街マーケティング

街マーケティング

「住まい探しや出店は、まず街を選べ。」と言われます。エリアマーケティングの専門家が
街選びに役立つ、「元気な街、話題の施設」を紹介します。

エリア分析や店舗開発のマーケティング・スタッフが見た地域(県民)性、街、話題の施設をコメントしています。

テーマ:
-広大な里山を巡るアートイベント-
 

●モダンアートは、里山へのデスティネーションとなった

 8月末、遅めの夏休みを取って3年に1度開催される越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭」へ行って来ました。ここ3回ほど続けて訪問しています。前々回は、バイクで行きましたが、広大な里山の中、点在するアート作品を探して巡る楽しさにすっかりはまってしまいました。
 

棚田(イリヤ&エミリア・カバコフ) 「大地の芸術祭」代表する作品
 
 今回は、車で横浜から圏央道、関越高速道路の六日町インターチェンジというアクセスです。朝、9時頃に出発すれば、昼過ぎにはメイン会場となっている十日町市に到着です。
 
 この「大地の芸術祭」の魅力は、やっぱりスケールの大きさです。開催地は、十日町市、津南町の760k㎡です。東京23区の面積が619k㎡ですから何とその1.2倍の広さです。この広大な緑の里山、峠の中に378点の作品が点在しています。
 

ドローンで撮影した十日町北部エリア。ほぼこんな風景の中に作品が点在する。
 
 「大地の芸術祭」の中心拠点は、越後妻有里山現代美術館「キナーレ」です。いつものように、ここでパスポートを購入、アート作品巡りのスタートです。
 
 
「大地の芸術祭」パスポート
 
 「大地の芸術祭」は、「人間は自然に内包される」を基本理念とし、アートを道しるべに里山を巡る新しい旅から地域づくりを図るものです。約50億の経済効果や雇用・交流人口の拡大をもたらしているそうです。(芸術祭公式webサイトから)
 
 2000年に第1回目を開催し、今年で7回目です。来場者は、2012年488,848人、2015年、510,690人と着実に伸びています。十日町市の人口が53,382人ですから、何と10倍近い来場者です。今年は、海外からの来場者も多くなっているようです。ちなみに総合ディレクターを「瀬戸内国際芸術祭」なども携われている北川フラム氏が担当しています。
 
 

●里山現代美術館「キナーレ」からアート作品巡りのスタート

Palimpsest: 空の池(レアンドロ・エルリッヒ)
視点をずらすと、このように変化する。 
 
 今回も、「キナーレ」からスタートです。まず目をひくのが美術館の中央にある回廊に囲まれた大きな池です。レアンドロ・エルリッヒの「空の池」という作品で、上下4層になっているように見える下2層(ブルーの部分)は、実は池の底に描かれた画像です。2階のある1点から見るとこの画像のように見えるだまし絵のような作品です。
 
 また、今回は、企画展として「2018年の<方丈記私記>~建築家とアーティストによる四畳半の宇宙」が開催されていました。これは四畳半という小さな空間から世界を展望した鴨長明「方丈記」を参照し、地域と芸術の役割を再考する試み(公式ガイドブックより)のようです。
 

builds crowd ~街の記憶~ (栗真由美)
 
 個人的に好きな作品は、栗真由美氏の「builds crowd ~街の記憶~」です。この作品は下部だけが開いている真っ黒な四畳半ボックスに入り、上を見上げると越後妻有地域の建物を模した小さなライトボックスが望めるインスタレ―ション作品です。下から見上げる町の空撮のようで不思議な感覚です。
 
DRAPE HOUSE(ドミニク・ペロー アーキテクチャー)
 
 また、 ドミニク・ペロー アーキテクチャーの「DRAPE HOUSE」も気になる作品でした。これは、フレキシブルだけれど構造があり、存在と不在、自然と人工的を自由に行き来できる素材″メッシュ″で空間をつくりだすということです。
 
 この四畳半の空間群は、団体で来ている子どもたちに大人気で、格好の遊び場になっていました。
 


●今回、一番人気の中里エリア「清津渓谷トンネル」へ

 マスコミでも紹介され、インスタ映えすると今回一番人気の清津渓谷トンネルのマ・ヤンソン/MAD アーキテクツの「ライトケープ」へ向かいました。
 

ペリスコープ/ライトケープ(マ・ヤンソン/MAD アーキテクツ)
私たち夫婦もここでタイタニックのポーズを決めました。(笑)
 
