皆さん、こんにちは。
歯科医師の坂上です。
さて当院では、お口の中に口内炎ができているとの主訴で来院される方が多くいらっしゃいます。
しかし、口内炎といっても、良性・悪性のもの、ウイルス性のもの、自己免疫疾患によるものなど、さまざまな粘膜疾患がございます。
著名人の口腔粘膜疾患からの悪性化の報道もあり、日頃から口腔内を意識して観察するようになっている方も多いかと思います。
では、この写真をみていかがでしょうか。
右頬の粘膜に白い網状の病変を認めます。
この病変は一体どういったものなのでしょうか。
正解は「扁平苔癬(へんぺいたいせん)」という粘膜疾患です。
そこで今回は、扁平苔癬についてお話したいと思います。
扁平苔癬とは、皮膚や口腔粘膜に発症し、角化異常を伴った難治性の慢性炎症性疾患です。
下記のような特徴がございます。
・口腔粘膜にレース状・網状の白斑が生じ、赤みやびらんを伴うことがある。
・頬粘膜、下唇、舌に発生する場合が多い。
・両側性に多発する傾向がある。
・40歳以上、女性に多い(男性にも認められます)。
・無症状の方もおられるが、しみる、ヒリヒリとした痛みなどを認めることが多い。
・原因は不明(一部金属アレルギーや肝障害に関連している報告もあります。)
では、どのように診断・治療するのでしょうか。
まずは歯科医院で視診・触診、病理検査などによる診査、診断を行い、その上で治療を行う必要があります。
なぜなら前述したように、口内炎と思われる病変があっても、口腔内には良性から悪性までさまざまな粘膜病変があるからです。
当院では口腔外科も専門としており、必要があれば、診断のため病変の組織を採取して病理検査を行うこともあります。
治療方法としては、対症療法をしながら経過観察することが多いです。
痛みなどの症状が強い場合はステロイド軟膏の塗布、レーザー治療、うがい薬による含嗽を行います。また必要があれば、皮膚科での金属アレルギー検査を行う、刺激となっている金属のかぶせもの詰め物などを除去します。
それから喫煙や飲酒などの生活習慣を改めることも必要です。
症状が落ち着いている場合でも、この扁平苔癬はごくまれに悪性化するとの報告もあるため、定期的な経過観察が必要になってきます。
このような口腔内に白い粘膜病変を自覚されている方は、自己で判断されず、まずは当院での診察・診断が必要です。
お悩みを抱えておられる方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご連絡ご予約いただき、ご来院ください。
コロナ渦のなか、患者様の安全安心のため、当院ではより一層感染予防対策に取り組んでおります。
今後も引き続き患者様に有益な情報を発信して参りたいと思います。
引用:口腔外科学 第4版 白砂兼光・古郷幹彦 編著 医歯薬出版