裁判官研修



司法研修所で裁判官研修があった。

テーマは、医療裁判の審理運営。

全国から、医療側弁護士2名、患者側弁護士2名。裁判官40数名。

弁護士4名がそれぞれ約30分ずつ講演。その後4人のパネルディスカッション。裁判官からの質疑応答。



主な課題になったのは、医療の素人である職業裁判官が医療事件を公平に裁くために専門的知見をどういう方法で取り入れるのがよいか。であったように思う。

永遠の課題。


昔から言われ続けている。一番よく知っているのが医療側の代理人、次が裁判官、一番わかっていないのが患者側代理人。患者側代理人としては耳が痛い話だが、今後もこの力関係は続くだろう。如何に自分の能力をまともに医療過誤が争える専門弁護士として磨いていくか、日頃の地道な学習以外に最後はないのだと感じた。



最近認容率が低くなった原因。

私なりに以下の3点に分析して検討した。数が多いと思われる順に検討。


①最大の原因は今も昔も変わらず、残念ながら医療過誤ではない事件が医療過誤と誤解されて提訴されていることが稀でない。この場合は、患者側敗訴が正義。

弁護士は、本来患者に過誤ではないことを説明して納得してもらうべきであった。但し、力及ばず納得してもらえない場合はあるが。かといって、過誤ではないが仕方がないから着手金受け取って訴える、は詐欺に近い。


②次に本来は患者側が救済されるべきなのに、患者側代理人が未熟なために、主張立証がまともにできず、裁判官が正しい判断に至ってくれない例。

患者がもっとも気の毒な例。未熟な弁護士かどうかを見抜く力は患者に求めても無理。本来医療過誤訴訟のプロであるべき弁護士が協力医の技量を見抜けないくらいだから。この場合弁護士は負けても未熟故自業自得だが、患者は不幸。

裁判官は、微妙。

具体的事案によっては、患者側代理人が未熟なのを理解し、公平な解決のために専門委員を採用するとか、ある程度は釈明してヒントを与えるとかするのが公平な場合がある。訴訟は完全なゲームではなく、公平な紛争解決、という見地から。

しかし原則は当事者主義。患者側代理人の未熟は患者の損失になるから、弁護士選びは慎重に。

裁判官も未熟であれば、未熟な患者側代理人の未熟な主張立証のまま本来救済されるべき患者は救済されず、二次遭難に遭う。


③何らかの救済が必要な場合、患者側代理人もそれなりの主張立証をしているが、裁判官が迷った末に決断に至らない場合、主張立証責任のある患者の請求は認容されない。

私個人としては、①は患者側敗訴が正義。②は敗訴致し方なし。気の毒だが。

③のケースで裁判官が迷った末決断に至らない、その決断のハードルが最近患者にとって高くなってきているという感想を持ち、その点非常に懸念している。

とりわけ因果関係については、最高裁の考え方に下級審がついて行けていないのではないか、と個人的に考えている。


















証拠保全の検証

 昨日証拠保全の検証に大阪市内の某民間病院へ行きました。


時代は様変わり。

今回も最近多いパターン。時間前から入り口で医事課のスタッフがお出迎え。すでに検証目的物の原本が机の上に陳列。

電子カルテではなかったので、コピー作業、原本照合作業終了。

担当の新任判事補と思われる若い女性裁判官が、CDRに納められた画像を原本と同一か照合確認したいとの意向。

全員で医局に移動。本体のパソコンの横に代理人携帯のノートパソコンを立ち上げる。確認作業が結構面倒。結局は事務方ではなく、放射線科技師の協力を得て、パソコン画像を一覧で出しての照合。裁判官が場の空気を無視して、この写真とどのコマが同じなのか、どう見ればわかるのか、という質問をして一つ一つ確認するから、よく見えない後ろからは眠たい空気が・・・・

しかし、私は久々にあるべき裁判官魂の片鱗を見た感動の余韻。

どんなに稚拙と思われる質問でも、自分自身の目で見て耳で聞き、納得ができるまで簡単には終わらせない。曖昧な妥協はしない。これまさに裁判官のあるべき姿勢。

こういう新人裁判官にこそ未来の司法を背負ってほしい。





美容クリニック

 先日は、とてもうれしい事件が起こった。私の足で徒歩20分弱くらいの距離にある立派な美容クリニックの先生が飛び入りで事務所に来て下さいました。ホームページを読んで共感して下さり、しかも美容外科には協力医がいないため相談に応じられないという記載を見て、何かの折りにはアドバイスして下さるとのこと。それを言いにわざわざお忙しい中徒歩できて下さいました。感激です。

 というわけでこれからは美容外科のご相談にも応じることができそうです。

 これからもよろしくお願いします。