 清津渓谷トンネルは、何と観光目的で建設された全長750mのトンネルだそうです。この途中にある清津峡の絶景を望む見晴らし所と、終点のパノラマステーションで作品を展開。終点には、清津峡の景観を反転して映す「水盤鏡」の幻想的な眺めがあります。
 
 やはり大人気で、平日の午前中にもかかわらず多くの人が集まっていました。スタッフの方は、来場者にひっきりなしに写真撮影を頼まれ大変そうでしたが楽しそうに応じてくれました。特に若い女性に人気で、ヨガのポーズを取る人など様々です。
 
同じく見晴らし所のひとつ。
 

●広大なエリアに点在する様々なアート作品を巡る


磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館(改修設計=山本想太郎)
 
 清津渓谷トンネルから戻る途中で、越後妻有清津倉庫美術館に立ち寄りました。廃校になった清津峡小学校をリニューアル、磯辺行久氏の作品群を所蔵展示する「磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館」として生まれ変わったそうです。
 

サイフォン導水のモニュメント(磯辺行久)
 
 この磯辺行久氏は、地域の自然をアート作品として表現しています。「サイフォン導水のモニュメント」は、集落の地下280mにわたって埋没されている水力発電用の暗渠のなかを流れる水の動きと音を可視化したものです。
 
たくさんの失われた窓のために(内海昭子)
 
 次いで、立ち寄ったのは、公園の中に設置されている内海昭子氏の「たくさんの失われた窓のために」。窓から見える風景を通して外に広がる妻有の風景をもう一度発見するための窓。作家は妻有を来訪した際、妻有の自然に圧倒され、自然を邪魔することなく慎ましく咲く花のような作品を目指したそうです。まさに自然を身近に感じさせる「大地の芸術祭」らしい作品だと感じました。
 

ワープクラウド(ダミアン・オルテガ)
 
 次は、ダミアン・オルテガ氏の「ワープクラウド」に行きました。えっ、ここが会場?と思えるほどの古い木造廃工場。かつて繊維工場だった施設に、複雑な線とリズムで織りこまれたカーテンのように、編まれ重なった作品です。モノトーンでジオメトリック、古い木造工場と、モダンな作品の対比が印象的でした。
 
悠久なる恵みー松之山の野草の花々とブナ林ー(木村豊彦+松之山の人々)
 
 松之山の峠道を走っていて、突然現れた木村豊彦氏の「悠久なる恵み」という作品。雪融けと共に姿を現す可憐な野草の花々を模した作品です。このように不意に作品と出会うのも、「大地の芸術祭」の魅力です。
 

●芸術祭の理念「人間は自然に内包する」への気づき

 十日町市は、「棚田」で生産される「こしひかり」が主な経済資源でした。日本でも有数の豪雪地帯であり、傾斜地が多く棚田での農作業を余儀なくされている厳しい自然環境です。デスティネーションとして、ほとんど何もなかった町だったといえます。
 
 この環境を逆に魅力に変えたのがインスタレーションを主としたモダンアートです。
 
 インスタレーションは、環境をそれまでの風景から異化させることが特徴です。その異化された環境に直面することで、そこから人それぞれ様々なメッセージを受け取ります。この「大地の芸術祭」は、広大な自然そのものの里山の風景を、モダンアートが変化させています。しかも、今の視点で、さらに多様に自然を意識できるよう魅力的に変化させていると感じました。
 
アート作品は、この芸術祭の理念「人間は自然に内包する」を再認識させてくれるスイッチのようです。
 

下流側から見た清津渓谷をドローンで撮影しました
 
 7回目を迎え、常設の作品が増え、ますます多様な作品に触れることが出来るようになっています。自分なりに作品をセレクトしてルートを編集することで、自分だけの芸術祭を楽しめるようになってきています。
 
まだ、9月17日まで会期があります。ぜひ、あなたなりのプランで行ってみてはいかがでしょうか。
 
 

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス