第1回 今ニュースを賑わす検察庁法の問題について自分なりに整理してみました。事態が現在進行形で動いているので、ブログ開始の準備とこの内容を書いているうちに、ちょっと遅れた感じになりましたが、最後に残った疑問点については、仮にこの法案が廃案になったとしても明確になったほうがすっきりするように思います。
    (目 次)
  ①【国家公務員法と検察庁法の関係】
  ②【勤務延長規定とは】
  ③【検察庁法改正案を読んでみて】
  ④【世間の反応(改正賛成派)について】
  ⑤【安倍政権の対応について】
  ⑥【肝心な部分が不明 疑問点】
  ⑦【昭和22年検察庁法立法時の審議から】
  ⑧【結論】


①【国家公務員法と検察庁法の関係】
 まず、今回の検察庁法改正案について、10日ほど前に今回の検察庁法改正案を読んでみました(隅々まで全て読み解いて理解するまでには至っていません)。現行法(検察庁法と国家公務員法)の関連部分については2月に黒川検事長の問題の報道が活発になった時点で既に読んでいました。  
 法案は国会のウェブページに掲載されているので、この法律に限らず、皆さんも自分達のこととして、関心を持ったほうがいいと思います。沢山の法案が審議にかけられています。
 さて、今国会で一旦取り下げになった改正案の要約はこうです。

(以下、要約)
 検察官は一律65歳になった時に退官とするが、国家公務員法(改正案)第81条の7を読み替えて、任命権者(検事総長は内閣)は内閣の定める事由(職務遂行上の特別の事情、職務の特殊性から欠員補充困難)により検察官を「退官時の職のまま」継続勤務させることができる(再延長あり)。次長検事と検事長は63歳になった翌日に法務大臣により一般の検事に任命されるが、内閣が必要と認めれば「63歳到達時の職のまま」1年延長(1年再延長)となり、前述の国家公務員法の読み替えによりさらに65歳以降も勤務延長できる。
(要約終わり)
なお、国家公務員法(改正案)第81条の7の改正前の条文は81条の3です。

 また、2月に話題となった(国会で立憲民主党(当時)の山尾志桜里委員が指摘した)「国家公務員法の定年制が検察官には適用されない」旨の過去の政府国会答弁(昭和56年4月の内閣委員会議事録)についてもその頃に確認していました。
 これもインターネット環境があれば、国会のウェブページで過去の議事録を検索し誰でも閲覧できます。黒川検事長の閣議決定による国家公務員法を根拠にした定年延長(勤務延長)に関して、国会でこの過去の政府答弁が指摘され紛糾すると、慌てて「法解釈を変更した」となって問題になりました。以下、問題の過去の政府答弁です。

(引用)
第94回国会 衆議院 内閣委員会 第10号 昭和56年4月28日から
発言239 斧誠之助
○斧政府委員「検察官と大学教員につきましては、現在すでに定年が定められております。今回の法案では、別に定められておるものを除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております。(指定職の適用の問題に関する神田委員の質問への斧政府委員答弁 昭和56年4月28日第94回衆議院内閣委員会議録第十号 国家公務員法の一部を改正する法律案審議)」(引用終わり)
なお、先立つ4月23日の衆議院内閣委員会で中山太郎大臣による国家公務員法改正案の概要説明があり、行政の能率的運営を図るべく国家公務員の定年制度を設ける法律案を提出した旨、概要は第一に定年退職日、特殊な官職と欠員補充が困難な官職の特例、第二に定年による退職の特例による勤務延長、第三に定年による退職者の再任用、第四に定年に関する事務の内閣による調整、第五に国営企業の職員の定年(特例定年の対象範囲、勤務延長の基準等は当該企業の主務大臣等が定める)、第六に以上の改正に伴う経過措置という内容でした(議録第九号 発言005)。

 政府委員答弁の「今回の定年制」は、この国会での国家公務員法改正の内容が「定年制度を設けること」として大臣が概要説明を行っていることから、特例による勤務延長を当然含む定年制度全体を指すと考えるのが自然です。すると、国家公務員法の勤務延長は検察官に適用しないという解釈になります。

 国家公務員法と検察庁法の定年の関係について、さらに根拠を調べると次の条文があります。

(以下条文)
現行検察庁法第32条の2  この法律第15条(検察官の級別)、第18条(任命資格)乃至第20条(欠格事由)及び第22条(定年)乃至第25条(適格審査、剰員及び身分保障)の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法の特例を定めたものとする。
(条文終わり)
なお、附則第13条とは国家公務員法施行時の附則で、他の法令で特例を定めることを規定したもの。文中、条文名後ろの( )書きは、各条文の内容を考慮し、筆者が挿入したもの。

