この日のために


歩き慣れたいつもの野道、
見るもの一向に変わり映えしないと思うのが常ではあるのだが、
時にある日、その光景が一変することがある。
光景を変える主は路傍の花たちである。
見慣れた光景が頭の中に刷り込まれていると、その花の出現は唐突であり、
不思議な思いが頭の中を交錯する。
何より、緑一色の世界に、赤や青の原色が点描されたさまに驚愕する。

雨上がりのその日、路傍で目に留めたものは、
青色の可憐な花を咲かせた露草と、
赤紫から白色へとグラデーションをかけながら、
まるで毛虫か何かの生き物のようにくねり咲く葛(クズ)の花たちである。
この葛、大きく茂った立木に細い蔓(つる)を縦横に絡ませていたので、
一瞬、花はこの立木に咲いた花と見紛ったほどである。
不思議に思い、近づいて手にとってみて、やっとその正体がわかった。
立木の枝に絡んだか細い葛の蔓に花が咲いていた。
葛の花を見たのもはじめてであるし、
その別の木へ絡んで、その木の花のように魅せたさまにも驚きを禁じ得ない。
生命力、繁殖力が半端ではないのである。

一方の露草は、反対に次々と咲くのだが、
一輪ごとその命は、わずか半日ほどである。
それゆえはかない花とされ、万葉の歌人たちには多く詠み継がれてきた。
その真っ青な青は、露草色とも称される独自なブルーである。
小さな花なので、目立たないが、いっとき一斉に咲くと、
印象派が描く絵画のように、路傍が見事な青の点描世界となり、
思わず目を惹かれる。

ふと思うのである。
我が身とて、この露草に似て、いつ露と消えるや知れぬ儚い存在でもあり、
一方で、この葛の生命力のごとく不死身な一面をも併せ持つ。
すると、どこからか、花が囁くのである。
泣け、笑え、喚け、そして最後にしかと目を凝らせ!

生きて在る、この日のために・・・
 

 

 

 

 

 

 

 

 

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