マット狢(むじな)と云う語は、ケット部落に近き今も越後、信濃の山間地方において行われ、その語を以てよく真人村の人をからかうそうである。
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北海道に入り込んで、アイヌ相手に利益を漁る程のものは、実際純樸なる彼らを欺いて、無価値なものを高価に売り付け、或いは酒を飲ませ酔いに乗じて彼らの宝物を貰って来るなど云う事をしばしば耳にするのである。
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当時(明治初年)は純朴で、神に近い位であつたといふ。古老の話に依ると、ラムネ瓶の中にあるガラス玉を宝玉と偽つて、焼酎の二三本も飲ませて強く酔はせ、熊の皮や鹿の皮と其ラムネの玉を交換した悪辣なシヤモも少くなかつたさうだ。アイヌも漸次それを知つて、「シヤモはヅルイ奴」と承知し、遂には反つて和人が欺かれる様になつた。