カンボジアの労働仲裁判決事例 | タイプラスワンの法務 -新興メコン法務専門家として-

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今回は、カンボジア労働仲裁2013年127号 Quint Major Industrial事件を通じて、非常に複雑で分かりにくい、特別休暇と未消化の年次有給休暇の関係について解説したいと思います。

<労働者側の請求>
 労働者側は、A社に対し、① 未消化の年次有給休暇(annual leave)から使用した特別休暇(special leave)を差し引かれてはならないということ、② 有給休暇を消化してしまっており、既に残っていない場合、特別休暇として利用した分は、給料から差し引かれてはならないことを請求しました。
 これに対し、A社は、労働者側の請求は認められないと反論しました。

<仲裁判断内容>
 労働仲裁委員会は、「(①に関する)労働者側の請求を棄却する」、「(②に関する)労働者側の請求を棄却する」との仲裁判断を下しました。

<理由・解説>
1.判断理由

(1) ①労働者が未消化有給を有する場合
 労働仲裁委員会は、特別休暇について定めた労働法171条及び、2001年10月11日付労働省令267号2条を参照し、労働者に未消化の有給休暇がある場合には、使用者に対して、特別休暇使用分を未消化有給休暇から差し引かないように求めることは、上記法令に反するためできな
い、と判示しました。職務遂行の一部と認定し、本件職業訓練は、時間外労働に当たると判断しました。

(2) ②労働者が有給を使い果たしている場合
 労働仲裁委員会は、労働法171条及び、2001年10月11日付労働省令267号4条によれば、労働者は、有給休暇を使い果たしている場合、残業することによって特別休暇分を穴埋めすることが可能であることから、使用者は、特別休暇取得分の給与及び手当を差し引くことができ、労働者は、これを埋め合わせた場合は、給与及び手当をそのままにすることができると判示しました。

2.解説

(1) 特別休暇に関する基礎知識
 労働法171条1項は、「使用者は、労働者に対し、その直近の親族(子・親・配偶者)に直接影響する出来事の期間中に特別休暇を与えることができる」としており、 2001年10月11日付労働省令267号は、特別休暇の日数を年間7日とし、特別休暇の対象となる出来事として、自己の結婚・妻の出産・子の結婚・直近の親族の病気又は死を例示しています。また、同法2項は、使用者は、未消化有給がある場合、使用した特別休暇の日数を未消化から差し引くことができるとしています。

(2) 本仲裁判断の意義
 本仲裁判断は、法令において取り扱いが明示されていない、有給が使い果たされているケースにおける特別休暇の取り扱い(:埋め合わせがなされない限り、給与を差し引くことが可能)について判示したものですが、どのような手続で労働者による埋め合わせを行うことができるかについては明らかではありませんので、本点に関する今後の判断の集積が待たれます。

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