 これは昭和24年に国家公務員法の施行に合わせて検察庁法を改正し関連づけがなされたものです(国家公務員法の施行で影響を受けず存続する規定を明記)。「の2」が改正で追加した条文であることを示しています。さて、何十年も後になって国家公務員法に定年制を導入した際に、「検察官の職務と責任の特殊性により」一般の国家公務員法とは別の取り扱いをすることを規定したこの特例を反故にするのかどうかについては、繰り返しになりますが、先に述べた昭和56年の政府委員国会答弁で否定されている訳です。
 つまり、(繰り返しですが)政府委員答弁の「今回の定年制は(検察官に)適用されない」との文言と、これに先立って大臣が法案の概要を説明しているとおり、この国家公務員法改正の内容が「定年制度」の創設であることを合わせて考えると、「今回の定年制」はその制度全体を指していると解釈されるため、勤務延長規定は検察官には適用されないことになります。
 これにより、当初の安倍政権の主張「検察庁法の定年規定よりずっとあとに国家公務員法が規定した勤務延長の規定については検察庁法に規定がないのだから、検察官に適用できる」は否定されました。立憲民主党(当時)の山尾志桜里委員による過去の政府答弁に基づく指摘と追及でした。


②【勤務延長規定とは】
 検察庁法が読み替えしようとしている国家公務員法の勤務延長規定についても考察が必要です。現行法では、

(以下条文)
国家公務員法第81条の3
第1項「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。」

第2項「任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。」

改正案(第81条の7に変更)
第1項「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又は次に掲げる事由があると認めるときは同項の規定にかかわらず、当該職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、当該職員を当該定年退職日において従事している職務に従事させるため、引き続き勤務させることができる。(この後のただし書き(異動期間を延長した職員のケース)についてはここでは省略)
一 前条第一項の規定により退職すべきこととなる職員の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として人事院規則で定める事由  二 前条第一項の規定により退職すべきこととなる職員の職務の特殊性を勘案して、当該職員の退職により、当該職員が占める官職の欠員の補充が困難となることにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として人事院規則で定める事由」

第2項「任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項各号に掲げる事由が引き続きあると認める十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、これらの期限の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、当該期限は、その職員に係る定年退職日(同項ただし書に規定する職員にあつては、当該職員が占めている管理監督職に係る異動期間の末日)の翌日から起算して三年を超えることができない」
(条文終わり)
なお、検察庁法での読み替えでは、人事院が内閣となります。

 勤務延長の理由として共通するのは、「公務の運営に著しい支障」があることです。さて、検察幹部において、その人がいなくなると「公務の運営に著しい支障」がある場合とはどんな場合が想定されるのでしょうか。また、「著しい支障」の程度をどのように判断するのでしょうか。具体的基準がない限り、任命権者の腹一つということになってしまいます。
 研究職や技術的な職員などは別として公務員全般に言えることですが、誰がやっても同じ結果になることを期待されており(公正、公平性)、「この人がいなくなると困る」「この人だから」という(特別な結果を出す)存在を作ってはいけない文化があります。利害関係者などとの癒着の防止目的も含めてだろうと思われますが、2年くらいで異動転勤していくことが地方公務員(都道府県)の場合も含めてほとんどです(筆者は経験者ですが、今は公務員ではありません)。
 さて、検察官の場合はそれぞれ一人一人が独任制の官庁として単独で公訴を提起し公判を維持する権限を持っています。独任制という言葉が法律に書いてあるわけではなく、検察庁法において「検察官は・・・行う、できる」と規定されていることに基づいた言葉だと思われます。検察庁は検察官を統括しているだけです。一人一人が上級者から権限の委譲を受けることなく独自に検察権を行使する官庁であるということは、「余人をもって代え難い」人材を許容し重用する考え方は馴染むのでしょうか。
 裁判官の場合は憲法第76条第3項に「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立して職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」とあり、同じ案件でも異なる結論がありえます。ただし、裁判所が複数の裁判官で構成される場合は合議制となります。行政組織でも、責任の明確化や能率などの観点から独任制をとる場合と、民主化や慎重な処理や公正中立などの必要性から合議制をとる場合があります(後者が多い)。さて、検察官の場合、指揮命令系統に服する「検察官同一体の原則」といものもあるそうです。これも法律にその言葉が書いてあるわけではなく、検察官はいずれかの検察庁に属することや検事総長、検事長、検事正が職員を指揮監督することを検察庁法が定めているのを踏まえ、公正中立性を重視する立場から「内部的な規律」として用いられているもののようです。独任制としながらも、組織による統括という干渉を受ける点で、憲法が規定する裁判官の独立性とは異なります。組織による統括を重視すると、組織としては「余人をもって代え難い」特別な結果を出す人材は馴染まないことになりそうにも思えます。
 別の視点として、特別な結果が期待される「(余人をもって代え難い)この人だから」という人材と、組織としての連続性や一体性を維持した公正公平な判断ができる人材(経験と知識がおそらく必要)とは似ているようで違うのか違わないのかという点があります(検察官の仕事が「前例踏襲なら誰でもできる」と言える程度の仕事とは到底思えません)。後者として優れた人材が不足している場合には、相対的に前者の「余人に代え難い」人材という評価にもなりえます。その場合、組織としての連続性一体性に不安が生じていることになりますが、組織のトップとしてそのような人材に統括してもらうことで補うことができます。
 果たして、法曹関係の方々が言われるように、「余人をもって代え難い」という評価は検察官には馴染まない、想定していないと言い切れるのかちょっと疑問に思い始めました。
 また一方で、年数相応の経験を積まれた検察官の定年を一律に引き上げることで(特例の勤務延長はなしで)人材不足に対応するほうが、余計な作為の入る余地がなく好ましいように思えるのも事実です。

