芸能人の広告出演と詐欺 | 福岡の弁護士 矢口耕太郎のブログ

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こんにちは!矢口です。

今日のテレビで、高岡早紀さんの母親の会社が、投資詐欺で訴訟を起こされたという話が出ていましたね。

高岡さんが広告塔になっている「水」の原料について、他の会社から買い付けるための資金として多くの資金の出資をもちかけられ、出資したというものでした。

ところが、実際には原料を仕入れるはずの会社は事業停止に陥っている状態で、出資を持ちかけたこと自体が詐欺だということで、裁判になっているようです。

さて、芸能人や有名人が詐欺的な商売の広告に出演した場合に、「この芸能人が出ているなら安心だな」ということで、詐欺に騙されることがあります。

そうすると、詐欺だとわかった場合には、騙された人は、芸能人も詐欺に加わっていたのではないかと思うわけです。

他方で、芸能人、有名人のサイドからみると、「広告出演を頼まれただけなのに・・」ということになります。


最近の事件で言えば、たくさんの芸能人が広告に出演した「円天」の事件が記憶に新しいですが、このときは芸能人も巻き込んで裁判になりました。

そこで、芸能人、有名人の広告出演の責任について参考になる判決が出ていますので少し見てみましょう。

東京地方裁判所の平成22年11月25日の判決は、このように述べています。

「芸能人等有名人が、広告に出演する場合に、広告主の事業内容・商品等について、常に調査をしなければならないという一般的な注意義務を認めることは、過度の負担を強いるものであって、相当でないというべきである。有名人が、広告に出演する場合に、調査義務を負うか否か及びその程度等については、個別具体的に、当該有名人の職業の種類、知名度、経歴、広告主の事業の種類、広告内容などを総合して判断すべきである」
「他方で、商法に疑念を抱くべき特別の事情があり、出資者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、又は予見し得た場合には、事業実態や経済活動について調査確認すべき義務があり、調査確認を怠った場合には過失があるというべきである」


わかりやすくいいますと

「芸能人、有名人はビジネスの広告に出るときは、どんな内容のビジネスかの調査を一般的にはしなくてもよい。ただし、その芸能人、有名人の職業や知名度、経歴、広告主の事業の種類や広告内容を総合的にみて、場合によっては調査しなければならないこともある」
「たとえ、一般的には調査しなくてもよい場合であっても、ビジネスが怪しいと思われる特別な事情があって、このままで出資した人に損害が生じるかもしれないと思った場合には、調査すべき義務がある。その調査や確認をしなかった場合には過失が認められる」

ということになります。

要するに、「一般的には芸能人、有名人は広告に出演する場合にビジネスの内容について調査や確認をしなくてもよいが、個別具体的な事情によっては責任を問われることもあります」ということです。

この判決は、どんな場合に責任を問われる可能性があるかという事情については、
①有名人の社会的分野の知識
②有名人が広告に出演した動機
③詐欺的なビジネスだとわかってからの行動
④商品やシステムをどのくらい宣伝したか
⑤どのくらい強い影響力を与えていたか
⑥直接の関連性があるか
⑦ビジネスの怪しさがどのくらい有名人に伝わっていたか

といった考慮要素をあげていました。
その上で、芸能人の責任はなしとしています。

ただし、過去にはいろいろな事情を考えたうえで芸能人、有名人の責任が認められた判決もあります。

今回のテレビのケースで高岡さんがどこまで深くかかわっていたかはわかりませんが

「広告出演」というのは、広告を見た人に信用を与えることを目的としているだけに、何も考えずに出演していると、後で大変なことになることもあります。

最近、知恵と工夫でいろんなビジネスが生まれていますが、同時に詐欺的なビジネスも増えてきました。

詐欺的なビジネスは、仕組みがよくわからない場合がほとんどです。

法的な責任がない場合でも、イメージダウンや非難を浴びることもありますので、注意が必要です。