11月12日 これから長い、闘いが始まる

 

昨日、終日冷たい雨が降り続けた。我々はなんとしても、
TPPへの参加を阻止しなければならない。朝から必死に
なって動き始めた。

「野田総理は、記者会見の前にTPPに参加するのであれば、
その前に両議員総会でどのような理由で参加表明するのか
説明しなければならない」

と両議員総会の開催を求めて、党員3分の1以上の署名を集めて回った。
金曜日で議員は午後からは地元に帰ってしまう。急がねばならない。

私も朝から樽床幹事長代行にお会いして、両議員総会開催の要求をした。
輿石幹事長にも重ねて、前日まとめた党からの総理への提言「慎重に
対応する」ことを野田総理に直接話していただくよう訴えた。

午後になって事態は動きだした。輿石幹事長が総理と鹿野道彦農水相
を呼んで3者会談を開いた。幹事長からの総理と農水相への話でTPP
交渉参加ではなく、参加へ向けての事前協議でとどまることで合意ができた。

鹿野農水相はさらに念を押した。
「総理、あくまで参加が前提の事前協議ではありませんよ」

 その後、私も幹事長室に呼ばれて、輿石幹事長からいきさつの概略
をお聞きした。「この件で1人の離党者も出してはならない」と強い口調で
政府に語っていることをお聞きした。事態は好転するかもしれない。
私もかすかな希望を持つことができた。

その頃には、両院議員総会を開くために必要な定数を越える142名の
議員署名が集まってきた。嬉しかった。早速、必死になって署名を集め
た仲間、皆で再び院内の幹事長室に向かった。

輿石幹事長に、142名の集めたばかりの名簿を手にして、すぐにでも
両院議員総会を開いていただくようお願いした。
「皆、本当に真剣なんです」
私からも申し添えた。

予算委員会でもTPPに関する集中審議が午後も引き続き行われている。
何しろ、党内も国論も2分している、国の形が変わるような大きな問題だ。
議論も多岐にわたって白熱してきている。

幹事長室から連絡があった。
「手を尽くしたが、今日のうちに開催するには時間がない。総理がAPEC
から帰ってから、間をおかずに「政策懇談会」と言う形で開きましょう」
私も納得した。

落ち着かない。党の包括連携PTでは政府の判断に慎重であるように
提言している。しかもTPP交渉への参加の是非については、政府は懸念
されていることの事実を確認して、国民に十分な情報の提供をすると同時
に幅広く国民的な議論が必要としている。それに推進派の議員も認めてい
るように圧倒的に「参加表明すべきではない」「時期尚早」の意見が多数
だった。そのことも明記して、以上のことを十分に踏まえたうえで、政府に
慎重に判断しなければならないと結んでいる。
この提言からすれば、野田総理もTPP交渉参加の表明はできないはずだ。
ただ新聞もテレビも野田総理が参加表明をすると報じている。

しかし、輿石幹事長にも、随分骨折っていただいているので交渉参加は
見送られるのではないか。私の心は千路に揺れた。

夕刻になって、少し明るい情報が入った。今回は参加表明ではなく、
「向けて」具体的な事前協議を始める旨の表現に変わってきたようだ。
しかも交渉に参加する前に各国から何を求められるか情報収集などの
協議で参加、不参加の判断、結論は先送りになった。
これだったら、我々も何とか、党の提言を受け入れたものとして納得はできる。

本当にそうだろうか。午後8時、我々は野田総理のテレビでの記者会見を
固唾を呑んで見入った。緊張した。聞き終わって、私はほっとした。多少聞
いていた内容とは違うところもあったが、おおむねそのような趣旨だった。
皆からさまざまな意見が述べられた。

「これでは交渉参加の表明ではないか」
「これでは困る・・・・」
「いや、交渉参加でなくてこれまでも党が認めてきた協議に止まったのだか
ら、我々の主張が通ったのだ」
「勝利宣言すべきだ」

いずれにしても、記者会見に臨まなければならない。会見の内容は私に任
せてもらった。それが「「ほっとした」した」会見になった。

確かに野田総理の会見の結びは
「このような観点から、関係各国との協議を開始し、各国がわが国に求める
ものについて、更なる情報収集に努め、十分な国民的議論を経た上で、あく
まで国益の立場に立ってTPPについての結論を得ていくことにしています」

参加の前提でもなく、参加の是非の判断は先送りされている。しいて言えば、
我々のTPP参加阻止の戦いは延長戦に入ったのだ。

私は皆に語った。

「これから、長い闘いが始まる」

 ハワイで始まったAPECでも、政府も参加の方針を伝え事前協議に入ること
を述べるに止まるようだ。ところが、すでに米国の政府高官から、日本に参加
の意思があるならば、牛肉、簡易保険、自動車の非関税障壁について米国の
要求を呑むべきであるといわれている。

今、新しい情報が入ってきた。さきほどオバマ大統領が、野田総理との会談を
終えて、「日本は貿易自由化のために、すべての製品とサービスをTPPのテー
ブルに載せる」述べている。(その後、誤報との訂正が入った)
これでは、これまで政府が言ってきたこととは異なる。大変なことになる。
帰国したら野田総理に正さなければならない。

 我々も政治家として、この国の未来に禍根を残すことのないように、近い
将来想定外だったといわせないためにも、不用意な交渉参加をなんとして
も阻止しなければならない。これからが闘いである。