 
③【検察庁法改正案を読んでみて】 
 意見を言うにしても、法案くらい読んでおかねばと思い今国会の改正案も読みその他の根拠も調べてみた訳です。検察庁法改正案は、国家公務員法等の一部を改正する法律案の中にあり(束ね法案)、しかもこれと同名を含めた「国家公務員法」で始まる法案は、会期中ほかにもあり、その一番下のほうにある法案の中に入っていました。そのことを見ても何か「こそこそ」感が出ているようにも思います。

 さて、検察庁法改正案と国家公務員法改正案は難解でした。解説を掲載されている方の情報や新旧対照形式の法案が掲載されているものも見て、ようやく理解できる感じですが、細かいところまではまだよく理解できていません。かつて、仕事でいろんな法令を読むことをやっていましたが、読み替えによる行ったり来たりの多さ、読み替え元自体の改変などもあり骨が折れました。

 現行の検察庁法の定年規定(第22条)は、検察官は定年に達したら退官することを書いただけのほんとうにシンプルなもので、そこへ複雑な文面が追加されています。読み替え元の国家公務員法の勤務延長規定(改正案の81条の7)自体も、表現の修正や定年退職時点の職のままでということを明記するなど改正をしています。憶測ですが、これは検察官を役職のまま定年以降も勤務延長するための改正(検察庁法改正のために行う国家公務員法改正の部分)ではないかと勘繰りたくなりました。
 

④【世間の反応(改正賛成派)について】
 定年引き上げと特例の勤務延長を混同している方がまだおられるかも知れませんし、政府も敢えてその誤解を助長するような説明(国家公務員の一般職の「定年引き上げ」を検察官にも適用するだけだと強調し、特例の勤務延長や検察官の特殊性には触れない)を繰り返していました。また、安倍総理のいつもの論点ずらしの詭弁(定年で退官することだけを定めた現行法に対して、改正案では特例の勤務延長を内閣の裁量で行うという関与の機会が「増える」ことには触れず、「もともと任命権者は内閣であり従来と何ら変わりはない」という言い方で論点をずらすやり方)を故意か理解不足かわかりませんがそのまま拡散している人達もおられるようです(5月16日のTBS「情報7days」で安住アナウンサーがネット上の主な意見(賛成側)として紹介していました。)。なお、勤務延長への関与は一般職は人事院が行うのに対し、検察幹部の場合は任命権者である内閣に変更して読み替えを行っているので、単純な国家公務員法の検察官への適用でもありません。
 堀江貴文氏の挑発的な動画が出て、橋下徹氏も似たような主張をされているようです。それは検察権力を弱めることへの賛意若しくは検察と政府の距離感への問題提起(検察権力を独立させることへの問題視)でしたが、そこには検察権力の抑制を内閣が行うことの是非、選挙で選ばれた人も暴走し得るという視点、改正をやめたら検察権力が今より強まるわけではない(既に歯止めがいくつかあり、裁判所や検察官適格審査会、起訴を行わない場合の検察審査会に加え、定年で自動的に退官する現行法の規定自体も歯止めの一つになっていると今回言われている)といった視点が欠けています。冤罪の防止、救済についてなら、捜査の在り方、人質司法の問題などをどうするかという話であれば理解できます。単純に考えても、捜査対象にもなり得る内閣のコントロールが強まるのは道理に合いません。検察権力の歯止めがもっと必要と言われるのなら別の方法を考えるべきでしょうが、強過ぎて人権蹂躙の問題がある一方で、弱過ぎて悪が放置されても困るというジレンマが常にあり難しい問題てす。お二人の話は、不安を煽り、政府の力を強め検察権力を抑制することに正当性があるかのような誘導に映ります。


