「秘密」であるために何が必要か | 福岡の弁護士 矢口耕太郎のブログ

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こんにちは!弁護士の矢口です!



GW真っ最中ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。


私は昨日家族と一緒に夜ご飯を食べて、今日は事務所でゆっくり仕事をしています。



さて、先日内閣官房参与を辞任した東大の小佐古教授が、5月2日に予定していた説明を中止しました。


説明会の内容は、「放射線被曝(ひばく)限度の問題点について詳細な説明を行う予定だった」とのことです。

その原因なんですが、報道によれば、「(官邸関係者から)老婆心ながら、守秘義務があるといわれた」だからそうです。



「守秘義務」といわれると、「とにかく内部のことについては何もしゃべってはいけない」というような印象を受けると思います。



ただ、実際には少し異なります。


今日は、「守秘義務」について少し考えてみましょう。



まず、法律から見ていきましょう。



国家公務員法100条1項


「職員は、職務上しることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」


と規定しています。



今回、小佐古教授は、退職はしましたが前は内閣官房参与だったのですから、この条文だけ見ますと、守秘義務によって何もしゃべってはいけないことになりそうです。



ただ、今回説明会の内容は、「放射線被曝(ひばく)限度の問題点について詳細な説明」でした。



私が感じたのは、この内容がそもそも「秘密」にあたるのか?という点です。



何が「秘密」にあたるのか?という点が問題になってきますが、この点については、最高裁判所が昭和52年12月19日に出した判決で一定の答えを出しています。



判決では、「秘密」とは「国家機関が単にある事項につき形式的に秘密の指定をしただけでは足りず、秘密とは、非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいうと解すべきである」と言っています。



わかりやすくいえば、「①一般の人に知られていないことと、②形式ではなくてその内容を実際にみて、秘密として保護するに値するもの」が秘密に当たるということです。



何が秘密として保護するに値するかどうかというのは、漏らすことによって特定の守られるべき利益が侵害されるかどうかによって判断されると解釈されています。



さて、今回の小佐古教授の説明会の内容は、この「秘密」にあたるのでしょうか。



非公開の委員会が開かれて何がしゃべられていたのかどうかは私にはよくわかりませんが、少なくとも公開されている委員会で話している内容については①にはあたりませんね。



また、「放射線被曝限度の問題点」というのは、基本的には学術的な内容を多分に含んでいるもので国家の政治的機密情報とは関連性が薄いです。放射線の学者としての意見を述べたところで、少なくとも特定の法律で守られるべき利益は何も侵害されていないので、②実質的に秘密として保護するに値しないように思います。



内容が政府の批判を含むものだったとしても、特定の法益を侵害するといえないことは当然ですね。



逆に、守秘義務を指摘して説明会を取りやめさせることは、小佐古教授の表現の自由、僕ら国民からしてみれば、国民の知る権利を侵害している気がしてなりません。