第61話 作品計画スタート


深夜0時。閉店したショッピングモールの屋上駐車場。


冷たい風の中、ソウマたちは集まっていた。


地面には地図。


街全体の地図だった。


駅前、高架下、工場跡、商店街、川沿い。


赤い丸が何十個もついている。


「全部、“Love letter”を置く場所だ」


ソウマが言う。


ユナが驚く。


「こんなに?」


「一つじゃ意味が弱い」


ソウマは地図を指でなぞる。


「でも、全部つながると、一つの作品になる」


点を線にする。


街そのものをキャンバスにする。


それが、ソウマの答えだった。


RAVENは壁にもたれながら聞いている。


「問題は時間だ」


NOXも動いている。


目立つ場所はどんどん取られている。


カズさんが地図を見る。


「ルートを分けるしかないな」


TRACEも現れた。


古い自転車を押しながら。


「消されそうな場所は俺が見張る」


初めてだった。


バラバラだった人たちが、一つの作品のために集まっている。


その時。


遠くで爆音。


全員が振り向く。


駅前の大型ビジョン。


画面が突然消え、黒く染まる。


そして映し出された。


巨大な白い三日月。


“N O X”


街中の人がざわつく。


ユナが息をのむ。


「嘘…」


次の瞬間、スピーカーから声。


NOX本人だった。


『この街は、もう始まってる』


ノイズ混じりの低い声。


『今夜から三日後。最後の壁をもらう』


ソウマたちがいる、あの巨大壁。


『止めたいなら、街全部で来い』


通信が切れる。


静寂。


でも、街の空気は完全に変わった。


ただのタグじゃない。


これはもう、“街そのもの”を使った戦いだった。


RAVENが小さく笑う。


「派手にしてきたな」


カズさんは帽子を深く下げる。


「…始まるぞ。第五章が」


ソウマは巨大壁の方向を見る。


頭の中には、完成した“Love letter”の形。


でも、その途中にはNOXがいる。


街のあちこちには、敵の印。


消える線。


壊される場所。


それでも。


ソウマは缶を握る。


「全部つなげる」


その目は、もう迷っていなかった。


同じ頃。


誰もいない地下通路。


白いマスクのNOXが、一枚の古い写真を見ていた。


そこには若い頃のカズさん。


RAVENの兄。


そして、もう一人。


まだ誰も知らない人物が写っていた。


NOXは静かにつぶやく。


「そろそろ、お前の番だ」