⑤【安倍政権の対応について】
 もう一つ、安倍総理のいつもの「恣意的運用は断じてない」論法や「説明が足りなかったから丁寧な説明を尽くす」論法です。これは、法案の文面が示す内容に恣意的運用を許す余地が残っているという指摘を無視し、ごまかす強弁(論理的な説明が欠落)で、いわば法治主義の否定、人治主義であり危険な論法だと思います。時の政府が堂々とこういう論法で法案を通そうとするのが常態化していることに暗澹たる気持ちになります。このやり方は中身が深まっていかない不毛な議論を生みます。

 そもそも、今の自民党自体が本音では憲法が定める国民主権や基本的人権を嫌う政党ではないかという気がします。民主党政権成立で下野した後、穏健派が一掃されて極右思想を隠し持った政党として先鋭化したように見えるからです。ブレーキをかける存在が誰も見当たりません。党の名称「自由民主」とは真逆の本音を隠しているようで、党名自体が詐欺のようになってしまっています。国民主権や基本的人権の否定など表立つて本音を言うことはまずありえませんが、2012年の憲法草案にはその本音が薄らと現れています。例えば、現行憲法の「個人」を「人」に、「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えている点などは解釈によっては国家主義的と映ります。そして緊急時には内閣に全権を与え事実上の歯止めがない緊急事態条項があります。小選挙区制によって官邸の力が着々と強まり(国会での多数派形成、選挙での党公認権による派閥の弱体化(党内統制)、官僚幹部の人事権掌握)、そして今回の検察幹部への介入を強める検察庁法です。国民主権や基本的人権を弱めることに繋がる動きの一つかもしれません。


⑥【肝心な部分が不明 疑問点】
 さて、長々と書いてしまいました。
明確な根拠をまだ探せず疑問に思うことがあります。それが今回の問題の肝になる部分なので大変困ります。過去の国会(帝国議会を含む)の議論を調べてみました。次に参照、引用するものを除いて、別項にして後述します。

(疑問点、不明点)
1、検察官が定年で強制的に退官になることが、検察権力の歯止めの一つになっているという考え方の起源
2、内閣による過剰な人事介入が検察の中立性、独立性を歪める可能性があり、特例の勤務延長を内閣の裁量で行う規定は過剰な人事介入に相当するという考え方(実際に人事権を行使しなくても、規定の存在だけでその作用が及ぶとする考えも含む)の起源
3、検察権力の歯止めに関する妥当な考え方
4、組織としての連続性や一体性を維持した公正公平な判断ができる人材(経験と知識がおそらく必要)として優れている場合、そのような人材が不足した状況下では、「余人に代え難い」特別な人材という評価にもなりうるが、「余人に代え難い」という評価が検察官に馴染まないという考え方の起源
(以上)

 まず、結論を先に言えば、昭和22年の検察庁法制定に関する国会(第92回帝国議会)の法案審議では、これらの明確な答えは見つかりませんでしたが、昭和24年の検察庁法改正時の政府による逐条説明において、検察官の職責の特殊性を根拠に検察官の任免に関する規定を一括して国家公務員法の特例とするとしていることが源流にあるかもしれないと思いました。
 昭和22年の立法時、定年に関しては、検察官が裁判官と比べて体力的に活発さが要求されることから最高裁判事の70歳より低く抑え、検事が63歳、検事総長が65歳としたとあるだけです。各国の例も参考に、どれくらいの年齢まで能力を発揮しうるかという視点のみでした。ただし、今回の問題に通じる質問は出ていました(以下参照)。しかし政府の答弁は肝心な部分に答えていませんでした。

