起業の選択肢④~株式会社のメリットとデメリット~ | 福岡の弁護士 矢口耕太郎のブログ

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こんにちは!弁護士の矢口です!
一気に暖かくなってきましたね!

今日は前回から続く起業の選択肢のうち、「株式会社」について少しみていきましょう。

☆ 株式会社

(1)一人でやるのか、複数でやるのか
 株式会社は、その会社に出資した株主(=所有者)が必ずしも経営しているわけでも,経営者が必ず会社に出資しているわけでもないという点に特色があります。
 これを「所有と経営の分離」といったりします。
 ですから、「お金は出すけど経営は別の人にやってもらおう!」という考えの場合や「経営はしたいけどお金がないからスポンサーをみつけて起業しよう!」という人にとっては最も向いている方法になります。
 また、株式会社は以前は最低でも取締役3名,監査役1名の4名が必要でしたが,現在は取締役1人だけでもよくなり,1人だけでも会社を設立できるようになりました。
 1人でも複数でも行うことができる方法ということになりますね。

(2)事業の規模、内容
 以前は株式会社の場合、資本金が1000万以上という決まりがあって、ある程度規模の大きな事業を予定していました。しかしながら、法律の改正で資本金の制限がなくなって資本金1円でも株式会社を作れるようになりました。そのせいもあって最近では小規模な株式会社も増えてきています。
 
(3)自由にやりたいか、きっちりやりたいか
 会社法でいろいろな規制がありますが、最近では緩和傾向にあります。
 たとえば、株式会社の場合には少なくとも年に1回は株主総会を開かなければなりません。また、出資比率に従って、原則として配当も決めなければなりません。
 他にも、会社の重要な事項を変更するときは、登記記録の変更を申請しなければならなかったり、役員の任期は最長でも10年と定められています。
 また、個人事業と違って経営が上手くいかなくなって会社をたたむときも厳格な手続があり大変です。

(4)責任について
 株式会社は倒産しても,出資者(株主)は個人財産での支払いを求められることはありません(有限責任)。
 ただ、一人で株主かつ代表取締役として経営しているような場合は、銀行から融資を受けるときにほとんどのケースで連帯保証人になることを求められます。その場合は無限責任と同じです。

(5)信用について
 以前は資本金1000万円以上でないと株式会社を作れなかったということと、株式会社は登記されていますので誰でも会社の重要な情報を調べることができるということで、信用力は一番高いです。
 法人でないと取引してくれない企業もあります。WEBなどで集客する場合には,安心感を与えられることもありますね。
 
(6)起業の手続とかかる費用
 以前は会社を設立するのに資本金が1000万円以上必要とされていましたが,今は資本金は1円でもよくなりました。
 但し,資本金300万円未満の場合は株主へ配当できませんので,300万円が一つの目安になってきます。法務省の統計をみますと,資本金300万円から500万円の会社が一番多いようです。
 また、資本金が1円で良いといっても起業するためには,資本金の他に少なくとも20万程度が必要となってきます。
 定款の認証手数料として約5万円,印紙税4万円(電子定款の場合は不要です)が必要となります。また,株式会社の設立の登記をする際の登録免許税として,資本金の1000分の7(但し,最低でも15万円)を納付する必要があります。

(7)税金
 株式会社に課税されますが、複式簿記で決算手続を行わなければなりませんので、個人事業と比べると日々の経理作業は複雑になってきます。 
 メリットとしては、
 まず給与所得控除の分を節税できます。
 以前は「特殊支配同族会社の役員報酬の損金不算入」という制度で役員報酬が経費として認められていませんでしたが、平成22年4月からこの制度が撤廃されて小さな会社でも役員報酬を経費とすることが認められるようになりました。
 また、資本金1000万円未満の会社であれば、第1期と第2期も消費税の納税を免除してもらえますし、赤字繰越控除できる期間が7年に延びたり、社内規定をつくって経費を増やすこともできます。 
 反対にデメリットとしては、
 法人地方税には、資本金と従業員の数により黒字赤字に関係なく納める税金があります。 資本金が1000万円以上か否かによって、年間の金額が変わってくることがあります。
 また、会計期間の途中で役員報酬を上げたり下げたりすると、会社の経費として認められなくなることがあります。

 ここまで「株式会社」について簡単に見てきました。
 次回は、合同会社とLLPについて見ていきますね。