林業の魅力シリーズ第347弾
香りに導かれ、森の本質へ──
『香りの起源を求めて』が語る植物と人の絆
「香り」――それは私たちの日常に密かに、
しかし確かに存在するものです。
その香りの多くは、
森が育む植物から生まれています。
本日は、「香りの起源を求めて
香水を支える植物18の物語」
(ドミニーク・ローク著/門脇仁訳)という
一冊を通じて、森、林業、そして植物資源が
「香り」とどうつながっているのかを紐解きます。
門脇さんとのご縁も交えて、
林業の現場にいる私たちだから感じられる視点で
紹介していきましょう。
「香り」は記憶の扉
森を歩いていて、ふと鼻腔をくすぐる香りに懐かしさを
感じたことはありませんか?
木肌の香り、落ち葉の湿った匂い、
切り株から漂う青々とした芳香──。
それらは単なる“匂い”ではなく、
植物が何万年と紡いできた進化のメッセージ。
そしてそれに耳を傾けてきたのが人間の歴史でもあります。
今回ご紹介する書籍:
『香りの起源を求めて――香水を支える植物18の物語』
著:ドミニーク・ローク
訳:門脇仁(築地書館)
出版社:築地書館
森を知る者にはたまらない、
精緻で濃密な植物エピソード
本書に登場する植物たちは、
いずれも人類が「香り」として受け止め、
「使ってきた」存在。
例えば──
サンダルウッド(ビャクダン):寺院の香に使われ、
心を鎮める力を持つ。
ラブダナム:古代エジプトのミイラの防腐にも
使われた神秘的な香り。
ベンゾイン(安息香):樹脂から立ちのぼる甘さが、
今も香水のベースに生きている。
どの植物にも、地球上のどこかで林業に関わる人々が関わり、
木を育て、採取し、命を活かしてきた軌跡が見えます。
林業者の視点で読むと──
「香り」は資源であり、文化である
私たち林業に関わる者にとって、
香りは単なる“いい匂い”ではなく、
木の状態、季節、樹種の違いを知る感覚のひとつでもあります。
カラマツを伐ったときのツンとした香り。
ヒノキの皮を剥ぐ瞬間の、ふわっと広がる爽やかさ。
そして時には、伐倒前の樹木が風に乗せて放つ、
微かな“別れ”の香りさえあるのです。
本書の内容は、そんな林業的な感性と深く共鳴します。
門脇仁さんとの出会いと“においの森”の会話
この書籍の訳者・門脇仁さんは、
私が長年お世話になっている言葉のプロであり、
自然観察の達人です。
先日も当社へお越しいただき、
森と人間の関係性について、
言葉を超えた“感性の対話”を交わしました。
「においの正体は、記憶と結びついている」
彼がそう語ったとき、私は改めて林業が“文化”で
あることを再認識したのです。
彩ちゃんのひとこと
「この本、森を五感で感じたい人にピッタリ!
ページから香りが立ちのぼるようで、
彩も鼻がくすぐられました♪」
香りを知れば、森ともっと深くつながれる
『香りの起源を求めて』は、単なる植物図鑑でも、
香水の歴史書でもありません。
それは森に息づく「香り」という無形の文化を
通して、人間と自然の関係を照らす一冊です。
林業に携わる方、森を愛するすべての方にこそ
読んでいただきたい──。
香りを感じながら読むこの本が、
あなたの「森との距離」を変えるかもしれません。
note更新情報(2025/10/29更新)
彩ちゃんの安全物語 第9話「声より先に、合図で伝える」
“声”だけに頼らない──
安全な作業のための「合図」の重要性を、
彩ちゃんが実体験をもとに語ります。
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