(参照)
第92回帝国議会貴族院検察庁法案特別委員会議事速記録第1号 昭和22年3月28日から抜群
橋本實斐伯爵により、「((注)話したままの記録で文の切れ目がなく分かりにくい部分もあったため、以下、筆者の解釈で整理し、現代語の簡略な表現で要約しました。下に原文も転載しました。)22条に65歳定年とあるが、人によっては65歳になっても有能な方もあり非常に練達達識な方もあるので、職を去らせるには惜しいという例外もある。原則を65歳とした上で、例外としてこれを延長しうる弾力性のある制度にしたらどうか。ただし、それに伴う弊害もあるかもしれないがそれも運営次第だと思う。この点についてご意見はいかがか。」と質問があったのに対し、木村大臣の答弁は、年齢と能力云々の話に終始し、弾力性のある制度や弊害についての言及は全くありませんでした。
(原文)「伯爵橋本實斐君  更に細かい點になりますが、二十二條に、此の定年が六十五歳とございますが、是は先程御意見も出ましたやうでありますが、人に依りましては六十五歳に達しても、尚有能な方もあり得ることで、殊に非常に練達達識な方でございますれば六十五歳に達しても、之を職を去らせるのは非常に惜しいと云ふやうな例外もありますから、私の考では、原則は六十五歳を定年と致し、例外の場合に更に此の年齡を延長し得るやうな彈力性のある制度を設けらば如何かと存じますが、併し斯う致しますと、一面それに伴ふ弊害もあるかも存じませぬが、是は運營宜しきを得れば宜しいかと思ひます、さう云ふ點に付きまして御意見如何ですか」(原文終わり)
(参照終わり)

せめて「弊害」の内容を具体的に言って欲しかったです。

 次に、昭和24年改正による現行検察庁法第32条の2(国家公務員法の特例を、検察官の職責の特殊性を根拠に検察庁法が規定したとするもの)です。この「特殊性」は何を指すのかですが、以下のとおり、唯一の公訴提起機関であること、そして職務執行が公正かどうかで刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすことです。さらに、裁判官に準ずる身分保障と待遇があり、一般の国家公務員とは取り扱いが違うとあります。「唯一の公訴提起機関」という強い権力への認識、「公正さ」という、中立性、独立性につながる考えが示されています。「検察官の任免に関する規定」を一括して国家公務員法の特例としているので、昭和56年の政府答弁につながる政府見解だと思います。国家公務員法の施行で検察庁法の定年制度が影響を受けないことを言うための規定なので、そこに勤務延長規定がない理由までの説明はありません。

(引用)
第5回国会 参議院 法務委員会 第12号 昭和24年5月11日の高橋政府委員の逐条説明から抜粋
「第三十二條の二は、檢察官は、刑事訴訟法により、唯一の公訴提起機関として規定せられております。從つて、檢察官の職務執行の公正なりや否やは、直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすものであります。このような職責の特殊性に鑑み、從來檢察官については、一般行政官と異り、裁判官に準ずる身分の保障及び待遇を與えられていたのでありますが、國家公務員法施行後と雖も、この檢察官の特殊性は何ら変ることなく、從つてその任免については、尚一般の國家公務員とは、おのずからその取扱を異にすべきものであります。よつて、本條は、國家公務員法附則第十三條の規定に基き、檢察廳法中、檢察官の任免に関する規定を國家公務員法の特例を定めたものとしたのであります。」
(引用終わり)

 昭和56年の国家公務員法の定年制度創設時におおいても、先に示したとおり検察官には適用しないことを示しただけで、上記の不明点に関して新たな視点の提示はありませんでした。


⑦【昭和22年検察庁法立法時の審議から】
 定年で強制的に退官する制度には、検察の中立独立性を踏まえた内閣による過剰な介入防止という視点と検察権力の抑止の一環という視点が、立法時点であったのかどうかを知りたかったのですが分かりませんでした。というより無かったと思います。特例の勤務延長自体が法案にないため議論されようがないという面もあったと思います。質疑が多かった昭和22年3月28日の第92回帝国議会貴族院検察庁法案特別委員会の議事録からの抜粋を中心として以下に転載し、合わせて審議の経過も整理してみました。
 興味深かった点は、行政と検察の関係よりも、裁判官と検察官の馴れ合いの問題が指摘されていた点です。裁判所と検察を分離独立させ、裁判所が完全に行政の監督から独立することでその疑惑は解消するとされました。ということは、検察は裁判所に比べて行政に近いのか、それとも裁判所からも行政からも距離を保つ存在なのか新たな疑問も生じます。
 そして、行政と検察の関係性については、司法大臣は検察官を指揮監督するけれども、検察権行使の独立性を尊重するために、個々の事件の取調又は処分に関しては、検事総長のみを指揮することが出来るとなっています。これについては貴族院で2回質疑がありました(抜粋参照)。前段は、例えば悪質な闇を徹底的に取締れというような一般的な指揮であり、後段は、従来のように個々の事件について直接司法大臣がその事件の取調又は処分について指揮をしたのでは将来の政治形態の上から弊害を生ずる場合があるので、検事総長のみに対して指揮をし、検事総長はその指揮を受けて、自己の意見を加え適宜指揮をするということにしたとあります。ここで今盛んに言われる「検察権行使の独立性の尊重」の考え方が出てきました。ただし、大臣による個々の事件への不介入ということのみで、人事権によるコントロールという話は出てきませんでした(法案に特例による定年延長などがないことから、そうした問題意識は想定外で当時は生じ得なかったと言えるのかもしれません)。
 もう一つ興味深い点は、人権蹂躙などの検察の行き過ぎや不公正を防ぐ上で、検察官の身分保障(生活の安定)も一役買うことになるという考え方です。今回の問題においては、そういう視点は全く出てきていません。終戦直後と現在では経済、生活水準が違うということもあるかもしれません。
 また、身分保障もある検察権力への歯止めとしては、検察官適格審査委員会を充てることを明確にしています。

