた。日本の休耕地に侵入したセイタカアワダチソウがススキによって抑えられる運命にあることは、沼田が一般向けに出版した書籍『図説 日本の植生』でも触れられている(沼田が調査した千葉市の耕作放棄地では、耕作が放棄されてから3 - 4年で一面を覆ったセイタカアワダチソウが、3年でススキに劣勢となってしまった)。」

↓2021/8/30撮影 

↓2021/10/15撮影




(不明です)バラ科キイチゴ属(APGⅢでRubusか?
 これも上と同じスーパーの駐車場脇のセイタカアワダチソウの隣にポツンと生えているものですが、こちらはまだ不明です。夏からは成長しており、葉の感じからラズベリーやブラックベリー(Googleレンズでそれが出ます)のようでもあります。
↓2021/8/30撮影


↓2021/10/15撮影




●水田や水田周辺にて

アメリカセンダングサ(APGⅢでキク科センダングサ属Bidens frondosa L.)北アメリカ原産帰化種
 先ほどのガマもセイタカアワダチソウもですが、これもカール・フォン・リンネ(「分類学の父」スウェーデンの人 1707~1778)の命名です。
 普通によく見かけます。ひっつき虫の植物のうちの一つ。コセンダングサ(Bidens pilosa L. var. pilosa)との見分けは、慣れるとパッと見た印象でわかる気もしますがまだ自信はありません。こちらもリンネ命名です。Wikipedia「コセンダングサ」(※7)には、上記セイタカアワダチソウのように、根に強力なアレロパシー作用が確認されているとあります。


[アメリカセンダングサ]・・茎は暗紫色、葉の鋸歯が鋭く尖っておりキリッとした印象があります。先端の3つに分かれた葉は「3出複葉」と説明されるように小葉にはっきり分かれ葉柄もはっきりしており翼があるようには見えません。私の身近では水田の近くでよく見かける印象。下の花の写真を見ていただいて花の下側のプロペラ状についた葉のようなものは総苞片です(コセンダングサにはこのような長い葉のような総苞片はないということなので、アメリカセンダングサならではです、と思ったらタウコギ(Bidens tripartita L.)も長いらしいです)。実は特徴があり、一つの実の先に2本芒(のぎ)があり昆虫のクワガタのような形になります。やはり、タウコギも似ていて、形状で喩えると(大きさは全然違いますよ)、アメリカセンダングサはミヤマクワガタやオオクワガタ、タウコギはアゴの小さい小歯タイプのノコギリクワガタくらいな感じでしょうか。下の写真の実の写真で一つ一つを見るとアメリカセンダングサに間違いありません。
[コセンダングサ]・・茎は緑のことが多い、葉の鋸歯はあまり尖っていない、3出複葉でなく「3裂」と説明されているように確かに一体の感じがあり、あたかも小葉のような先端の葉の葉柄に相当する部分に翼に見えるものがある場合もあります(アメリカセンダングサのようにはっきりした葉柄のような場合もあり)。川岸や道端などで見かけます。実は一つ一つ鉛筆のような(大きさは違います)細い形状で、先端に芒が3、4本出ている感じです。下に過去に掲載したものを再掲しましたが、アメリカセンダングサとは確かに違います。

  
↓アメリカセンダングサ
↓2021/8/30撮影 

↓2021/10/15撮影

  ↓葉のような長い総苞片が目立つ

  ↓3出複葉の小葉の葉柄が長い 

↓果実

 

↓(参考 コセンダングサ 過去の記事から再掲)

 

 

ナンキンハゼ(Triadica sebifera
 下の「毎度おなじみシリーズ」に入れるかとも思いましたが、水田脇にポツンとある点を強調するためこちらに。6強の中では唯一、環境省の生態系被害防止外来種です。
Wikipedia「ナンキンハゼ」(※4)

「ムクドリなどの鳥類がこの種子を摂食し、蝋状物質を消化吸収して種子を排泄することで、種子分散が起こる。」

2021/8/30撮影



夕日とヒレタゴボウ(アカバナ科チョウジタデ属Ludwigia decurrens
 私の地域の身近な水田には必ずあるヒレタゴボウです。アカバナ科と知ってから、同科マツヨイグサ属の黄色い花のイメージと重なって見えるようになりました。
2021/8/30撮影


ウキクサ(サトイモ科ウキクサ亜科ウキクサ属Spirodela polyrhiza (L.) Schleid., 1839)?とヒレタゴボウ
 ウキクサの学名はカール・フォン・リンネ命名(今回は多い)で、後にマティアス・ヤーコプ・シュライデン(ハンブルク出身 1804~1881 植物は細胞でできている説を提唱した人)により属が変更されたとあります。安直にウキクサ属ウキクサを第一に表示してしまいましたが、ヒメウキクサ属Landoltiaやアオウキクサ属(Lemna L., 1753)の可能性もあります。調べるところまではやりませんでした(というより私の今の実力では全く無理です。しかも、属の中にさらに種があります。)。
2021/8/30撮影


