実は、最初に応援していた選手が移籍した後、一度だけ、会いに行ったことがある。
そのチームの、ファンのためのイベントの日。
彼が移動するにつれ、多くの人が周りを取り巻き、ついて歩く。
その隙間を縫って、わたしは彼に手紙を差し出した。
彼は無言で受け取り、そして握手に応じた。
わたしが彼に書いた、膨大な量の手紙を、全部とってあると言っていた彼。
しかし、心がすれ違ってからは、手紙を受け取ろうともしなかったのに。
わたしはこの時、すべてを水に流した。
わたしを信じてくれようとしなかった恨みつらみをすべて。
さようなら、もう二度と逢うこともない。
このチームにも、再び来ることはない。
そのはずだった。
再び足を踏み入れることとなったそこは、魑魅魍魎が跋扈している、恐ろしいところだった…。