あるイベントの会場の予約をしに
地元の福祉センターに行きました

窓口行ってー
期限切れの利用者証の更新してー
スマホから会場の仮予約してー
窓口で支払いしてー

こちらが利用許可証になります
当日必ずお持ちください
紙だけ渡して去っていく職員さん

(あれ?お釣りもらってないよね)

あのう、すみません
お釣りはーー
えっ、お釣りお渡ししましたよね

思いがけず自信みなぎる返答
もらっていないという
こちらの自信が音を立てて崩れる

えっ、あっ、そうでしたっけ
すみません、ごめんなさい

すみませんとごめんなさいの
二段構え謝罪

あーやっちゃった
恥ずかしすぎる

あのおばさん
まったくボケてるよな
ったく勘弁してくれよ

職員さんの心の声が
吐き捨てるような口調に聞こえて
とにかく逃げようここから出ようと
福祉センターの外へ

あーショック
次からはお釣りもらっても
すぐお財布に入れないでおこう
ぜんぶ終わるまで握ってよう

とにかくこの動揺を
なんとかしなきゃ
イオン行って
なぐさめのアイスコーヒー飲もう

と、車を走らせていると

ぷるるるる
ぷるるるる

スマホに着信が

もしかして
福祉センターから?

いやまさか

お釣りお渡ししましたよね
自信みなぎるあの返答の
やっぱり渡してませんでしたはないわ
きっとなにか忘れ物したんだわ
やだなやだな
行きたくないよー

イオンに着いて
スマホを確認
やっぱりさっきの福祉センター

あーやっぱり
まだあそこに戻れるほど
精神ふっかつしてないのよと
おもって見たら財布はある
てか忘れ物くらいで
電話くれたりはしないのよ
ってことは

えっ
もしかするともしかする?

ちょっとわくわく
だけどぬか喜びはだめだ
謙虚にそして落ち着いて

もしもし
お電話をいただいたようですが

動揺を悟られないように
上品かつおだやかに

申し訳ありません!
先程はバタバタしておりまして
お釣りをお渡しするのを
忘れてしまいました!

(ですよね!やっぱりそうですよね!)

数分前に
音を立てて崩れた自信が
シャキッと立ち上がってくる音がする

そうでしたか
それはお世話かけました
今日はちょっと伺えませんが
いえいえ、届けていただくなんて
そんなお手数かけられません
ついでがありますから(ない)
明日にでも取りに伺います

気にしてないフリをして
丁寧かつ落ち着いて
ゆっくり電話を切りました

そしていま
安堵のコーヒーを飲んでます

あの職員さん
凹んでるかな

明日と言わず
早く取りに行ってあげたほうがいいかなあ