(政府答弁抜粋による要点)
〇裁判所と検察の分離が最大の目玉。判事と検事の馴れ合いなどを疑問視する世論の背景もあった。裁判所が完全に司法大臣による監督から離れることでその疑念は解消する(その一方で、掲載は省略したが、裁判官と検察官の人事交流も必要というやりとりもある)
〇不服申し立ては一般の行政事務の場合と同様にでき、検察庁法には規定しなかった
〇行政官に属するといえども、司法の一翼を担い職務権限についても純粹の行政官とは違う性格を多分に持つているため、地位の保障等についても、裁判官に準じた待遇をして行くのが相当
〇人権蹂躙などの行き過ぎは是正が必要だが、逆に(検察が)その声を聞き萎縮するのも困る。人権蹂躙への警戒は必要だが、要は人の問題と同時に待遇の問題も絡んでおり、検事の身分を保障し生活の不安がないようにして、自己の信念に基づく公正な検察を行うやうにしたい。

(政府による法案提出理由説明から要点 原文は長いので転載は省略しました)
〇従来、検事は裁判所に附置された検事局で広義の司法の分野である検察事務を行って来た。
〇新憲法(日本国憲法)が司法権独立の思想を旧憲法以上に明瞭にしていることを踏まえ、裁判を行う裁判官及び裁判所と、公訴権を行う検事及び検事局を別個独立とすることが新憲法の精神に適うものと思料した。
〇新憲法の施行により裁判所の地位が向上することに伴って、対応する検察庁の地位も向上させる必要があり、最高検察庁及び高等検察庁の長官たる検事総長及び検事長は特別の官とし、その任免については天皇陛下の認證を経ることとした。
〇検察官の職務は、従来の検事の職務と同様で、刑事について公訴を行い、裁判所に法の適正な正常な適用を請求し、裁判の執行を監督し、又裁判所の権限に属するその他事項についても、必要と認める時は裁判所に通知を求め、又は意見を述べ、又は公益の代表者として、法令の定めるその他の事務を行うものである。
〇検察官の職務遂行の公正を担保するため、裁判官に準ずる身分保障が必要である。一方で、心身の故障その他の事由により、検察官の職務を行うに堪えない場合、検察官、裁判官及び弁護士の中から選任された委員で組織される検察官適格審査委員会の議決を経て、その官を免ずることが出来るようにした。
〇検察官は従来と同樣、司法大臣の指揮監督の下にあるが、検察権行使の独立性を尊重するために、個々の事件の、取調又は処分に関しては、司法大臣は検事総長のみを指揮することが出来ることになっている。
〇検察庁には検察官のほかに検察事務官と検察技官とを置くことした。検察事務官は、従来の裁判所書記と犯罪捜査も行う検察補佐官の両方の事務を行う権限を有する。これにより検事直属の捜査機関を設け、いわゆる人権蹂躙事件の根絶を期すべしとの一般の要望にも応えようとした。検察技官は今後の犯罪捜査には科学的知識を一層活用する必要があると信じ担当させるため設けた。

(以下、抜粋及び経過)
第92回帝国議会貴族院検察庁法案特別委員会議事速記録第1号 昭和22年3月28日から
 昭和二十二年三月二十八日(金曜日)
 午後一時十四分開會
017 木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 其の點に付て私から御答へ申上げます、今御質問のやうに、從來は動ともすれば、世間では裁判所と檢事局が同一廳舍に住んで居るから、或は檢事と判事との間に何等か連絡を取る疑があるのではないかとか、或は又檢事からの壓迫を判事が受くるのではないかと云ふ、是は理由はないと申しましても、世間の疑惑があつたことは事實であります、其の根本は何處にあるかと申しますと、要するに、同一廳舍を使用して居ると云ふのみならず、判事も檢事も等しく司法大臣の監督を受けて居る、斯う云ふ點にあつたのではなからうかとも考へて居ります、そこで新憲法實施に伴ひまして、裁判所が全然司法大臣の監督を離れるのであります、其の方面から申しましても、餘程世間の疑惑は解けることと確信して疑ひませぬ、のみならず廳舍の問題に致しましても、是は理想論としては全然分離すると云ふことが建前であらうと思ひます(以下略)