コナギ(ミズアオイ科ミズアオイ属Monochoria vaginalis var. plantaginea(Burm. f.) Kunth)
 水稲耕作の伝播とともに伝わったと考えられています。これに似たホテイアオイ(Eichhornia crassipes (Martius) Solms-Laubach)は葉柄が膨らんで浮き袋になっています。あとはミズアオイ(Monochoria korsakowii Regel et Maack 1861)とは花で区別ができるそうです(その他の違いは大きさ)が、そこで見分けないと難しいそうです。ただし、ミズアオイは農薬により個体数を減らし、コナギのほうがまだ減っていないとのこと。(※5) 
2021/8/30撮影



ウキクサとコナギ
2021/8/30撮影



ヤハズソウ(マメ科ハギ属Lespedeza striata (Thunb.) Hook. et Arn.)
 ツンベルクが命名しているので、日本と近隣の植物だろうとわかります。葉が小さくて可愛らしいです。 
2021/8/29撮影



ヒデリコ(APGⅢでカヤツリグサ科テンツキ属Fimbristylis miliacea (L.) Vahl)
 球形に近い楕円の小穂の形からヒデリコと考えました。これもリンネ命名です(なぜか今回多いです)。水田に多い。今までこの植物の名前に関心を持ったことがありませんでした。「日照子」という名前がユーモラスで可愛らしいです。 
2021/8/28撮影


テンツキ(APGⅢでカヤツリグサ科テンツキ属Fimbristylis dichotoma (L.) Vahl)か 
 小穂が上記より細長いのでテンツキと考えました(単純です)。やはりリンネ命名です。和名の由来は諸説あるようで、どんな字を当てるか決まってないようです。
↓2021/8/28撮影

 

ヒデリコかテンツキか

↓2021/10/15撮影



ホソミキンガヤツリ(Cyperus engelmannii Steud.)?コガネガヤツリ(Cyperus strigosus? 
 キンガヤツリ(Cyperus odoratus L.)(ムツオレガヤツリの別名 この学名もリンネ命名 出島経由か)という在来種が減り、とてもよく似た(種子を比べてわかるくらい)ホソミキンガヤツリが増えているらしいです。ということは写真はホソミキンガヤツリなのでしょうか。ほかにもコガネガヤツリという北アメリカ原産の外来種もあるそうです。いずれにせよ見分けは難しいです。まだ残っていたら種を取ってみようかと思います。
野田市のサイト(※6)から

「かつて国内のキンガヤツリは、すべてC. odoratusとされてきました。ところがあるとき、関東内陸部などで記録されているものは、本来のC. odoratusよりもタネが少し細いなど、微妙に異なることが分かりました。結果C. engelmanniiという別種であることが判明、ホソミキンガヤツリと名がつきました。キンガヤツリは在来の希少種ですが、ホソミキンガヤツリは外来種と考えられています。」

2021/8/28撮影




 

ケリ
 水田にはケリ(鳧)がいます。 
2021/8/28撮影


夕日とケリ
2021/8/30撮影
 



●毎度おなじみ?の鳥が散布し道端から生える樹木6強(アカメガシワ、クワ、エノキ、センダン、ナンキンハゼ、クスノキ)シリーズ

↓(6強→以前の記事)
「身近な自然観察 道端の雑木系 6月 2021-06-27 12:43:07」

 


クワ(クワ科クワ属Morus 道端にて

冬に刈り取られ、1年も経たずに木質化した茎までできます。
2021/8/30撮影


 

アカメガシワ(トウダイグサ科アカメガシワ属Mallotus japonicus 道端にて

2021/8/30撮影



●8月終わりの夕暮れ
15分ほどの違いでかなり違います

2021/8/28 17:49撮影


2021/8/30 18:03撮影


(引用、参考) 

※1:「ガマ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/8/30  19:08 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:国立環境研究所侵入生物データベース「セイタカアワダチソウ」
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80600.html
※3:「セイタカアワダチソウ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/6/4  03:25 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※4:「ナンキンハゼ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/9/29  21:28 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※5:「コナギ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/12  12:08 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※6:野田市のサイトから、市政・市の紹介 > シティプロモーション > 野田市の魅力発信事業 > ユーチューブを活用した市内草花広報 > 草花図鑑 > ホソミキンガヤツリ(細実金蚊帳吊)(カヤツリグサ科カヤツリグサ属)
https://www.city.noda.chiba.jp/shisei/1016739/1016740/kusakoho/kusazukan/1023527.html

※7:「コセンダングサ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/9/13  05:11 UTC 版)https://ja.wikipedia.org