ブログの更新は本当に法律違反? | 福岡の弁護士 矢口耕太郎のブログ

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こんにちは!弁護士の矢口です!
ちょっとブログの更新がお久しぶりになってしまいました。
さて、「ブログの更新」といえばですが、今日の新聞で
「今年4月の福岡市議選の選挙期間中にブログの更新をしたり、ユーストリームでの演説を生中継したということで、立候補者が書類送検された」
という記事がありました。
ブログの更新が法律違反??ということで、今日はちょっと考えてみましょう。

「公職選挙法」という法律があります。
公職選挙法には簡単にまとめると次のような規定があります。

142条1項
「衆議院(小選挙区選出)議員の選挙以外の選挙にあっては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する・・・のほかは頒布することができない」

143条1項
「選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する・・・のほかは、掲示することができない」
146条1項
「何人も、選挙運動の期間中は、・・・・名義を問わず142条または143条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボルマーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対するものの名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。」
これに違反した方は、
「2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」(243条)になります。

簡単にいうと、
142条と143条は、選挙運動のために使う文書図画は、決められたもの以外は配ったり、掲げたりしてはいけません。
146条は、選挙運動の期間中は誰も政党やシンボルマーク、立候補者の名前、推薦人などの名前が入った文書図画を配ったり、掲げたりしてはいけません。

これに違反すると、2年以下の禁錮か、50万円以下の罰金になりますよ。ということが書かれています。

今回の記事の件は、おそらくこの142条か、143条に該当する疑いがあるということで、書類送検されたんだと思います。
さて、ブログの更新は、本当に公職選挙法違反なのでしょうか?
この問題は、「ブログやホームページ」=「文書図画」といえるか?という点にあります。
ここで、明確には書いていないのですが、どうも総務省の運用としては、「パソコンのディスプレイで表示された文字等」は「文書図画」にあたると考えられているようです。
ただ、法律の解釈は、総務省が行うものではありません。本来不明確な法律の解釈は、司法の判断、裁判所の判断にゆだねられています。
というわけで、ブログの更新が法律違反ということはまだきちんと決まってないんですね。
私としては、「ブログの更新は公職選挙法に違反しない」という考えです。
といいますのは、法律の解釈というのは趣旨に沿って考えていかないといけませんが、
「ブログの更新」は現代においては、公職選挙法142条、143条、146条の趣旨に反しないのではないか?という点にあります。

そもそも、公職選挙法の趣旨は何かといいますと、「チラシやポスターの配布を無制限に認めると、お金をたくさん持っている政党が立派なものを大量に配って貧乏な人は絶対に勝てなくなり不公平が生じてしまう。
だからルールを作って制限して、不公平にならない適正な選挙をしましょう。」
というものです。
この趣旨から考えるとどうでしょうか。
今、ブログの更新にはお金はほとんど必要ありません。むしろ紙のほうがはるかにお金がかかる時代です。
今回書類送検された方も、まだ若い方でそんなに財力を利用して不適正な選挙をしようとする方には見えませんでした。
逆にこのような方を書類送検して、「やっぱりダメなんだ」と必要以上に社会を萎縮させることこそ、公職選挙法の趣旨に反する結果になるのではないかと思います。
あと、憲法21条で保障されている「表現の自由」はとても大事なものとされていますが、表現を制約することは憲法違反の可能性もあるのです。
これから、ブログの更新やホームページの更新を理由として起訴される方も増えてくるかもしれません。
一度、裁判所の判断を見てみたいですね!