身近な自然観察 イチョウの黄葉の粘り強さ 数奇なイチョウ物語

 寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。緊急事態宣言は私の住む愛知岐阜地域も含まれることになり、福岡県、栃木県も入るということになりました。
 総理は栃木県を真っ先に挙げていましたが(東京中心なんでしょう)、栃木県には日光の国立公園や鬼怒川温泉、那須高原があり、南端にはラムサール条約の登録湿地になっている日本最大の人工遊水池と広大な葦原もあり、自然に囲まれた印象がありますが、東京に近く、通勤圏ですし影響を強く受けているということでしょう。感染の急拡大で1都3県にさらに追加されたという感じなのでしょうか。
 栃木県について、私は若い頃一度だけ行ったことがあります。


 さて、本題のイチョウの話です。前に、カエデ属の紅葉の息が長かったと書きましたが、イチョウも長く葉が残っている木があります。
 イチョウについて、ちょうど、「又吉直樹のヘウレーカ!」で昨年暮れにやっていました。以前Wikipediaで見て知っていましたが、イチョウの数奇な物語とは、太古の昔は世界各地に広がったイチョウでしたが

(「イチョウ類は地史的にはペルム紀に出現し、中生代(特にジュラ紀)まで全世界的に繁茂した」(※1))、

恐竜絶滅の時代は生き抜いたもののその後激減、ほとんどの場所で絶滅し、中国の奥地のただ1か所のみで生き残り、10世紀過ぎから人の手により再び世界に広がったという物語です。ヨーロッパへの拡散には日本が関わっています。「イチョウはエピソードに事欠かない」と前に書きましたが、もう一つ、イチョウの精子を日本人が発見した

(「1895年、帝国大学(現、東京大学)理科大学植物学教室の助手平瀬作五郎が、種子植物として初めて鞭毛をもって遊泳するイチョウの精子を発見した」(※1))

という業績があります。
精子の発見された樹は樹高25 m、直径約1.5 m の雌木であり、今日も小石川植物園に現存しています(※1)。「ヘウレーカ」でも紹介されました。
 そして、なぜ雌の木で精子が発見されたのかを「ヘウレーカ」で説明していました。受粉後になんと4か月もかけて花粉が育って精子になり受精するということです。また、銀杏(ぎんなん)の大きさには早くからなっているといいます。
 さて、その「生きた化石」のイチョウ、近隣で1月になっても黄色い葉を一部残している木がありました。かつて繁栄した時代とずいぶん気候が違うかもしれませんが、よく適応しています。  
 「NHKforSchool(※2)」には、

ジュラ紀(2億年前から1億4000万年前)は「大気中の二酸化炭素濃度は、現在の20倍にまで達していました。その結果、大量の二酸化炭素が熱を閉じ込め、地球の平均気温は現在より10度以上も高かった。」

とありました。イチョウの実は、タヌキくらいしか食べないらしく、種子散布者がいないようなものなので、人が関与しないと分布は広がりません。恐竜時代にはきっと(食べる)散布者がいたのでしょう。恐竜の絶滅でも辛うじて生き残ったところがすごいです。現状は完全に人に依存した植物ということになります。心許ない感じもします。
 近所の公園に雌の木があり、銀杏(ぎんなん)がびっしり落ちていました。今時は採る人もないのでしょう。鼻が悪い私もさすがにこれだけあるとにおいました。

イチョウ

 

↓2020/12/29

↓2021/1/1 

↓2021/1/6 


 

ぎんなん

↓2021/1/1 


 

 

「又吉直樹のヘウレーカ!」2020年12月23日放送
「イチョウは臭くてもなぜ愛される?」
【司会】又吉直樹,【解説】東京大学大学院教授…塚谷裕一,【語り】吉村崇
番組詳細
秋の小径を歩けば、心地よい風にのって運ばれてくる、あの強烈な悪臭!しかし その臭さをものともせず、日本中で街路樹の定番として植えられているイチョウ。愛される秘密は“生きた化石”と称される、イチョウ独自の生態にあった!およそ2億年前、恐竜と共に繁茂し、その後、一度 絶滅しかけながらも、人間のちょう愛を受けて奇跡の復活を遂げた波乱万丈のストーリー!身近な「イチョウ」に隠された、植物進化を解き明かす。

ヘウレーカ20201223からメモ
イチョウ
受粉から4か月かけて、受粉後に花粉が育ち、メスの木で花粉から精子ができ、受精する。銀杏の大きさに早くなる。
葉の成長 先端から生長(普通は根元側)→扇形
棒状から開くを繰り返し平べったくなる
棒の割り方の失敗(中が空洞など)→カップ状(ラッパ状)になるものもある。
1億年前イチョウの仲間が激減(被子植物の台頭)
恐竜の絶滅では生き残った。
乾燥、寒冷化でさらに激減。
1万年前は中国奥地の一部だけに。
10世紀まで人に知られていなかった。
中国から人による銀杏の食用によって広がる。 
収穫用イチョウ 3股、2.5~3メートル

ゲーテも(日本からヨーロッパへ導入されたイチョウについて)いち早く詩を書いている。「葉は、一つが分かれたのか、二つが一つになったのか」
ゲーテは生物学(植物学)でも重要な業績を残している人。花は葉の変形したものと予想した(後に正しいことが証明された)。


 お読みくださりありがとうございました。

※1:「イチョウ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/30  18:51 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:「NHKforSchool」https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005402671_00000