中学生で数学が苦手な子どもは簡単な公式を覚えようとしないで大変な道を選びます。
たとえば、中学3年生では乗法公式を4つ覚えて、それを使って式の展開を行うようになります。
苦手な子どもは、その4つの乗法公式を覚えなくて、または覚えられなくて、ただ、かけ合わせるだけの展開をやって解きます。
公式を使って展開する問題ですから、4つの乗法公式を使うことを覚えるための計算問題になります。
これを苦手な子どもは、ただひとつのパターン、つまり、かけ合せて同類項を足すことをくり返します。
他の子どもたちが乗法公式の使い方を覚えている時に、ただ、かけ合わせれば答えが出るのだから、少しは計算が面倒でも公式は覚えなくてもいいじゃん。
というような感じで苦手な子どもはいます。
でも、次に学習する因数分解は乗法公式の逆バージョンになりますし、乗法公式を覚えていないとできなくなります。
このようにして、始めにちょっと労力を惜しんだため、後はできない、ということをくり返して、最終的に数学が苦手な現状の自分を作ります。
始めにちょっと大変だけれども、それを覚えると後は楽になるということは多くあります。
でも、人間は今までの慣習を変えるために労力を使うことは嫌がるようにできているようです。
以前、勤めていた会社でメッキ塗装をする部署での出来事です。
現場では人が高温のメッキ槽に製品をつける作業をしていました。
過酷な労働なので、ロボットを使ってその作業をして、人はロボットがメッキした製品を取るのと、メッキする製品を置くだけの作業にするようにしました。
ロボットの設置、プログラミングしている時、現場の人は、「こんなロボットはいらない、自分達がするのがいちばんだ」と話していたものです。
でも、ロボットの操作の仕方を覚えて、実際にロボットが作業をして、メッキ塗装をするようになると、もう自分達が熱い槽に製品を入れて、メッキをしようとしなくなりました。
ロボットが少しでも、故障すると、ロボットの代わりに自分達が以前のように作業をしようという気持ちはなくなりました。
すぐに私のところに修理依頼の電話がかかるようになりました。
人間は変わった後によい方向になるとしても、今までしてきたことを変えることには抵抗を感じます。
今までのままで、別に困っているわけではないので、無理して変えなくてもいいと思っています。
でも、強制的に変えさせられると、変わった状態がよく感じるものです。
今度は前にもどることに抵抗を感じます。
年齢が高くなるほど、今までしてきたことの期間が長くなるので、変化への抵抗も強くなります。
意識して変化に対する抵抗を少なくするようにしなければなりません。
中学生の公式を覚えることも、よくなるための変化なのだと考えると、がんばって覚えようという気持ちを持つことが必要です。