昨日の西日本新聞の朝刊に
当番弁護士が始まってから25年がたってその意義を考えるという記事が載っていましたね。
突然逮捕されたものの、知り合いに弁護士がいない場合には
弁護士を頼みようがありません。
そこで、警察に「弁護士を呼んでほしい」というだけで、弁護士会から当番で弁護士を派遣する制度が当番弁護士です。
当番弁護は1990年に福岡と大分で始まりました。
当番で接見に向かう弁護士の費用は、全て弁護士会で負担していたのです。始まった当初は「福岡の実験」などとも呼ばれて注目を浴びていたそうです。
さらに被疑者国選が今のように充実する前までは
最初の接見だけでなく、その後の被疑者弁護の弁護士費用まで弁護士会が援助の申込みさえあれば肩代わりして負担していました。
なぜ、逮捕された人にそこまでする必要があるのかと思うかもしれません。
一つは、皆さんが思っている以上に、「実際にはやっていない人でもかなりの数の人が逮捕されている」という点があります。
起訴された後の無罪率は1%かもしれませんが、不起訴率はかなり高いのです。不起訴にはいろいろな理由がありますが、不起訴率は50%を超えているともいわれています。
もう一つは、実際捕まったみたらわかると思うのですが、
捕まってから、最大で三週間以上も留置場で身柄を拘束されるというのは想像以上にいろいろなものを奪っていくのです。
肉体的にも、精神的にも、経済的にも苦痛を感じて、どんどん弱っていきます。
なんとかこの苦しい状況から抜け出したいと思うあまりに、本当はやっていないにもかかわらず「やりました」というような人も後を絶ちませんでした。
本当にやったかどうかにかかわらず、逮捕後におかれた状況の苦しさによって「自白」が作られるというのは明らかにゆがんだ状態です。「冤罪」が生まれる土壌にもなっていました。
それをなんとかしようとして、当番弁護は始まったわけです。
今は被疑者国選が広がってきて、被疑者段階で弁護士が付かなければならないという理念も浸透してきましたが、ほんのつい最近の話です。
ちなみに、今でも年末年始だろうが、お盆だろうが当番を割り振られた弁護士が福岡では出動します!
もちろん私も含めてです!
世界的に見ればまだまだ日本の刑事司法制度は遅れているとも言われています。
特に起訴後も保釈がなかなか認められない「人質司法」の問題は今回の法制審議でも先送りされましたが、私自身は一番問題が大きいのではないかと思っています。
これから少しずつでも変わってくればよいですね!