026 佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 仰せのやうに、檢察官は將來と雖も、裁判官と行政官とを區別しまするならば、行政官に屬するのであります、併しながら狹義の司法官ではありませぬけれども、廣い意味に於て司法の一翼を擔ふ者でありまして、其の職務權限に於きましても、純粹の行政官とは違ふ性格を多分に持つて居りまするので、從つて地位の保障等に付きましても、裁判官に準じた待遇をして行くのが相當と考へまして、此の法案に於ても、左樣な點に於きまして、規定を致して居る次第であります

032 木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答へ致します、御尤もな御説と考へて居ります、人權蹂躙、行き過ぎた點は是は是正して行かなければならぬが、さればと言つて餘りに其の聲に怯えまして萎縮すると云ふことは、是は由々しき大事であります、其處がなかなかむづかしい點であらうと考へて居ります、大體に於て私の今見る所に於きましては、檢察方面に於て相當人材が集りまして、人權蹂躙なんと云ふやうな惡評は段々薄くなつて來ました、それと同時に、又檢擧すべきものはどんどん檢擧して、活溌に働いて居ることは事實であります、私は大變喜んで居ります將來とも萎縮せざるやう、又人權蹂躙の非難を蒙らないやうに、十分にここは警戒して行かなければならぬかと思ひます、要は人の問題と同時に待遇の問題も之に絡み附いて來て居ります、十分に檢事の身分を保障を致しまして生活の不安のないやうに、其の壓迫を蒙らないやうに、さうして自己の信念に基いて、公正なる檢察を行ふやうに努力して行きたいと、斯う考へて居ります

047 佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢事總長は御説のやうに、第七條に於きまして全國の檢察官全體を指揮監督する權限を持つて居るのでありまするが、更に司法大臣は、其の全國の檢察官竝に檢事總長に對して矢張り其の上に立つて指揮監督をすると云ふ建前になつて居るのであります、それは第十四條に於て示された通りでございます、處が、從來のやうに司法大臣が、個々の事件の取調、處分に付ても、總て直接に個々の檢察官を指揮すると云ふことになりますると、將來色々な弊も考へられます、從來は左樣な弊害を見て居りませぬけれども、段々政黨政治が盛になるに連れまして、司法大臣が直接個々の事件の處理に付て個々の檢察官を指揮すると云ふやうなことは適當ではなからうと云ふ考から、個々の事柄の指揮をする場合には、必ず先づ檢事總長に指揮をさせる、檢事總長に於て司法大臣の指揮に應じて、自己の意見を其處に加へまして、適當な處置をなさる、斯樣な仕組にする方が、將來の檢察事務の運營上適切であらうと云ふやうな考の下から、第十四條に於ては一般的な指揮監督の權限は、司法大臣は持つて居られるけれども、個々の事件の取調、處分に付ての指揮は、必ず檢事總長に對してやる、斯う云ふ風な制限を設けたのであります

064 佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察官の懲戒處分に付きましては、一般官吏の例に依ることと致したいと云ふ考へから特に掲げなかつたのでありますが、一般官吏の懲戒處分は、恐らく將來法律に依つて規定されるだらうと思ひます

067 霜山精一
○霜山精一君 極く小さな問題でございますが、現在の裁判所構成法第百四十條に依りますと、同法事務取扱の方法に關する抗告と云ふものが規定されて居りますが、「或ル事務ノ取扱方ニ對シ又ハ取扱ノ延滯若ハ拒絶ニ對スル抗告」と云ふやうなものが書いてあります、斯う云ふ司法事務の取扱に對して異議を言ふことが出來ると云ふ、斯う云ふ趣旨の規定はないやうでありますが、是はどう云ふ風になるのでございませうか
068 佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 其の點は一般の行政事務に付ての抗告、不服申立の場合と同じやうに請願、訴願の方で賄へると考へましたので、「檢察廳法」には特に設けなかつたのであります

第92回帝国議会 貴族院 本会議 第28号 昭和22年3月30日から
069 奧田剛郎
(略)
第二に、司法大臣の指揮監督權に關しまして、本法の第十四條に於て、「司法大臣は、檢察官の事務に關し、檢察官を一般に指揮監督することができる。」のだ、「但し、個々の事件の取調又は處分については、檢事總長のみを指揮することができる。」のだと云ふ風に規定してありまして、前段と後段との間に於ける關係が、聊か不明であると云ふことも言へないではないのでありまするが、それは前段の方と後段の方とは事柄が違ふのでありまして、前段の方は、例へば惡質の闇を徹底的に取締れと云ふやうな一般的の指揮の場合であつて、後段の方は從來の如くに個々の事件に付て直接司法大臣が其の事件の取調又は處分に付て指揮をしたのであつては、將來の政治形態の上から幣害を生ずる虞がありますので、其の爲に此の法案に於て、左樣な場合には直接に指揮は出來ないので、檢事總長のみに對して指揮をする、檢事總長は其の指揮を受けて、適宜に指揮を又すると、斯う云ふことにしたのであると云ふことであります、第三に、(略)
(この説明のあと可決)

