わたしがここで書いているようなことは、一般の、普通の人から見れば、些細なことで、妬みの対象にもならないようなことだろうと思う。

しかし、選手に狂った人たちにとっては、違うらしい。

選手がこちらを向いた、目が合ったと大騒ぎをする人たちだから。

わたしにとっては、異性が振り返るのは、普通のことだが、選手どころか、一般の男性にも振り返られることのない人は大勢存在するだろう。

実際、妬まれるに値するようなことは何もなかったというのに、そういった人たちはしつこく恨みをぶつけてくる。

練習場で、仲良くしていたお婆さんがいた。

お目当ての選手は、日本を代表する人で、純情な、可愛いお婆さんだった。

ある日、その人とふたりで佇んでいるところへ、彼が車で通りかかった。

いつものように、こちらを見ていく。

その人は、大喜び。

――(選手の名前)、こっち見ていったよ!

他の見学者の人たちにも、大喜びで言ってまわっていた。

数日後、練習場に行くと、その人の態度が一変していた。

仲良くするどころか、わたしが選手に話しかけるのを邪魔しにくるようになった。

そして、聞こえよがしに嫌味を言う。

誰にでも愛想よく接していた人なのに、わたしの他にも敵と見定めた人間を作り、敵対するようになった。

彼女の心の闇に何が巣くったのかはしらない。

しかし、彼が自分を見ていたのではないことに気づいたであろうことは、想像に難くない。