遺体が見つかった民家を捜査した警察官が、後日休日に再訪して通帳などを持ち去っていた疑いで再逮捕された。岡山県警岡山南署刑事2課の巡査長、松岡和寛容疑者(32)は、県警の調べに対し「独居だと分かっていたため、ばれないと思った」と説明しており、職務を利用した可能性が高い。県警では最近不祥事が相次いでおり、県民からの信頼が揺らいでいる。

 孤独死や自然死など、医師にみとられずに人が亡くなった場合、救急隊や病院などから通報を受け、警察官は遺体の状態や死因などを調べる検視を行う。持ち物や遺留品などの有無も綿密に調べる。

 その際に遺品に目を付け、後日再訪して物を持ち去るのは難しいことではない。捜査などは、個々の警察官の職業意識や倫理観を前提として進められるのが実情で、他県警でも同様のケースは相次いでいる。

 松岡容疑者は、通帳など計12点(計5万円相当)を持ち去っていた疑いがあるほか、捜査関係者によると、カメラなど一部を転売していた疑いもある。「ギャンブルなどで借金に困っていた」などと逮捕容疑を認めているという。

 県警幹部は「死者は所有物を奪われても被害を訴えることはできない。卑劣な行為だ」と憤る。別の幹部は「亡くなった方だけではなく、県民に対する裏切り行為でしかない」と落胆する。29日、河合弘文首席監察官は「亡くなられた方を冒涜(ぼうとく)する行為であり、関係者、県民の皆様に深くおわび申し上げる」と謝罪した。

岡山県警、不祥事相次ぐ

 岡山県警では、指揮を執る幹部から現場で活動する警察官まで、不祥事が相次いでいる。

 玉島署長などを歴任し、中国四国管区警察局に出向中の警視正(58)(起訴休職中)は昨年、マッチングアプリで知り合った複数の女性に性的暴行を加えたとして不同意性交罪などに問われている。

 今月26日には、交通部長(警視正)だった男が、部下に昇任試験の問題案の概要を事前に漏らしたとして、国家公務員法(守秘義務)違反容疑で書類送検された。

 児島署地域課の巡査部長だった男(50)は、倉敷市内の駐在所に家出中だった少女を宿泊させてわいせつな行為をしたとして、昨年12月に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。

 29日、岡山南署の松岡容疑者の再逮捕を伝える発表の場で、県警の河合首席監察官は「いずれも信頼を著しく損ねる事案。綱紀粛正を図るため、指示を徹底している」と述べた。