第92回帝国議会 衆議院 裁判所法案委員会 第6号 昭和22年3月20日から
013 黒田壽男委員より、(要約)従来からの人権蹂躙、司法ファッショへの懸念、警察と検事局捜査での暴行、凌辱人権蹂躙、近代的科学的捜査の方法はほとんどとられなかった現状の指摘。機構改革の人的要素の思い切った民主化を求める(要約終わり)
014 木村篤太郎
(略)それで裁判官が、一たび在野法曹として相當年限を積んで、また裁判所なり、檢事局なりに戻つてくるということは、きわめて望ましいのでありますが、これもなかなか容易ではありません。そこで實際問題といたしましては、試補の修習でありますが、從來これは辯護士になる試補と、裁判官、檢事になる試補と別々に修習さしておつたのであります。これらを一體にして教育していくそこで互いに切磋されて、よりよく修養ができることになりますれば、その間に學問上のことは申すまでもなく、人格の問題、あるいは交際の問題といつたようなあらゆる部面から考えてみましても、非常に私は進歩的になつてくるだろうと考えております。(略)

 〈経過〉
第92回帝国議会 貴族院 本会議 第28号 昭和22年3月30日 検察庁法案 質疑、可決

第92回帝国議会 貴族院 検察庁法案特別委員会 第2号 昭和22年3月29日 検察庁法案可決

第92回帝国議会 貴族院 検察庁法案特別委員会 第1号 昭和22年3月28日 検察庁法案概要説明、質疑

第92回帝国議会 衆議院 本会議 第28号 昭和22年3月27日 委員会報告、検察庁法案可決

第92回帝国議会 衆議院 裁判所法案委員会 第7号 昭和22年3月22日 検察庁法案全会一致可決

第92回帝国議会 衆議院 裁判所法案委員会 第6号 昭和22年3月20日 検察庁法案質疑

第92回帝国議会 衆議院 裁判所法案委員会 第5号 昭和22年3月19日 検察庁法案 委員会への付託受け、概要説明と質疑

第92回帝国議会 衆議院 本会議 第20号 昭和22年3月18日 検察庁法案 第一読会
(抜粋及び経過終わり)

⑧【結論】
 ここまでの結論として、先の不明点である
1、検察官が定年で強制的に退官になることが、検察権力の歯止めの一つになっているという考え方の起源
2、内閣による過剰な人事介入が検察の中立性、独立性を歪める可能性があり、特例の勤務延長を内閣の裁量で行う規定は過剰な人事介入に相当するという考え方(実際に人事権を行使しなくても、規定の存在だけでその作用が及ぶとする考えも含む)の起源
 への答えとして、源流としては、昭和24年の検察庁法改正時の政府見解「検察官の職責の特殊性により、検察官の任免に関する規定は国家公務員法の特例とする」があると思われます。しかし、上記2点は今回の問題により生じた考え方である可能性もあります。諸外国の例や研究者の学説までは調べていませんので明確なことは言えません。機会があり可能であれば調べてみようと思います。
 素人目線で見ても、定年後の人事に内閣の裁量で差が生じ得るのなら、内閣の顔色を窺って仕事をすることがあってもおかしくなく、もしそうなれば検察の公正さを歪められないだろうかという考え方は、官僚幹部人事が官邸に握られたことで「忖度」という言葉が流行するほどの状況が発生し、総理大臣が官僚組織を使って様々な疑惑を隠蔽している疑いが生じていることから考えても現実感をもって広く受容されたのだと思います。私自身もその一人です。政府への信頼感の低さ(これまでの積み重ね)、マスコミ報道の影響も大きかったと思います。
 一方で、検察権力の無謬性への疑問、非常に強大な権力であることへの警戒の声も少数ながら出ています。検察権力への適切な歯止めは何か、裁判所や検察官適格審査会、起訴しない場合には検察審査会ということでは不十分と言えるのか、強制的な定年退官が抑止の一つになるのか、内閣がコントロールを強めるのは違うという考えは正しいのか、余人に代え難い人材は本当に検察官には馴染まないと言えるのか、過去の研究成果も含めて新たな情報の提供が待たれます。
#検察庁法